「塾の算数についていけない」
「このまま続けて大丈夫?」
「転塾した方がいいのでは…?」
これは中学受験家庭から最も多いご相談の一つです。
結論から言います。
“授業についていけない=すぐ転塾”ではありません。
しかし、“放置すべきでもない”のも事実です。
大切なのは、「今のつまずきの原因がどこにあるか」を正しく見極めること。
この記事では、
- 集団授業を理解できない本当の理由
- 集団が合う子・合わない子の特徴
- 転塾すべきケース/すべきでないケース
- 今日からできる具体的対処法
を体系的にまとめます。
算数の集団授業が理解できない5つの理由
① 授業スピードが合っていない
集団授業は「その科目を得意とする子のレベル」に合わせて進みます。
集団授業でつまずく子の多くは、それに合わせた「授業のスピード」に合っていないだけです。
ここを誤解すると、子どもは必要以上に自信を失います。
集団授業は“平均スピード”で進む
集団授業は、「その科目を得意とする子のレベル」に合わせて進みます。
つまり、一人ひとりの理解スピードには合わせられない構造です。
授業では、「説明 」→ 「例題 」→ 「類題 」→ 「解説」がテンポよく進みます。
一瞬でも聞いていないと、次の解説を理解できません。移ってしまいます。
「考えている時間」が足りない
算数が伸びる瞬間は、「うーん…どうやるんだろう?」と自分で悩んでいる時間に生まれます。
しかし集団授業では「すぐに先生が解説する」「答えがどんどん出る」「板書が消えていく」といった結果、「自分で考える前に答えを聞く」「理解が浅いまま進む」という状態になります。
スピードが合わない子に起きる症状
- 「途中から分からなくなる」
- 「宿題は解説頼り」
- 「テストで時間が足りない」
- 「焦りが強い」
これは理解不足というより、処理リズムの不一致です。
しかし実際には「問題文を読むのがゆっくり」「丁寧に図を書きたい」「計算に慎重すぎる」というタイプの子もいます。
一度置いていかれると「授業」→ 「宿題」→「テスト」のすべてが「分からないまま」進みます。
② 基礎が抜けている
算数の集団授業についていけない子の多くは「今の単元が難しい」のではありません。
本当の原因は“前の単元の理解が曖昧なまま進んでいること”です。
算数は完全な積み上げ科目です。
ここでは、現場でよく見る「基礎抜けパターン」を具体的に解説します。
計算が“できるつもり”になっている
例えば分数計算。
✔ 通分の意味を説明できない
✔ 約分を途中で忘れる
✔ マイナスの扱いが曖昧
それでも「だいたい合ってるから大丈夫」と進んでしまう。
しかし中学受験算数では、
- 速さ
- 比
- 仕事算
- 図形の面積比
すべて分数計算が前提です。
計算精度が低いと、思考以前に点数が落ちます。
割合の本質を理解していない
割合は中学受験算数の“心臓部”です。
しかし実際は、
✔ %と割の変換があいまい
✔ 「もとにする量」が分からない
✔ 増減の文章で混乱する
という状態のまま速さや比へ進んでしまうケースが非常に多い。
速さは割合の応用、比も割合の応用です。
割合が曖昧だと、その後すべてが崩れます。
単位量あたりを理解していない
「1あたり」に注目する力が弱い子は、
- 速さ
- 食塩水
- 仕事算
で必ず止まります。
例えば「1分あたり何m進むのか」「1人あたり何枚折るのか」という視点がないと、式が立ちません。
図形公式を“暗記だけ”している
面積公式を覚えていても、
✔ なぜその公式になるのか説明できない
✔ 図を描かない
✔ 補助線を引けない
これでは応用問題は解けません。
条件整理ができない
文章題で「与えられた数字を書き出さない」「単位を書かない」「図を描かない」というのも、基礎力不足の一種です。
算数の基礎とは、計算力だけではありません。
「情報整理力」も基礎です。
集団授業が合う子・合わない子
集団授業が合う子
「うちの子は集団授業に向いていますか?」
これは非常に多いご相談です。
結論から言えば、集団授業に向いているかどうかは、“偏差値”よりも“学び方の状態”で決まります。
成績が高い=向いている、とは限りません。
逆に、今の偏差値がそこまで高くなくても、合う子は合います。
ここでは、実際の指導経験から見える「集団授業が合う子の特徴」を整理します。
基礎がすでに固まっている子
集団授業は、「前提理解がある」状態で進みます。
「分数計算が正確」「割合を言葉で説明できる」「図を自然に描ける」
このような土台がある子は、授業の応用説明についていけます。
基礎が安定している子は、多少スピードが速くても崩れません。
自力で復習を回せる子
集団授業は「その場で完結」しません。
伸びる子は
「授業後に解き直す」
「間違いの原因を考える」
「分からない部分を翌週までに整理する」
この“復習ループ”を自分で回せます。
分からないことを質問できる子
集団授業では「疑問を放置しないこと」「その日のうちに解決すること」が重要です。
質問できる子は「分からないことを言語化できる」「自分の弱点を自覚している」「先生との距離が近い」という強みがあります。
これは学力以上に重要な資質です。
周囲の刺激で伸びるタイプ
集団授業の最大のメリットは、「競争環境」です。
- 周りの子が解けると刺激になる
- クラス分けテストで燃える
- 上位層に入りたいと努力する
こうした“外的刺激型”の子は集団環境で伸びやすいです。
集団授業が合いにくい子
「集団授業についていけない=能力が低い」
これは大きな誤解です。
実際に現場で多く見てきたのは、集団授業が“まだ早い段階”の子です。
ここでは、集団授業が合いにくい子の特徴を具体的に整理します。
「分かったつもり」になりやすい子
集団授業はテンポが速いため「なんとなく理解した気になる」「周りが進むから自分も進む」「うなずいて終わる」という受け身状態になりやすいです。
自分で考え直す習慣がまだ身についていない子は、理解が浅いまま積み上がります。
自分の弱点を言語化できない子
- 「どこが分からない?」と聞くと黙る
- 「全部分からない」と言う
- 質問ができない
このタイプは疑問を溜め込みます。
集団授業は、自分で疑問を解決できる子ほど伸びます。
失敗に敏感で自信を失いやすい子
- 周りと比べて落ち込む
- クラス分けで自己否定
- テスト結果に強く反応する
このタイプは、競争環境が逆効果になることがあります。
学力以前に、心理面の安定が必要です。
転塾した方がいい場合
転塾は簡単な決断ではありません。
- ここまで頑張ってきた時間
- 先生との関係
- 友達とのつながり
- 費用面の負担
様々な要素が絡みます。
だからこそ大切なのは、
「感情」ではなく「状態」で判断すること。
ここでは、実際の現場経験から見た、転塾を前向きに検討すべきケースを具体的に解説します。
ケース① クラスが明らかにレベル不適切
まず最も分かりやすいケースです。
こんな状態が続いていませんか?
- 授業中ほとんど理解できていない
- 宿題が半分以上解けない
- 毎回解説を写して終わる
- テストで平均点から大きく離れている
この場合、努力不足ではありません。
「難易度と現在地が合っていない」
という環境ミスマッチです。
特に危険なのは…
- 上位校志望クラスに無理に残っている
- 「頑張れば慣れる」と言われ続けている
- 2〜3か月経っても改善が見られない
学習は“適正難易度”が最重要です。
難しすぎる環境は「理解不足 」→「 自信喪失 」→ 「苦手固定」という悪循環を生みます。
判断基準
✔ 3か月以上改善傾向がない
✔ 宿題の自力完遂率が50%未満
✔ 子どもが毎回不安を感じている
この場合、クラス変更または転塾を前向きに検討すべきです。
ケース② 基礎確認をしてくれない塾
次に重要なのが「塾の指導方針」です。
こんな対応になっていませんか?
- 「もっと復習してください」で終わる
- ミスの原因分析がない
- できない単元を掘り下げない
- 解き方暗記中心の指導
これは非常に危険です。
算数は積み上げ科目です。
基礎の穴を放置する塾は、長期的に伸びません。
本来あるべき姿
- どの単元が弱いのか具体的に示す
- 計算精度をチェックする
- 割合理解を確認する
- 思考過程を見て修正する
これがない場合、どんなに実績のある塾でも、その子にとっては合っていません。
判断基準
✔ 面談で具体的な弱点説明がない
✔ 個別フォローがない
✔ できない原因が「努力不足」で片付けられる
この場合は、環境再検討が必要です。
ケース③ 子どもの自己肯定感が崩れている
最も重視すべきポイントです。
こんな言葉が出ていませんか?
- 「どうせ自分はできない」
- 「算数嫌い」
- 「塾行きたくない」
これは単なる不満ではありません。
学習環境が心理的負担になっているサインです。
放置すると起きること
- チャレンジしなくなる
- 問題を読まずに諦める
- 勉強全体への意欲低下
算数以前に「学ぶ力」そのものが落ちます。
判断基準
✔ テスト後に強い自己否定
✔ 授業前に不安・緊張が強い
✔ 家庭でイライラが増えている
この場合、環境変更は十分合理的判断です。
ケース④ 下位クラスでも改善しない
「クラスを下げれば解決する」と思いがちですが、それでも改善しない場合があります。
こんな状態は要注意
- 下位クラスでも理解できない
- テスト順位が常に下位固定
- 宿題は依然として解説頼り
これは、集団形式そのものが合っていない可能性があります。
特に起こりやすいタイプ
- 処理スピードがゆっくり
- 自分の弱点を言語化できない
- 思考の型がまだ未習得
この場合は、
✔ 個別補習併用
✔ 個別指導への変更
✔ 学習設計の再構築
を検討すべき段階です。
転塾判断で大切なこと
転塾は逃げではありません。
しかし、「塾を変えれば伸びる」という発想も危険です。
見るべきは、
✔ 難易度は適切か
✔ 基礎フォローはあるか
✔ 心理的に安定しているか
✔ 改善傾向があるか
この4点です。
転塾しなくていい場合
授業についていけないと感じたとき、「もう転塾しかないのでは…」と不安になる保護者の方は多いです。
しかし実際には「転塾しなくても改善できるケースの方が多い」というのが現場での実感です。
大切なのは、
- 本当に環境の問題なのか
- それとも“学習状態”の問題なのか
を冷静に見極めることです。
ここでは、焦って転塾しなくていい代表的なケースを解説します。
復習不足が原因の場合
授業が分からないのではなく、
- 解き直しをしていない
- 間違いの原因分析をしていない
- 宿題を“終わらせる作業”にしている
この状態だと、どの塾に行っても伸びません。
集団授業は、「授業+家庭復習」で完成する仕組みです。
授業直後24時間以内に
✔ 何も見ずに解き直す
✔ 式の意味を説明させる
✔ ミスをノートに整理する
これを徹底するだけで、急に理解が進む子は本当に多いです。
この段階で転塾するのは、まだ早いと言えます。
単元が一時的に難しいだけの場合
中学受験算数には“山場”があります。
- 割合
- 速さ
- 比
- 立体図形
これらは多くの子が一度つまずきます。
しかし、
✔ 次の単元で回復する
✔ 基礎演習で理解が戻る
✔ テスト結果が徐々に改善する
このように“改善傾向”が見られるなら、一時的な難所である可能性が高いです。
難しい単元で一時的に落ちることは、成長過程では自然なことです。
先生との相性が良い場合
子どもが、
- 先生を信頼している
- 授業自体は楽しいと言っている
- 質問しやすい雰囲気がある
この場合は非常に大きな強みです。
学習は“関係性”が土台になります。
多少の成績波があっても、信頼できる指導者がいる環境は、簡単に手放すべきではありません。
まずは先生と相談し、
- クラス変更
- 補習
- 課題調整
を検討するのが先です。
改善傾向が見えている場合
最も重要な判断基準は、「良くなっている兆しがあるか」です。
例えば、
- ミスが減っている
- 自分から復習するようになった
- 授業内容を具体的に話せるようになった
こうした変化があるなら、今の環境は機能しています。
成績は“階段状”に伸びます。
横ばいの期間があっても、改善兆候があるなら焦る必要はありません。
転塾前に必ず確認すべきこと
環境を変える前に、必ず確認したいポイントがあります。
✔ 基礎の穴はないか
✔ 解き直しは徹底しているか
✔ 勉強時間の質は十分か
✔ ミスの原因分析をしているか
これらを整えずに転塾すると「塾が変わるだけで、状態は変わらない」という結果になりやすいです。
よくある質問
Q1:転塾すれば必ず成績は上がりますか?
A1. 上がりません。学び方が変わらなければ塾を変えても同じです。
Q2:個別指導なら安心ですか?
A2. ただの「解説型個別」では意味がありません。
✔ 思考修正
✔ 基礎再構築
✔ 自力演習管理
これができるかどうかです。
Q3:親はどう判断すれば?
A3. 見るべきは「点数」よりも
- 自力で解けているか
- 説明できるか
- 不安が強くなっていないか
です。
まとめ
算数が分からない理由は、
✔ 能力不足ではない
✔ 努力不足でもない
✔ 環境と学び方のミスマッチ
です。
転塾すべきときはあります。
しかし本質は、「自分で解ける力を作れているか」です。
塾を変える前に、
- 基礎の穴を確認
- 解き直し徹底
- 思考の型修正
これを見直してください。
算数は、正しい方法で積み上げれば必ず伸びます。
焦らず、環境ではなく“学び方”を軸に判断すること。
それが後悔しない選択につながります。
