こんにちは。数学学習コンサルタントの鈴木です。
割合を苦手とする生徒さんが多いという声をよく聞きます。
私が今まで見てきた生徒さんの中にも、割合が苦手という生徒さんはいましたが、どうやら割合だけが苦手ではないということが分かりました。
割合というと、数学や算数が得意な人であれば、文章を図に直してから解くといったことも、すぐに分かることが多いと思います。
親御さんからは
・子どもが割合の文章問題を解くときに図を描かない
・そもそも問題文を理解できていないと感じる
・何度説明しても同じところでミスをする
といったお声を聞くことから、割合が得意な人であれば、そんなところでミスをしないようなところでミスをしたり、得意な人がやっていることを、なぜかうちの子はできない と感じることに、不安を持っておられる方も多い様子です。
ですのでこの記事では、割合に苦手意識を持っている生徒さんについて、割合が理解できなくなる理由と、その具体的な対策を書いていきます。
「AはBの何倍か?」は A÷B それとも B÷A
お子さんを見ていて、割合に苦手意識があるなと感じたら、まずは「倍」の考え方に関する理解度を確かめてみる必要があります。
というのも、割合とは「どちらがどちらの何倍になっているのか」を分かりやすく捉えるための考え方だからです。
・1000円は200円の何倍か?
・60mは30cmの何倍か?
といった例のように、答がキリの良い数字になる問題の理解度を確かめることからはじめて下さい。
理解度の確かめ方としては、例えば上の例でいえば
・1000÷200という式が、すぐに出てくるかどうか
・6000÷30という式が、すぐに出てくるかどうか
を見ること、つまり、「AはBの何倍か?」と問われたときに、「A÷Bを計算すること」が頭の中に浮かぶかどうか をテストしてみることが大事です。
小数倍になるものこそ要注意
上の例では、答が「5倍」や「200倍」など、キリの良い数字(整数)になるものばかりでしたが、割合で特に大事になってくるのが、小数倍になるような問題です。
・30個は60個の何倍か?
という問題が出てきたときに、30÷60で答が0.5倍と出てくれば、ひとまず問題はありません。
しかし、この手の問題でよくあるミスとしては、やはり60÷30といった具合に、式を逆にしてしまうことなどが挙げられます。
こうしたミスは、お子さんの中に 「大きい数を小さい数で割る」といった思い込みがあることや、仮に「小さい数÷大きい数」と分かっていても、反射的に「大きい数÷小さい数」が頭の中に浮かび、そのまま解き進めてしまうこと などが原因としてあります。
小数のかけ算やわり算について、計算テクニックだけではなく、問題を解くときに、どんなところに気をつければ良かったのかについても、振り返っておくと良いです。
線分図(テープ図ともいう)の考え方を使えていますか。
中学受験をする生徒さんにとっては、割合と言えば線分図で考えると言っても良いほど、割合の問題と線分図は大いに関係があります。
その理由はやはり、「AはBの何倍か?」という表現が「Bに対するAの割合」という表現に、言い換えられたところにあります。
そもそも、小学2年生と3年生の単元に出てくる「倍」の考え方において、文章問題を線分図を用いて解く場面が出てきます。
「倍」の単元において、長さや水量などを題材とした問題を解くことは、線分図を使って問題を考えられるようになるための練習でもあったと言えます。
「AはBの何倍」という表現に加えて、線分図を使って2つの量を比較するという考え方を理解できることが大事です。
どうすれば線分図を使って問題が解けるようになるのか
さまざまな生徒さんを見ていて、線分図を描いて問題を解けないという生徒さんが、特に女の子の生徒さんに多く見られました。
親御さんからは、線分図を描いて問題を解こうとしないというご相談も多かったのですが、生徒さんに直接聞いてみると、何で線分図を描いて問題を解くのかが分からない、そもそも線分図を描けない といったお話をよく聞くことがありました。
このことから、生徒さんが線分図を描いて問題を解くことができない理由の一つに、ものの量を線分の長さに例えることに納得できていないことなども原因となって、線分図を描くメリットを感じられていないといった現状があると考えられます。
割合をはじめ、2つの量を比べる問題においては、必ずといって良いほど線分図を描く場面があります。
ですので、まずは線分図を描けるようにするための第一歩として、2つの量を比べる文章問題を題材として、文章に書いてあることを絵として表してから、その絵で表される量は、線分の長さに例えられるということについて、納得できるまで練習することが大事です。
もとにする量と比べられる量とは何か
割合で出てくるのが、もとにする量と比べられる量というものです。
問題文を読んでみて、何がもとにする量なのか、比べられる量なのかが分からないという声も聞きます。
これについては、問題文の読み方と解くための考え方を例として、解説していきます。
例題. はなこさんのクラスの人数は30人です。今日は6人が休んでいます。休んでいる人の割合は何パーセントですか。
変わることがない量がもとにする量
上の問題文を読むと、クラスの人数が30人とあります。
30人という数字は、よほどクラス替えでもないかぎり、大きく変わることがない数字です。
また、クラス全体の人数を表す数字でもあります。
この例題が示すように、問題文を読んでみて、出てきた数字が
・大きく変わることがない数字
・全体がどれだけあるのかを示す数字
だと判断できたら、それはもとにする量を表します。
この問題の場合は、30人がもとにする量です。
逆に変わるかもしれない数が比べられる量
上の問題文においては、休みだった人の数は6人とあります。
この6という数字は、たまたま今日休んだのは6人だったというだけで、明日も6人休むでしょうか。
いつもいつも6人休むなど、現実的には考えられないですよね。
この例が示す通り、変わる可能性がある数字が、もとにする量なのです。
まとめると
「変わらない数字」=「もとにする量」
「変わる数字」=「比べられる量」
ということになります。
「%」と「何割何分何厘」を求める問題を完璧にする
問題文を読み、もとにする量、比べられる量が分かったら、割合を求めるだけの問題であれば、もう解けたようなものです。
ただ、割合を求めるだけであっても、計算プロセスにおいてミスをする場面が、ないわけではありません。
ミスを防ぐために意識するポイントを、以下に書いていきます。
割合の定義にそのままあてはめる
割合は、以下の式で計算できます。
%を使って答を出す場合
割合=(比べられる量÷もとにする量)×100
割・分・厘 を使って答を出す場合
割合=(比べられる量÷もとにする量)×10
割算を計算する段階において、小数点をそろえることなど、割算の筆算において気をつけることは何っだったか、意識しておくことが大事です。
また、割合の定義は分かっていても、本当に割合の定義通りに、式が作れているかどうかを確かめることも大事です。
上の例題では、もとにする量が30、比べられる量が6となっていますが、頭の中では6÷30と分かっていても、紙に書いたときに30÷6としてしまうなど、ミスの仕方は十人十色です。
また、%で答えるのに「×10」をしてしまうなどのミスもあります。
お子さんを見ていて、どんなところでミスをしているのかが分かると、ミスの対策もしやすくなってきます。
もとにする量を求める問題を解く
割合は、(比べられる量÷もとにする量)で計算することが分かったら、あとはその定義にあてはめて答を出せる問題を解く練習を繰り返すことが大切です。
割合を求める問題ができてきたら、次は逆に割合が分かっていて、もとにする量や比べられる量を求める問題をできるようにしていきます。
こんなタイプの問題を完璧にこなせることを目指して下さい。
・□人の20%は30人であるとき、□にあてはまる数を求めなさい
解き方① 割合の定義にあてはめる
問題の考え方として、「〇〇の~%」と出てきたら、〇〇にあたる部分は、もとにする量か比べられる量か、どちらなのかを考えることから、計算式を立てる準備に入ります。
結論を言うと、〇〇に当たる部分はもとにする量です。
というのも、よく日常の会話の中でも、全体「の」何%という言い方をすると思います。
そうしたことも思い出せると、分かりやすいのではないでしょうか。
上の問題の解き方についてお話すると、□人の20%が30人ということでしたね。
割合の定義にそのままあてはめて
(30÷□)×100=20
という式が出てきますよね。
すると、30÷□=0.2
となります。
というわけで、□=30÷0.2 となって、答は150人であることが分かります。
解き方② 線分図を描いてみる
はじめの方でお話したことと関係がありますが、線分図を描いて考えることもできます。
まずはこんな風に線を描いてみて下さい。
次に数字を入れます。
線分の全体の長さがもとにする量、20%にあたる量が30人ということが分かる形で、線分図を描いて下さい。
すると、見方としては、「100%は20%の5倍」ですので、「もとの人数も、30人の5倍で出せる」といったことが、すぐに分かる生徒さんも多くいると思います。
考え方をまとめると
1.) 線分図を描き、「割合」とその割合にあたるもともとの「比べられる量」を書きこむ
2.) 問題文の中で与えられた割合を、何倍すれば100%になるのかを計算する
3.) 2.で求めた数と同じだけ、比べられる量も倍する
ということになります。
比べられる量を求める問題を解く
こちらも、もとにする量を求めたときと同じ考え方で解くことになります。
まずは、こうしたタイプの問題を、ミスなく解けることを目指して下さい。
・〇円は750円の30%であるとき、〇にあてはまる数を求めなさい。
解き方① 割合の定義にあてはめる
もとにする量を求めるときと、考え方は全く同じです。
ここでも、問題文の読み方について、少しお話しておきますね。
「〇は」750円の30%とあります。
文法的な話にもなりますが、「750円の」という部分を抜かせば、「〇は」は直接「30%」にかかってくるわけです。
つまり、こうした見方からも、〇は「何か」の30%を表しているのです。
その「何か」と「比べている」のですから、〇は「比べられる量」であると、判断できます。
あとは割合の定義に合わせて
(〇÷750)×100=30
となって
〇÷750=0.3
〇=750×0.3
となるので、答は225円となります。
ちなみにですが、「◯の□%」とあったら、すぐに
「〇×□÷100」
といった式を立てられることが、割合の問題に対する理解につながります。
これができるまで、練習することが大事です。
解き方② 線分図を描いてみる
また、こんな線分図を描いて考えていくこともできます。
先ほどは、線分の長さ全体が分からなかったのに対して、今度は線分の長さ全体が750円、〇円にあたるのが30%となっています。
ここでも、もとにする量を求めたときと同じく、30%を何倍すれば100%になるのかを考えても良いですが、少しキリが良くない数字になってしまいます。
そういうときは、逆に100を何倍すれば30になるのか? を考えると分かりやすいのです。
100×0.3で30ですよね。
あとは、もともと与えられている750円の方も0.3倍してあげると、答が出てきます。
必ず検算をする!
これまで割合、もとにする量、比べられる量を求める問題を見てきましたが、検算の仕方についても、お話していきます。
特に、もとにする量、比べられる量については、それらが求まった場合、すぐに検算できるのですが、何をすれば良いかお分かりでしょうか。
求まった数字で、実際に割合を出してみて、問題文の中に出てきた数字と一致するかどうかを確かめれば良いのです。
これまでに見てきた問題を振り返ると
□人の20%は30人
とありましたが、□にあてはまるのは150人と分かりました。
検算(つまり実際に割合を計算すること)をしてみると
(30÷150)×100=20(%)
となって、合っていることが分かります。
ここまで読んで下さった方は、〇にあてはまる数字を求めた問題を、同じ考え方で検算してみて下さい。
割合の苦手対策とそのまとめ
いかがだったでしょうか。
一言に割合が苦手とは言っても、式を立てることが苦手であるとか、図を描いてそれを式に直すことが苦手であるなど、苦手だと感じる理由は、人それぞれあると思います。
割合というのはまとめると、「一方が他方の何倍なのか? といった問題を分かりやすく説明するための道具」です。
AはBの何倍か? といった問題を考えるときに、Bを基準としてAがどの程度のものなのかを考えるときに、「Bに対するAの割合」といった言い方をします。
日常では、お店の売上げなどを考えるときに、前の年と比べて今年はどれだけ売上げが伸びたのか、あるいは減ったのかを考えるときに、割合の考え方は必須です。
算数の単元としての割合では、日常にある量を線分の長さに例えて、問題を解く場面も多いです。
まずは、日常の中で「%」が出てくる場面を意識してみて、何か具体的な量が存在していることに気づき、その上で問題を考えられるようになると良いのではないでしょうか。
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