こんにちは。算数数学の学び方コンサルタント鈴木です。
「家で教えても、全く理解してくれないんです!!」
「教えても、本当に理解しているのか不安です。」
親御さんとお話をしていて、お家でどう勉強をすすめたら良いのか、どんな問題をよく解いておいた方が良いのか、というご相談に加えて
「算数って、どう教えれば良いですか?」
という声をよく耳にします。
大事なことを一つ言うと、無理に教えなくて良い! ということです。
それは、教えることをあきらめるとか、そういったことではなく、お子さんと一緒に考えていくというスタンスで声をかけることができると良いですよ! というお話です。
ここ最近、「単位量あたりの大きさの単元」が、その後の数学の力を決めると、本気で感じていますので、だんだんと教えるのも難しくなってくるこの単元の問題の教え方について、書いていきますね。
こんな例題の教え方について、解説していきます。
例題 5分間に90Lの水が出る水道管の1秒あたりの水の量は、何Lになりますか。
問題文を声に出して読んでもらう
学年が低いうちは、音読をする機会も多いのですが、学年が上がるごとに、音読は国語の授業でしかやらないという子も増えてきます。
しかし、生徒さんを見ていて、問題文をどんな風に読んでいるのか、正しく読めているのかを確認したいと思ったとき、実際に声に出して問題文を読んでもらうことが、一番良いやり方の一つです。
実際に音読してもらうことで、こんなところに注意することができます。
文字の読みとばしや誤った読み方をしていませんか?
例えば上の例題であれば
・水の量は → 水は
・何Lになりますか → 何Lでしょう
などと読んでしまう子も、中にはいるかもしれません。
自分の思い込みではなく、問題文に書いてあることを、一言一句たがわず読めているかどうか、確かめる必要があります。
読みとばしは良くない?
結論を言いうと、読みとばしは、良いことではありません。
問題文に書いてあることを、書いてある通りにそのまま読むことは、結果として この文章を書いた人は、ここではこんな表現をしているのだな ということを、素直に受け入れることにつながります。
つまり、他の人から学ぶという姿勢を持つことにつながります。
一方で、読みとばしたり、まちがった表現のまま読みすすめることは この文章をこんな風に読んでも、まちがいはないだろう という意識を生みかねません。
つまり、極端に言えば 自分勝手に考えても問題はない という意識につながることも考えられます。
読みとばしなどがあった場合のフォロー
読みとばしや読みまちがいがあっても、ひとまず最後まで問題文を読んでもらうのが良いと思います。
読みとばして、そこですぐにミスを指摘されるよりも、あとでまた問題文を振り返るときがあるので、そのときに
「さっき声に出して読んだとき、ここはこう書いてあるから、その通りに読めると良かったよ。」
と言ってあげられる場面があると良いですね。
条件を把握できているか確認する
「うちの子、問題文をちゃんと読まないんです」
そんなお話もよく聞くのですが、具体的に、「問題文が読めていない」という様子はどこで分かるのか、どこを見てそう判断されてしまうのか、そして何より 何ができていれば、問題文を読めていると言えるのか といったことを、これから詳しく解説していきます。
文中に現れる数値を改めて質問する
声のかけ方のアプローチはさまざまありますが、この問題の場合だと
「この水道管は、何分間に何Lの水が出てるの?」
と聞いてみることで、問題文を1回読んだだけではなく、自分が声に出したことを振り返りながら、少なくとも問題文を2回読むチャンスを与えることができます。
この質問に答えることができると、問題文に書いてある条件は読みとれていると言えます。
母「何分間に何Lの水が出てる?」
子「えーと、5分間に90L」
母「そうだね。ちゃんと読めているね」
こんな会話のやりとりができていると良いのではないでしょうか。
逆に答えられないと、問題文を読めたとは言えず、文字をただ追っていただけであることが考えられます。
答えられなかった場合は
「もう一度問題文を読んでごらん」
と声をかけることで、繰り返し問題文を読むことの大切さを、分かってもらえると思います。
問題で問われていることが何かを答えてもらう
問題を解いていく上で一番重要なことは、何を答える問題なのか? を正しく把握することです。
問題演習を積んでいくうちに、条件を把握することはもちろんですが、「何を答える問題なのか?」を把握することで、なぜこの問題では、こうした条件があるのか? といったことまで分かってきます。
シンプルに「これは何を答える問題?」と聞いてみる
「これは、何を答える問題なの?」
「問題では、何を求めなさいって言われてる?」
こうした質問は、この例題の単元に限らず、お子さんにどんな問題を解いてもらう場面であっても、しておくと良いです。
母「これは、何を求める問題?」
子「1秒あたりに出る水の量だよ」
母「そうだよね」
こんなやりとりができていると良いです。
とにかく問題文に書いてある通りに答えることを意識させる
一つ注意しておきたいのが、この問題の場合「何を答える問題?」と聞いたときに、ただ単に
「水の量」
あるいはもっと短く
「水!」
という答が返ってきたときに、もっと細かく、問題文に書いてある通りの言葉で答えるように促した方が良いということです。
ただただ「水の量」だと、水の重さを聞かれているのか何なのかが分かりません。
あるいは、この問題の場合だと、「水の量」と答えてもらったところで、「どのくらいの時間あたりに出る水の量を答えれば良いのか?」が、正しく把握できているかどうかが分かりません。
「水の量を答えるんだよね。何秒間に出る量を答えるの?」
といった聞き方で聞いてみると、良いのではないでしょうか。
問題文を絵や図に表すことをやってもらう
お子さんに質問をして答えてもらう以外に、問題文に書いてあることを、絵や図にしてもらうことで、文章が読めているかどうかを確かめることもできます。
絵や図を描き
・図のこの部分が、問題文の中に出てきた「この条件」を表している
・図の中にあるここが、この問題で求めることになる部分
ということが理解できていれば、問題文を読むことができていると言えます。
具体的にどんな図を描けば良いのか分からない場合は?
親御さんの方からお子さんに、「図を描いてみて!」と一声かけるだけで、お子さんが図を描けるのであれば、特に問題はありません。
ところが、問題次第では、どんな図を描けば良いのかが、分からないこともあります。
そんな時は、親御さんなら、こんな風に描くということを示してあげるのが良いです。
まずはお手本を見せてから、あとでマネして描いてもらうというやり方も良いのではないかと思います。
一例ですが、私は授業で、この例題であれば、こんな図を描くこともあります。
ご参考にしていただければと思います。
色は2色使うがベスト!
上に出てきた図の例においては、色を2色使っています。
算数の問題については
・まずはこんなことがあって
・次にこんなことをした
という形で、問題文が書いてあることが多いです。
長い問題文もありますが、上に書いた形として捉えて、問題文を追っていくことができると、何を問われているのかが、分かりやすくなってきます。
そのためにも、「まずはこんなことがあって」の部分と、「次にこんなことをした」の部分とで、色を使いわけて図を描けると良いと思います。
こうした理由から、色は2色使うのがベストです。
図を式に直すときの声かけについて
問題文を読み、条件を把握し、図も描くことができると、次はそれを式に直して答を出す場面が待っています。
式を立てることは、実は図を描くことがあってこそできるのですが
・図に描いたどこの部分が、何を表しているのか?
・式を立てる以上は、どことどこが等しいのか?
が分かっていることが大事です。
式を立てる場面においても、上に書いた2つのことが理解できているかどうかを、確かめる必要があります。
このとき、親御さんから説明するよりも、口頭でも良いので、お子さんが式を言えると良いです。
「何算になるのか?」について答えてもらう
単位量あたりの大きさに関する問題では、わり算の式が出てくることが多いですが、図を式に直すときに、わり算になるのであれば、その理由について答えられるかどうかを、確かめておく必要があります。
この例題の場合、お子さんに図を見てもらいながら、こんなやりとりができると良いです。
母「5分間で90Lということは、1分間ではどのくらい出てる?」
子「えーと、90÷5=18(L)出てることになるよ。」
母「そういうことだよね。でも、どうしてわり算で出るの?」
子「1分間に出る量を5倍したものが90Lと考えると、何かを×5したものが90になるから、その何かの数はわり算で出る!」
といった具合に、もともとかけ算の式で求められるものがあって、今答えるものは、そのかけ算とは逆の考え方で解けることが分かった上で、わり算の式になるということが理解できていることが望ましいです。
「説明して!」よりも「教えて!」
ここでもうひとつ付け加えておくと、上のやりとりでは、お子さんが説明する場面が出てきますよね。
お子さんに対して、「説明して!」と指示することもあると思うのですが、このときに、「教えて!」と言うと、楽しそうにその問題の考え方や解き方を教えてくれることがあります。
私も授業で、生徒さんに「教えて!」と言ったときの反応を見ているのですが、嬉しそうに話してくれることが多くあります。
ぜひ、ご参考にしてみて下さい。
「今自分は何を計算したのか」をその都度振り返らせる
単純な計算問題はほとんどミスしないのに、文章問題は何だかミスが多いという生徒さんは、自分で作った式や、式を計算して出した結果に対して
・今自分が作った式は、何を求めるためのものなのか
・式を作って計算したのは良いけれど、今計算して出てきた答は、何を表すのか
といったことを意識して、問題を解けていないことが多いです。
1つ式を立てるごとに振り返る
ここで出てきている例題だと、すぐに 90÷5 を計算すれば良いと気づくお子さんもいると思います。
すぐにこの計算式を思いつけることは良いのですが、先に書いた「わり算が出てくる理由」に加えて、90÷5 という式は、何を求めるためのものなのかを、すぐに振り返ることができると良いです。
そのためにも、親御さんの方から
「それは、何を求める式かな?」
と、さりげなく聞けると良いです。
1つ計算するごとに振り返る
90÷5=18 と答が出てきたら、ここでは何を求めたのかということに加えて、単位は何かまで振り返ることが大事です。
この例題に限らず、算数の文章問題においては、「単位が何なのか?」を振り返ることは、クセにしておくと、ミスも減ってきます。
このことは特に、速さの問題で役にたちます。
メモを残しておく
今計算した「90÷5=18」というのは、1分間に出る水の量のことでした。
文章問題でミスをする生徒さんは、よくこのまま答を18Lと書いてしまうことがあります。
問題文では、1秒間に出る水の量を聞かれているので、いくら計算結果や式の立て方が合っていても、問われていることに対して、答えられていないことになってしまうのです。
そうしたミスを防ぐためにも、計算して値を出したら、その値の横に、何を求めたのかを、メモしておくことをおすすめします。
90÷5=18(L)・・・(1分間に出る水の量)
という具合に、ノートに書いておくと良いよと、お子さんに伝えてあげて下さい。
こうしたやりとりを経て、もう一度、お子さんに
・この問題は何を求める問題なの?
と聞いておくことで、最後に立てるべき式に意識を向けることもできます。
母「18Lは、何分間にでる量?」
子「1分間」
母「そうそう。もう一度、ここではどのくらいの時間出る量を聞かれてる?」
子「1秒間、だから、また÷60をすれば答が出るね」
母「そういうことだよね。60でわる理由を教えて!」
子「1分間は60秒だから、60秒で18L出てると考えれば、1秒間に出る量は18÷60で求められるから!」
特に時間の単位が関係する問題は、習いたてのうちは、「どんな値でわるのか、あるいはどんな値をかけるのか」 について説明できることが、理解度を見る一つのものさしとなります。
ぜひ、お子さんに「式の立て方について教えて!」と聞いて下さい。
まとめ
算数の問題を教えるとき
「これを教えてから、次にこれを説明して・・・」
と考えてしまう方も多いかと思います。
説明したつもりでも
・何でこの説明で分かってくれないの?
・さっき言ったはずなのに、また同じところでミスをしている!
・本当に分かっているのか不安が残る
と感じている方もおられると思います。
算数や数学では、教わることももちろん必要ですが、やはり自分で疑問を持ちながら、それを自分で解決していくという姿勢が求められます。
多くの生徒さんが、自分で疑問を持つという部分に対して、なかなか意識を向けられないことがあります。
はじめは、算数に対して、あまり感心がなく、自分で疑問を持つということが、難しいこともあると思うのですが、親御さんの方からお子さんに、問題の解き方や、どうやって考えたのかを聞いて、お子さんが答えたことを認める場面があると、それだけでも算数そのものに対するお子さんの感じ方は、違ったものになってくるはずです。
一緒に疑問を解決していくことが、結果として、算数を教えることにつながっていきます。
新規の方のご面談でも、算数の教え方についてお話させていただくことがありますので、気になることがある方は、いつでもお問合わせ下さいませ。