「図を見ると、正三角形に見えるのに、答えは違った」
「どう見ても直角にしか見えないのに、不正解だった」
中学受験の算数、とくに図形問題で、このような経験は多くの子どもに起きています。
そして原因の多くは、計算力不足でも知識不足でもなく、“思い込み”です。
この記事では、
- なぜ子どもは図形で思い込みをしてしまうのか
- なぜそれが中学受験で特に致命的になるのか
- どうすれば「正しい考え方」で解けるようになるのか
を、保護者の方にも分かりやすく解説します。
なぜ子どもは図形で「思い込んでしまう」のか?
① 図を「条件」ではなく「絵」として見ている
多くの子どもは、図形を次のように捉えています。
- 図 = 正解を教えてくれるもの
- 図 = 見たまま信じてよいもの
しかし、算数の図はあくまで「条件を表した図」です。
- 正三角形なら「正三角形である」と条件として書かれている必要がある
- 直角なら「直角である」という記述や記号が必要
- 平行なら「平行である」という条件が明示されている必要がある
見た目がそう見えても、書かれていなければ保証されていない
――この意識が弱いため、思い込みが起きます。
② 「見た目で判断するクセ」が低学年から染みついている
低学年の算数では、
- それっぽく見える
- 直感的に分かる
- 絵を見て答える
といった問題が多く、「見た目で判断しても当たる経験」をたくさん積みます。
その成功体験が、
- 見た目=正しい
- たぶんこうだろう
という判断を無意識に作り上げてしまうのです。
③ 「条件を疑う」という発想を教わっていない
実は多くの子は、「これは本当に正三角形と言える?」「直角だと分かる情報はある?」という疑う視点を、ほとんど教わっていません。
その結果、
- 図を疑わない
- 自分の捉え方を確認しない
- 条件チェックをしない
という状態で問題を解いてしまいます。
中学受験で「思い込み」が致命的になる理由
図形問題は「思い込みを狙って作られている」
中学受験の図形問題では、
- 正三角形に見えるが、条件は与えられていない
- 直角に見えるが、角度は不明
- 平行に見えるが、どこにも書いていない
といった“引っかけ”構造が頻出します。
これは意地悪ではなく、
- 条件を正確に読む力
- 論理的に判断する力
を見ているのです。
計算が合っていても不正解になる
思い込みの怖い点は、
- 計算は完璧
- 途中式もきれい
- でも前提が間違っている
というケースが多いこと。
本人は「ちゃんと考えたつもり」なので、なぜ間違えたのか分からず、成長につながりにくいのです。
思い込みをなくし「正しい考え方」で解くための方法
① 図を見る前に「条件だけ」を読む習慣をつける
まずやってほしいのはこれです。
図を見る前に、文章だけを読む
そして親子でこう確認します。
- 正三角形だと書いてある?
- 直角マークはある?
- 平行と書いてある?
この時点で「書いていないなら使えない」と言語化します。
② 「それは分かる?それとも想像?」と問いかける
子どもが、「ここは直角だよね」と言ったら、すぐに否定せず、「それは“分かる”の?それとも“そう見えるだけ”?」と聞いてみてください。
この問いかけだけで、
- 自分の考えを疑う
- 根拠を探す
という思考が芽生えます。
③ 条件に〇をつける「条件チェック」を習慣化する
おすすめなのが、条件に〇をつける作業です。
- 正三角形 → 文中に〇
- 直角 → 記号に〇
- 平行 → 記述に〇
〇がないものは、「使ってはいけない情報」と明確にします。
④ 「思い込みで間違えた問題」を宝物にする
思い込みミスは、実は最高の教材です。
- なぜそう思ったのか
- どこに条件がなかったのか
- 次はどう確認するか
を一緒に振り返ることで、
- 図を疑う力
- 条件を見る力
が確実に育ちます。
よくある質問集
Q1. 図形の思い込みは「算数が苦手だから」起こるのでしょうか?
A1. いいえ、必ずしも算数が苦手だから起こるわけではありません。むしろ、ある程度問題を解ける子ほど思い込みにハマることも多いです。理由は、「これまでの経験から、こうだろう」と無意識に判断してしまうからです。図形の思い込みは能力の問題ではなく、「条件を確認する習慣」が身についているかどうかの問題です。
Q2. 何度注意しても、また同じ思い込みミスをします。どうすればいいですか?
A2. それはとても自然なことです。思い込みは「クセ」なので、一度の注意では直りません。
大切なのは、
- 間違えた理由を一緒に言語化する
- 「どこに条件が書いてなかった?」を確認する
- 次に同じ場面でどうチェックするかを決める
という振り返りの型を毎回行うことです。
「また間違えた」ではなく、「また気づくチャンスが来た」と捉えてあげてください。
Q3. 親が「それ、本当に直角?」と聞くと嫌がります…
A3. よくある反応です。この場合は、否定や指摘に聞こえない聞き方に変えるのがおすすめです。
たとえば、
- 「直角って分かるヒント、どこにあった?」
- 「先生に説明するとしたら、どう言う?」
といった聞き方にすると、責められている感覚が減り、考える姿勢が生まれます。
Q4. 図を信じてはいけないなら、図は何のためにあるのですか?
A4. 図は「答えを教えるもの」ではなく、条件を整理し、考えやすくするための補助です。
正しい使い方は、
- 条件として与えられていることを確認する
- 分かっていることだけを図に反映する
- 分からないことは勝手に決めない
という姿勢で図を見ることです。
Q5. 低学年のうちから、この指導は必要ですか?
A5. はい、低学年から意識できると非常に効果的です。
ただし、難しい言葉で説明する必要はありません。
- 「それって書いてある?」
- 「分かる?それとも想像?」
この2つを繰り返すだけで、将来の図形力・読解力に大きな差が出ます。
Q6. 思い込みを防ぐには、たくさん問題を解けばいいですか?
A6. 量よりも「解き方の質」が大切です。
同じ問題数でも、
- 条件を確認してから解いた
- 思い込みで間違えた理由を振り返った
こうした経験の方が、何倍も力になります。
Q7. 思い込みが多い子は、図形問題に向いていないのでしょうか?
A7. まったくそんなことはありません。
むしろ、
- 想像力がある
- 図から情報を読み取ろうとしている
という長所の裏返しであることも多いです。必要なのは、「想像していいこと」と「してはいけないこと」の線引きを教えることです。
Q8. 塾ではあまりこの話をしてくれません。家庭で対応できますか?
A8. はい、家庭だからこそできる指導です。
特別な教材は不要で、
- 声かけ
- 条件確認
- 振り返り
この3点を意識するだけで十分です。
まとめ|図形が苦手なのではなく「見方」を間違えているだけ
図形問題でつまずく子の多くは、
- 図形センスがない
- 向いていない
のではありません。
「図をどう見るか」「条件をどう扱うか」この考え方をまだ身につけていないだけです。
- 見た目ではなく条件を見る
- 自分の捉え方を疑う
- 根拠があることだけを使う
この習慣が身につけば、図形問題は安定して得点できる分野に変わります。
