中学受験が近づいてくると、「少しでも点数が上がる方法はないか」「裏ワザやテクニックで失点を防げないか」そんな気持ちになるのは、親としてごく自然なことです。
YouTubeやSNS、塾の直前講座でも「本番で差がつく解き方」「合格者がやっていたテクニック」といった言葉が目につくようになります。
しかし――
本番で本当に合否を分けるのは、受験テクニックではありません。
日々の基礎練習をどれだけ丁寧に積み重ねてきたか。
そして、基本的な問題を確実に正解できる力が身についているかどうかです。
なぜ直前期ほど「受験テクニック」に走りたくなるのか
まず大前提として、親御さんの気持ちは間違っていません。
- 残り時間が少ない
- 新しいことをやらないと不安になる
- 何か特別な対策をしないと置いていかれる気がする
こうした心理が働くのは当然です。
ただし、ここで冷静に考えてみてください。
テクニックは「理解と基礎力」があって初めて使えるものです。
基礎が不安定な状態でテクニックだけを詰め込むと、
- 問題文を正しく読めない
- 計算ミスが減らない
- 条件の見落としが増える
結果として、かえって点数が不安定になります。
入試問題の多くは「基本〜標準問題」でできている
多くの中学入試問題を分析すると、次の事実が分かります。
- 合格者平均点を支えているのは難問ではない
- 基本〜標準レベルの問題でどれだけ落とさないかが勝負
- 難問は「取れたらラッキー」程度で十分
つまり、基本問題で確実に正解できる子が、最終的に合格するという構造になっています。
ここで重要なのは、「分かる」ではなく「必ず正解できる」状態かどうかです。
基礎練習とは「簡単な問題を雑に解くこと」ではない
基礎練習というと、「もう分かっている問題を何度もやるのは無駄では?」と感じる親御さんも多いです。
しかし、本当に意味のある基礎練習とは、
- 毎回、式を書く
- 単位・条件を必ず確認する
- なぜその解き方になるか説明できる
- 同じ問題を解いてもミスが再発しない
こうした精度を高める練習です。
基礎問題でミスが出る子は、本番の緊張下ではさらにミスが増えます。
逆に、基礎問題を「無意識レベル」で正確に解ける子は、本番でも点数が安定します。
親が直前期に意識したい声かけ・関わり方
直前期、親御さんができる最大のサポートは「新しいことを増やす」ことではありません。
おすすめなのは次の関わり方です。
- 「この問題、前より安定して解けるようになったね」
- 「基本問題はほぼ落とさなくなってきたね」
- 「今日もいつもの練習、ちゃんとできたね」
テクニックよりも、積み重ねてきた基礎を信じさせる声かけが、子どものメンタルを一番支えます。
直前期にやるべきことは「基礎の精度を上げる」こと
まとめると、中学受験直前期に本当に大切なのは次の一点です。
日々の基礎練習を繰り返し、基本的な問題で確実に正解できる状態を作ること。
派手な受験テクニックは必要ありません。
むしろ、「当たり前のことを当たり前にできる力」こそが、入試本番で一番の武器になります。
焦りや不安を感じたときこそ、ぜひ一度立ち止まって、「今日の基礎練習は丁寧にできたか」を親子で確認してみてください。
それが、合格に一番近い行動です。
【算数に特化】直前期の基礎チェックリスト(親御さん用)
以下は、新しいことを増やさずに確認できる直前期専用のチェックリストです。
✔が多いほど、今の勉強は正しい方向に進んでいます。
① 計算・処理の基礎
- □ 毎日、短時間でも計算練習をしている
- □ 途中式を省略せずに書いている
- □ 計算ミスの原因を言葉で説明できる
- □ 同じ計算ミスが減ってきている
👉 「速さ」より「正確さ」が最優先です
② 文章題・条件整理
- □ 問題文を最後まで読んでから手を動かしている
- □ 数字・条件に線を引く習慣がある
- □ 何を求める問題かを口に出して確認している
- □ 途中で「何をしているか分からなくなる」ことが減った
👉 図が苦手な子は「言葉で整理できているか」が重要です。
③ 図形問題
- □ 与えられた図に、条件を書き足している
- □ 長さ・角度を「見た目」で判断していない
- □ 面積・比・角度の基本公式を迷わず使える
- □ 補助線を「思いつき」で引いていない
👉 図形こそ、基礎の正確さ=得点力です。
④ 解き直し・復習の質
- □ 間違えた問題を「なぜ間違えたか」説明できる
- □ 解説を写すだけで終わっていない
- □ 同じ問題を数日後に解いて正解できる
- □ 間違いノートが「見るためのノート」になっている
👉 直前期は「新しい問題」より「同じ問題を完璧に」。
⑤ 本番を想定した姿勢
- □ 1問1問を丁寧に解く意識がある
- □ 分からない問題で固まりすぎない
- □ 解き終わった後に見直しをしている
- □ 基本問題を「落とさない」意識を持っている
👉 本番力は、日々の姿勢から作られます。
親が直前期にできる最大のサポート
親御さんにできることは、「もっと良い方法を探す」ことではありません。
- 今やっている基礎練習を信じる
- 丁寧にできている点を言葉で認める
- 不安をあおる声かけをしない
これだけで、子どもの本番の安定感は大きく変わります。
よくある質問(FAQ)|中学受験・算数の直前期について
Q1. 直前期に新しい問題集やテクニック本を買うのはNGですか?
A. 原則としておすすめしません。直前期に新しい教材を増やすと、
- 「どれをやればいいのか分からない」
- 「やり残しへの不安が増える」
- 「基礎が中途半端になる」
といったデメリットが大きくなります。
すでに使っている教材の基本問題を完璧にすることの方が、得点アップにつながる可能性ははるかに高いです。
Q2. 算数が苦手な子ほどテクニックを覚えた方が良いのでは?
A. 逆です。苦手な子ほど基礎の精度を上げるべきです。
算数が苦手な子は、
- 問題文の読み違い
- 条件の見落とし
- 計算ミス
といった「基礎部分」で失点していることがほとんどです。
テクニックを覚えても、基礎が不安定なままでは本番で使いこなせません。
Q3. 基礎問題は「もう分かっている」と言ってやりたがりません
A. 「分かる」と「正解できる」は別だと伝えてください。
直前期に大切なのは、
- 100%正解できる
- ミスが再現しない
- 本番でも同じように解ける
という状態です。
「今日もミスなしで解けたね」「前より安定してるね」と、結果ではなく安定感を評価すると取り組みやすくなります。
Q4. 直前期でも間違い直しは必要ですか?
A. むしろ直前期こそ最重要です。
ただし、新しい問題をどんどん解く必要はありません。
- 間違えた原因を言葉で説明する
- 数日後にもう一度解いて正解できる
この2点ができていれば、それ以上の量は必要ありません。
Q5. 模試や過去問で点数が伸びず、不安になります
A. 点数より「中身」を見てください。
見るべきポイントは、
- 基本問題で落としていないか
- 計算ミスが原因ではないか
- 焦って読み飛ばしていないか
点数が低くても、「基本の正答率」が上がっていれば、本番では十分に巻き返せます。
Q6. 親が教えた方が良いのでしょうか?
A. 教えるより「確認役」に徹するのがおすすめです。
直前期は、新しい説明を増やすよりも、
- ちゃんと読んだか
- 式を書いたか
- 見直したか
といった姿勢のチェックをする方が効果的です。
Q7. 本番直前、算数は何をやらせればいいですか?
A. いつも通りの基礎練習が一番です。
直前だからといって特別なことをする必要はありません。
- 計算練習
- 基本問題の確認
- これまでに間違えた問題の軽い見直し
「いつも通り」を続けることが、本番での安心感につながります。
Q8. 「これで大丈夫」と思っていい判断基準はありますか?
A. 次の3つがそろっていれば安心です。
- 基本問題の正答率が安定している
- ミスの原因を自分で説明できる
- 親が過度に口出ししなくても解けている
この状態なら、今やっている勉強は正しい方向に進んでいます。
まとめ:直前期こそ「当たり前」を徹底する
中学受験直前期に一番大切なのは「基礎問題を、いつ・どんな状況でも確実に正解できる状態を作ること」。
派手な受験テクニックは必要ありません。
日々の基礎練習を丁寧に積み重ねた子が、最後に合格します。
不安になったときこそ、このチェックリストを見返してみてください。
それが、親子にとって一番安心できる「直前期対策」です。
