中学受験の終盤になると、塾の先生から「このままだと厳しいです」「志望校を下げたほうがいいかもしれません」と言われることがあります。
親としては「ここまで頑張ってきたのに、今さら下げたくない」「本人もあきらめていないのに」と胸が締めつけられる思いになるものです。
「あきらめたくない」という気持ちはとても大切です。
その一方で、現実を受け止めながら、冷静な判断も必要です。
この記事では、塾に志望校を下げるように言われたときに考えるべき5つの視点をお伝えします。
① 「なぜ志望校を下げるように言われたのか」を正確に理解する
まず最初にすべきことは、「なぜそう言われたのか」を正確に把握することです。
塾が「下げた方がいい」と言うのには、いくつかの理由があります。
成績データ上の“安全圏”を重視している場合
模試の偏差値や合格可能性が50%を下回ると、塾は「安全校を中心に組み立てましょう」と指導する傾向があります。
これは「責任ある立場としてリスクを減らしたい」という意図もありますが、その子の成長力や直前期の追い上げまでは数値に反映されていません。
直近の学習リズムや精神面を心配している場合
受験期になると、子どもが疲れや焦りで集中力を欠いているケースもあります。
「このままでは本番で実力が出し切れない」と判断して助言している可能性も。
ただし、家庭のサポート次第で十分に立て直せる場合もあります。
まずは冷静に、理由を“具体的に”聞くこと。
「どの単元が課題なのか」「どの模試結果を根拠にしているのか」を明確にすることが、今後の判断の第一歩です。
② 「本人がどこまで本気であきらめていないか」を見極める
親がどんなに強く願っても、最終的に受験を戦うのは子ども本人です。
ここで大切なのは、「本人の意志が本気かどうか」を丁寧に確かめることです。
「受かりたい」ではなく「通いたい理由」を語れるか
「受かりたい」よりも「通いたい理由」を自分の言葉で話せるかが鍵です。
たとえば「校風が好き」「部活動が魅力」「あの授業を受けたい」など。
この“志望動機の明確化”が、ラストスパートを走り抜く力になります。
まだ“前を向けている”かどうか
「次はミスしない」「もっとやりたい」と言える子は、まだ伸びます。
逆に「もう無理」「疲れた」と感じている場合は、気持ちを立て直すサポートが必要。
どちらの場合でも、親が焦らず話を聴く姿勢が最も大切です。
③ 「最後まで挑戦する」と決めたら、戦略を変える
第一志望をあきらめないと決めたなら、「努力量」ではなく「戦い方」を変える必要があります。
弱点単元を“ピンポイント特訓”で潰す
直前期は新しい単元を広げるよりも、頻出分野の苦手克服に集中。
算数なら「割合」「速さ」「立体図形」、理科なら「てこ・ばね」「水溶液」など、出題率の高い単元を優先します。
得意分野は維持、苦手分野は「毎日10分だけでも触れる」意識で。
過去問は「できなかった問題」から逆算して修正
過去問をやる目的は“点数を取ること”ではなく、“弱点を見つけること”。
間違えた問題を「知識不足」「読み違え」「時間配分」などに分類し、1週間ごとに克服テーマを設定しましょう。
塾とは「期限つき」で交渉する
塾に「もう少し粘らせてほしい」と伝えるときは、「この2週間で苦手単元を集中特訓して、再度判断させてください」と具体的な期間を提示しましょう。
塾も“努力を見せてくれる家庭”には本気で応援してくれます。
④ 「滑り止めには必ず受かる」戦略をとる
第一志望を追い続けるためには、滑り止めに確実に合格できる準備が欠かせません。
本命に挑むための“安全基地”をつくる
滑り止めに受かることで、子どもが精神的に安定します。
「どこにも受からなかったらどうしよう」という不安を減らすことで、第一志望への集中力が上がるのです。
滑り止め校の過去問対策も怠らない
「どうせ受かる」と油断せず、過去問を少なくとも2〜3年分は解いておきましょう。
時間配分や出題傾向をつかんでおくことで、“確実な合格ライン”を取る練習になります。
合格を“自信の糧”に変える
滑り止め校の合格は、「本気で頑張れば結果が出る」という実感を与えます。
この自信が、直後の本命校入試で大きな力になります。
⑤ 合否にかかわらず「成長が残る受験」にする
どんな結果になっても、「やりきった」という経験は必ず次につながります。
受験の数か月間で、子どもは計画力・集中力・自己管理力を一気に成長させます。
たとえ第一志望に届かなかったとしても、ここで得た力は高校受験・大学受験で必ず活かされます。
結果よりも、「あの時、本気で頑張った」と胸を張れる経験を残すこと。
それが、受験を“親子の財産”に変える最大の秘訣です。
よくある質問集
Q1. 塾の先生の言う通りに志望校を下げるべきでしょうか?
A. 一概には言えません。塾の意見は大切な判断材料ですが、「なぜそう言われたのか」を具体的に聞き、本人の意志と家庭の考えを照らし合わせて決めましょう。
Q2. 第一志望をあきらめずに受けるのは無謀ですか?
A. 無謀かどうかは、直前期の伸び方と勉強の質で変わります。計画的に立て直せば、合格例は多くあります。
Q3. 滑り止めの勉強にも時間を割くべきですか?
A. はい。滑り止めに確実に合格しておくことで、本命校への挑戦に精神的余裕が生まれます。最低限の過去問対策は必ず行いましょう。
まとめ
塾から志望校を下げるように言われたときこそ、
- 理由を冷静に確認する
- 本人の本気度を見極める
- 挑戦するなら戦略を変える
- 滑り止めには必ず受かるように対策する
- 合否に関係なく「成長が残る受験」にする
この5つの視点を大切にしてください。
そして、親の「信じる力」は、何よりも子どもの心を支えます。
現実を見据えつつ、最後まで希望を手放さないことが、親子で後悔しない受験につながります。
