中学受験の算数について保護者の方から、非常によく聞く悩みがあります。
それは、
- 「計算が遅いから点数が取れないのでは?」
- 「もっとスピードを上げる練習をさせた方がいいのでは?」
というものです。
しかし、家庭教師として多くの中学受験生を見てきた経験から断言できることがあります。
それは、計算の速さを気にする前に、「計算の正確さ」と「一行題で完結する文章題に正解できる力」を身につけなければ、算数の成績は決して安定して伸びないという事実です。
この記事では、なぜ「計算の速さ」よりも先に、この2つの力が必要なのか、そして家庭でどのように意識すればよいのかを、具体的に解説していきます。
なぜ「計算が速いのに点が取れない」子が多いのか
まず最初に、多くのご家庭が勘違いしやすいポイントがあります。
それは、計算が速い = 算数ができるという思い込みです。
実際の指導現場では、「計算スピードはそれなりにあるのに、点数が伸びない子」は非常に多くいます。
その理由は単純で、
- 計算は速いが、ミスが多い
- 問題文の条件を正確に処理できていない
- 簡単な一行題で落としてはいけない失点をしている
からです。
中学受験の算数は、難問で差がつく試験ではありません。
多くの学校では、「解けるはずの問題を、いかに確実に正解できるか」が合否を分けています。
成績を伸ばすために最優先すべき①「計算の正確さ」
計算の速さよりも、まずは「ミスをしない力」
計算練習というと、
- タイムを測る
- 何分以内に何問解く
といった「スピード重視」の練習になりがちです。
しかし、計算で成績を落としている子の多くは、
- 桁の見落とし
- 繰り下がり・繰り上がりのミス
- 符号(+-)の取り違え
- 書き写しミス
といった、基本的なミスを繰り返しています。
これは「能力の問題」ではなく、正確に処理する意識と習慣が身についていないだけです。
正確さがないままスピードを上げるとどうなるか
正確さが身についていない状態でスピードだけを求めると、
- 速いが間違える
- 見直しをしない
- 「合っているはず」と思い込む
という、非常に危険な癖が定着します。
その結果、「実際のテストで点が取れない」という状態に陥ります。
これは中学受験算数で最も多い失敗パターンの一つです。
成績を伸ばすために最優先すべき②「一行題の文章題に正解できる力」
一行題は「簡単」ではない
一行題とは、
- 問題文が短い
- 条件が1〜2個
- 式が1本で済む
といった、見た目がシンプルな文章題のことです。
しかし、この一行題こそ「算数が本当に理解できているかどうか」を最も正確に測る問題です。
一行題でミスが多い子の特徴
一行題が解けない子には、共通点があります。
- 問題文を最後まで読んでいない (そもそも文章の読み方を知らない)
- 数字だけを拾って、機械的に式を立てる
- 「何を求めるのか」を意識していない
つまり、手だけが動いてしまう状態です。
この力が弱いまま、図形や応用問題に進んでも、成績は伸びません。
なぜ一行題が重要なのか
中学受験算数の多くの問題は、
- 一行題の理解
↓ - 条件が増える
↓ - 複数の式になる
という構造をしています。
土台となる一行題が不安定なままでは、応用問題が解けるようになることはありません。
「計算の速さ」はいつ意識すべきか
では、計算の速さは不要なのでしょうか?
答えは NO です。
ただし、意識する順番が違います。
正しい優先順位
- 計算の正確さ
- 一行題で完結する文章題に確実に正解できる力
- その上で、計算のスピードを上げる
この順番を守らない限り、どれだけ計算練習をしても成績は安定しません。
家庭でできる具体的な取り組み
計算練習で意識したいポイント
- 時間を測らない日を作る
- 途中式を必ず書かせる
- 間違えた問題は「なぜ間違えたか」を言語化させる
一行題で意識したいポイント
- 「何を求めている問題?」と必ず聞く
- 式を書く前に、答えの意味を言葉で説明させる
- 正解しても、考え方を説明させる
これだけでも、算数の理解度は大きく変わります。
偏差値30〜40台向け|算数の土台チェックリスト
※「計算の速さ」を気にする前に、必ず確認してください
以下の項目に、**○/△/×**をつけてみてください。
【計算の正確さチェック】
- □ 計算問題で、途中式を書かずに暗算で処理していない
- □ 桁の見落とし・写し間違いが頻発していない
- □ 計算ミスを「ケアレスミス」で片づけていない
- □ 間違えた計算を、やり直して正解にできる
- □ 「なぜ間違えたか」を言葉で説明できる
→ ×が2つ以上ある場合
👉 計算スピードを上げる段階ではありません。
【一行題(短い文章題)チェック】
- □ 問題文を最後まで読んでから式を書いている
- □ 「何を求める問題か」を口で説明できる
- □ 数字をそのまま足したり引いたりしていない
- □ 正解した後も、理由を説明できる
- □ 一行題での失点がテストで目立つ
→ ×が1つでもある場合
👉 応用問題よりも「一行題の徹底」が最優先です。
【要注意サイン】
以下に当てはまる場合、算数の伸びが止まりやすい状態です。
- □ 計算は合っているはずなのに点が取れない
- □ 簡単な問題で失点する
- □ 難問より、基本問題の正答率が低い
→ これは能力不足ではなく、「土台の順番」がズレているだけです。
偏差値40台向け|算数・家庭学習テンプレ
※1日30〜40分でOK
【① 計算(10〜15分)】
目的:速さではなく、正確さ
- 計算問題:5〜10問程度
- 時間は測らない
- 必ず途中式を書く
- 丸つけ後、間違えた問題は
- 「どこでミスしたか」を親に説明
- 「どうすれば正解できたのか」も同時に説明
【② 一行題(10〜15分)】
目的:文章を正しく読む力をつける
- 一行で終わる文章題を2〜3問
- 式を書く前に、必ず
- 「何を求める問題?」と聞く
- 正解しても「考え方」を言葉で説明させる
【③ 振り返り(5〜10分)】
- 今日できたことを1つ言わせる
- 間違えた理由を1つ確認
- 次に気をつけることを1つ決める
よくある質問
Q1. 計算が遅いのですが、本当に気にしなくていいですか?
A1. 今は気にしなくて大丈夫です。正確さが身につけば、スピードは必ず後からついてきます。むしろ、
遅くても正確な子の方が、最終的に伸びます。
Q2. 一行題は簡単そうなので、軽視していました…
A2. 一行題こそ最重要です。一行題が安定しない子が、複雑な文章題や図形問題を解けるようになることはありません。「短い=簡単」ではなく、「短い=理解力が試される問題」です。
Q3. 応用問題をやらせた方が偏差値は上がりませんか?
A3. 土台ができていない状態では逆効果です。偏差値30〜40台の子が応用問題に時間をかけても、
- できない
- 自信をなくす
- 算数が嫌いになる
という結果になりやすいです。
Q4. 親がどこまで見ればいいか分かりません
A4. 正解・不正解より「考え方」だけ見てください。
- なぜその式になったのか
- 何を求める問題だったのか
ここだけ確認すれば十分です。
Q5. この方法で本当に成績は伸びますか?
A5. はい。現場では何度も見てきました。特に偏差値30〜40台から伸びた子の共通点は、
- 計算の正確さを徹底した
- 一行題を落とさなくなった
この2点だけです。
まとめ|「速さ」は最後でいい。まずは土台から
中学受験の算数で伸び悩む多くの子は、
- 努力が足りない
- センスがない
のではありません。
順番を間違えているだけです。
- 計算の正確さ
- 一行題を確実に正解できる力
この土台を整えれば、算数は必ず「できる教科」に変わります。
