こんにちは。鈴木です。
今回は、円に関する基本問題の解き方、考え方についてお話します。
ここでいう基本問題とは、与えられたどんな問題についても、「どうすれば解けるのか」という問いに対して一つの答を見い出せるような、大事なポイントを学ぶことができる問題 のことです。
そういう意味では、簡単に解ける問題というわけではないですが、解いておくと良いことがある問題です。
少し長いですが、問題を見ていくことにします。
角度を求める問題
円が関係する角度の問題では、半径をニ辺とする三角形に目をつけると良いことがあります。
こちらが問題です。
右の図で、A、B、Cは円周上の点で、Oは円の中心、BCは直径です。角xと角yの大きさを求めなさい。
ニ等辺三角形に注目する
問題の図形にある三角形ABOと三角形AOCを見ると、円の中心Oと、円上の点A、B、Cがそれぞれが結ばれています。
三角形ABOと三角形AOCはそれぞれ、円の半径をニ辺とするニ等辺三角形です。
つまり、OA=OB、OA=OCとなっています。
円の中心と円上の二点を結ぶ三角形に関する問題では、まずはじめに二等辺三角形となるものから、目をつけていきます。
ニ等辺三角形の角度に関する性質
ニ等辺三角形は、ニ辺が等しいという性質に加えて、二つの底角が等しいことも大事な性質です。
この問題の場合は、三角形ABOについて、角ABO=角BAOとなっているので、角BAO=42°となります。
角度は「分かるところ」から値を求める
いま、角BAO=42°となることが分かりましたが、これではまだ、角xが分かりません。
しかし、角BAOが分かることで、三角形ABOの内角の和が180°であることから
角x=180−42−42=96°
となることが分かります。
このように、角度を求める問題では、直接的に求めたい角度を求めずに、分かるところから角度を求めていく姿勢が大事なのです。
まずは与えられた条件から、どの角度からなら求められるのかを考えて、問題を解いていけると良いですね。
角yを求めるためにも、まずは角xが分かったので、角xのすぐとなりにある角AOCから求めることになります。
あとは、やはり三角形AOCも二等辺三角形ですから、角OAC=角OCAとなることに目をつけると、角yが求まります。
角y=48°となります。
直径の両はしと円の上の点を結ぶ三角形は直角三角形になる
直径の両はしと、円上の点を結ぶと、実は直角三角形ができます。
その理由について、以下で説明していきますね。
ここは少し難しいので、読みとばしてもかまいません。
図の三角形ABOと三角形ACOは、それぞれ二等辺三角形です。
角ABO=角BAO=●、角CAO=角ACO=✖とおくと
角BOA=180°−(●+●)
角COA=180°−(✖+✖)
となっています。
角BOA+角COA=180°となることから
角COA=●+●、角BOA=✖+✖
となることも分かります。(三角形の外角に関する結果を知っている人は、すぐに分かると思います)
これらの結果から
●+●+✖+✖=180°
となるのですが、この式をよく見ると(●+✖)を2回足した結果180°になっているということが分かります。
ですので、●+✖=90°となるわけです。
●+✖というのは、図の三角形ABCの中にある角BACのことです。
この結果から、三角形ABC(つまり直径の両はしと円上の点を結ぶ三角形)は、直角三角形になっているのです。
この結果も、三角形ABOと三角形ACOが二等辺三角形になっていることに目をつけたことから得られたのです。
結果も大事ですが、やはり、円の中心と円上の二点を結ぶ三角形は二等辺三角形になることに目をつけるというのは、大事な考え方の一つです。
円周の長さの出し方
円周の長さは、直径×円周率で求められます。
円周率は、ふつう3.14を用いますが、問題によっては「3.1として計算しなさい」など、指示がついていることもあります。
大事なのは、円周の長さを直径で割った値が常に一定になっているという事実です。
弧の長さの求め方
円周の長さを求めることはもちろん、おうぎ形の弧の長さを求めることも大事です。
おうぎ形の弧の長さは、以下の式で求められます。
弧の長さ=円周の長さ×{(中心角)÷360°}
なぜ(中心角)÷360°の値をかけるのか
弧の長さを求める際に、円周の長さに「(中心角)÷360°」をかける場面がありますが、この理由については、以下の記事にて解説してありますので、お読みいただければと思います。
360°というのは、円1周分の角度を表します。
ここでは例えば、おうぎ形の中心角を60°として考えてみます。
中心角60°のおうぎ形を描くには、コンパスで円を描きはじめたときの点Pと、描きおわったときの点Qと、円の中心Oをそれぞれ結び、線分POと線分QOが作る角度が60°になるようにします。
こうして描くことができた弧を、合計で何個描けば円1周ができあがるのか を考えます。
考えているおうぎ形の中心角は60°ですから、このおうぎ形を集めて円1周分の360°を作るためには、中心角が60°のおうぎ形が6個あればいいのです。
つまり、中心角60°のおうぎ形の円の弧の長さは、円1周の1/6の長さになっている ということなのです。
この1/6という数字は、60÷360(つまり中心角÷360°)を計算してあげると出てきます。
割合の考え方が出てきて、「弧の長さは円1周分の1/6」といわれたら、弧の長さを出すために「円1周分の長さ×1/6」を計算することになります。
この具体例はまさに、「弧の長さ=円周の長さ×(おうぎ形の中心角÷360°)」を表しています。
まわりの長さの求め方
半円や四分円で作られた図形の、まわりの長さを求める問題は大事です。
これからその解き方を見ていきますね。
問題がこちらです。
右の図は、1辺が6㎝の正方形の中に、半円と四分円をかいたものです。かげをつけた部分の図形のまわりの長さは何㎝ですか。
まわりの長さをなぞる
かげをつけた部分とありますが、まずはそこを正しく把握することからはじめます。
かげをつけた部分のまわりの線を、なぞってみて下さい。
半円か、それとも四分円か
なぞった部分は、半円、四分円、線分のいずれかになります。
なぞった部分がそれぞれ、どんな図形にあたるのかを考えていくことが大事です。
半円か四分円かの判断に役立つのは、それらの半径が正方形の1辺(または一部)となっていることや、四分円の中心角が正方形の内角になっているところを探すことです。
半円の半径、四分円の半径はいくらか
なぞった部分がそれぞれ、半円、四分円のどちらなのかが分かったら、次はそれらの半径を求めます。
この問題の場合は、半円の半径は3㎝、四分円の半径は6㎝ということになります。
公式にあてはめる
この問題の図形のまわりの長さは
「半径3㎝の半円の弧の長さ」+「半径6㎝の四分円の弧の長さ」+「正方形の1辺の長さ」
で求められます。
式でかくと
6×3.14×(180°÷360°)+12×3.14×(90°÷360°)+6
となり、答は24.84(cm)となります。
円とおうぎ形の面積
円周の長さと同じく、円やおうぎ形の面積を求める問題も、習得することは必須です。
円の面積は、以下の式で求められます。
円の面積=半径×半径×円周率(3.14)
円の面積を必須知識として、おうぎ形の面積の求め方について、解説していきます。
おうぎ形の面積の求め方
おうぎ形の面積は、以下の式で求めることができます。
おうぎ形の面積=円の面積×(おうぎ形の中心角÷360°)
ここでもやはり、中心角÷360°が出てきますが、この理由については、弧の長さを求める場合と全く同じです。
弧の長さを考えるときは、弧を何個集めれば、円1周分の長さになるのか を考えたのに対して、おうぎ形の面積を考えるときには、おうぎ形を何個集めれば、円1つ分の面積と同じになるのか を考える場面が出てきます。
そのときに、中心角÷360°を計算することになります。
おうぎ形の面積の練習問題
例題.1 半径が6cm、中心角が20°のおうぎ形の面積を求めなさい。
公式にあてはめて計算しても良いのですが、図形の問題なので、解く前に図を描いてからやってみると、イメージもついてきます。ぜひ、図を描いてからやってみて下さい。
式を書くと
6×6×3.14×(20°÷360°)
となって、これを計算していくことになりますが、計算に自信が出てきた人は、以下で説明する計算式に対するこんな見方を身につけることも、意識してみて下さい。
円周率が出てくる式を見通し良く計算する考え方
6×6×3.14×(20°÷360°) という式を、計算ミスをほとんどしなくなってきた生徒さんに計算してもらうとき、たった一つだけ、計算の見通しを良くするために注目するポイントについてお話することがあります。
それは、上の式において、計算する順番を変えるというポイントです。
どこをどう変えれば良いのでしょうか。
計算を正確に行えているかどうかを見るポイント
計算ミスをほとんどしないというのは、上に書いたような式であれば、くり上がりでのミスがないこともそうですが、与えられた計算式において、自分がいま式中のどこの部分を計算しているのかも正確に分かり、小数点も位置をまちがわずに置けるということです。
さて、上の式は、左から順番に計算していくと、36×3.14=113.04となって、そこに20÷360=1/18(割りきれないときは分数で表すことも理解できていることが大事です)をかける、ということはラストで、113.04÷18=6.28 となって、答が出ます。
3けた以上の小数の割り算を、小数点の位置をミスすることや商の位置をミスすることなどなしに、正確にできることだけでも問題ありませんが、ただ、生徒さんは声をそろえて
計算が大変!
と言ってきます。
計算が大変だと感じたらやること
上に書いた式を見て、生徒さんに、どうやったら計算が楽になるのかな と聞いてみることで、あることに気づいてもらうことがあります。
それは、はじめに述べた計算の順番を変えるということです。
まずは、全部計算することをせずに、36×3.14×(20÷360)のところまで計算します。
次に、カッコの中を計算して、1/18を出します。
すると計算式は、36×3.14×(1/18)となるのですが、ここで、計算の順番を変えて
36×(1/18)×3.14
としてみると、計算式は2×3.14となって、楽に6.28と計算することができるのです。
ただし、こうした考え方が理解できるためには、上の計算式の例でいえば
・公約数や公倍数の計算問題を得意とし、2けた3けた以上の公約数や公倍数も計算して正確に出せること
・四則計算をはじめ、長い計算式に苦労したことがあるからこそ、かけ算の順番を入れかえることができるような場合があることを、具体例として知っていること
が求められます。
理解できたと感じた考え方が出てきたら、その考え方をマネして使うことで解ける、全く同じタイプの類題を解くことが大事です。
ぜひ、この問題で、上に書いた「計算の順番を変える」という考え方を、マネして使ってみて下さい。
例題.2 半径が5cm、中心角が72°のおうぎ形の面積を求めなさい。
ラグビーボールの面積
円や正方形に関する問題の中で、典型的な必須問題が、ラグビーボールの形の面積を求める問題です。
問題がこちらです。
右の図は、1辺が8cmの正方形の中に、四分円を2つかいたものです。かげをつけた部分の面積は何cm^2ですか。ただし、円周率は3.14とします。
解き方① {(四分円の面積)−(直角二等辺三角形の面積)}×2
面積を求める図形を、図のように2分割してみます。
すると、分割された図形は、2つともお互いに全く同じ図形となります。
分割された図形はどんな図形かというと、四分円から、その四分円の半径を2辺とする直角二等辺三角形を除いた部分になります。
これが2つあるので、求める面積の式は
{(四分円の面積)−(直角二等辺三角形)}×2
となります。
(四分円の面積)=8×8×3.14÷4=50.24(cm^2)
(直角二等辺三角形の面積)=8×8÷2=32(cm^2)
となって、求める面積は
(50.24−32)×2=36.48(cm^2)
となるわけです。
解き方② (四分円の面積)×2-正方形の面積
2つ目の解き方は、面積を求める部分を、2つの図形が重なった部分とみなし、「その2つの図形の面積の和」から、「2つの図形のまわりの曲線が作る図形の面積」を引く というものです。
この考え方については、「なぜそう考えることで面積を求められるのか」ということについて、お話していきます。
ラグビーボールを2つの四分円の重なりとみる
青色の四分円と、赤色の四分円があるとしましょう。
共に、半径は8cmとします。
求める図形の面積は、これらの四分円が重なったところ、つまり、紫色になったところです。
四分円を分割する
四分円を、直角二等辺三角形と、三日月のような部分(三日月と呼ぶことにします)に分割します。
すると、以下の考え方が成り立ちます。
(青色の四分円の面積)=(青色の直角二等辺三角形)+(青色の三日月)
(赤色の四分円の面積)=(赤色の直角二等辺三角形)+(赤色の三日月)
すると、四分円が重なった紫色の部分の面積について、以下の式が成り立ちます。
(紫色の部分の面積)=(青色の三日月)+(赤色の三日月)
いったん足して引くという考え方
さて、上の式で、青色の三日月と赤色の三日月のみが式の中に出てきて、せっかく四分円を分割したときに出てきた直角二等辺三角形が出てきません。
ところが、今具体的に三日月の面積が出ていない(という仮定で話を進めている)からこそ、ここからあえて直角二等辺三角形の面積を持ちだして、重なった紫色の部分の面積を求めます。
少し難しいのが、「一見するとないもの」をあえて足して、あとから引くという考え方です。
青色の三日月の面積に関していえば
(青色の三日月)=(青色の三日月)+(青色の直角二等辺三角形)-(青色の直角二等辺三角形)
=(青色の四分円)-(青色の直角二等辺三角形)・・・①
赤色の三日月の面積に関していえば
(赤色の三日月)=(赤色の三日月)+(赤色の直角二等辺三角形)-(赤色の直角二等辺三角形)
=(赤色の四分円)-(赤色の直角二等辺三角形)・・・②
といった式が成り立つという具合に、どちらも直角二等辺三角形の面積をあえて足してから引くことで、式全体としておかしなところがないようにするという部分です。
なぜこんなことをするのかについて、以下でお話します。
改めて、求めるべき紫色の部分の図形について、その面積は
(紫色の部分の面積)=(青色の三日月)+(赤色の三日月)
ですが、上に出てきた①、②の関係から
(紫色の部分の面積)=(青色の四分円)-(青色の直角二等辺三角形)+(赤色の四分円)-(赤色の直角二等辺三角形)
となるのですが、注目すべきは、青色と赤色の直角二等辺三角形の面積を、どちらも引くという点です。
青色と赤色の直角二等辺三角形の面積をどちらも引くということは、全体として正方形の面積を引くということです。
つまり、またさらに上の式は、こんな風に表されることとなります。
(紫色の部分の面積)=(青色の四分円)+(赤色の四分円)-(正方形の面積)
こうして、青色と赤色の四分円が重なった紫色のラグビーボールの面積は
(四分円の面積)×2-(正方形の面積)であることが分かるのです。
正方形をすっぽりと含む円の面積の求め方
円の中にすっぽりとおさまっている正方形があり、正方形の1辺の長さだけが分かっているとき、円の面積を求めるという問題を考えていきます。
問題がこちらです。
右の図の正方形ABCDの辺ABの長さが6cmのとき、円の面積を求めなさい。
半径×半径の値を出すためにどうすれば良いかを考える
円の中に正方形がおさまっている(少し難しい言葉で内接している)とき、正方形の1辺の長さだけが分かっているわけですが、ここで大事なことは円の半径の値は具体的には出せないということです。
ところが不思議なことに、「半径×半径」の値は出せるのです。
正方形を4つの合同な直角二等辺三角形に分ける
正方形の2本の対角線を描くと、この線はもとの正方形を、4つの合同な(全く同じ形の)直角二等辺三角形に分けます。
そして、2本の対角線が交わる点は、円の中心になることが分かります。
ですので、円の中心から正方形のそれぞれの角までの長さは、もちろん、円の半径の長さとなります。
さて、正方形の面積は、1辺が6cmなので、36cm^2となるのですが、正方形が合同な4つの直角二等辺三角形に分けられているとなると、この直角ニ等辺三角形の面積は、9cm^2となることが分かります。
直角二等辺三角形の1辺の長さを□とおく
4つの合同な直角ニ等辺三角形の、直角をはさむ2辺の長さを⬜︎cmとおきます。
というのも、まだ小学生のあいだは、正方形の1辺の長さが分かっていても、正方形の対角線の長さまでは出せないので、ここでは仕方なく、対角線の半分の長さ(つまり、4つの合同な直角ニ等辺三角形の、直角をはさむ2辺の長さ)を⬜︎とおきます。
□×□÷2=直角ニ等辺三角形の面積
今、直角ニ等辺三角形の1辺を□とおくと、面積の公式から
□×□÷2=9
となることが分かります。
そもそも□とおいた辺の長さは円の半径
ここで、あることに気がつきます。
直角ニ等辺三角形の、直角をはさむ2辺の長さは、実は円の半径と等しいのです。
もう一度、下の図を見ると分かります。
□×□÷2=9でしたから
□×□=18(半径×半径=18)
となることが分かります。
このことから、正方形をすっぽりとおさめる円の面積は
□×□×3.14=18×3.14=56.52(cm^2)
となるのです。
こうした問題は、1回解いただけでは、理解することが難しい場合もあります。
正方形の1辺の長さを、4cm、8cmなどとしてみて、面積を求めてみて下さい。
まとめ
円に関する問題は、特に半径の長さに注目することや、円周上の2点を結ぶことで、問題解決の糸口が見つかります。
ここで出てきた問題は、どれも中学受験をする上で、必ず解いておいた方が良い問題ばかりです。
各中学の過去問を見ていると、問題の中で複雑な図形が与えられて、おうぎ形を自分で見つけるタイプのものが多い気がします。
この記事に出てきた問題の類題を何度も解き、どんな問題を解くときにも求められる考え方を、身につけられると良いですね。