こんにちは。算数・数学プロ家庭教師の鈴木です。
今日は「算数ができない子に、どう教えれば良いのか」について、自身の体験も交えながら書いていきたいと思います。
これまでさまざまな親御さんともお話をしてきましたが、特に小学生のお子さんの親御さんから「算数をいくら教えても分かってくれない」というご相談を受けたことが何度かあります。
特に低学年のお子さんの親御さんだと、「高学年で算数についていけるか心配」とお考えの方もいらっっしゃいるのではないでしょうか。
この記事では「算数ができなくなる原因」と、「成果の出る教え方と勉強の仕方」について解説していきたいと思います。
算数ができなくなる原因については、あくまでも、私が多くのお子さんを見てきた中で「苦手なお子さんには、共通してこのような傾向があります!」というスタンスで解説しております。
ですので、個人的な見解を含む部分もありますが、この記事を参考に算数を教えることで、お子さんの成績も上がってくるはずですので、ぜひお試しいただけると嬉しいです。
算数ができないとは?
そもそも「算数ができない状態」とは、どのような状態を指すのかについて、詳しくお話していきますね。
親御さんとお話をしていて、私から「お子さんの様子」について伺うと、以下のような返答をいただくことが多いです。
・計算ミスをよくする
・ケアレスミスをする
・同じ間違いを何度もする
・適当に解いている
・考えていないように見える
・教えてもすぐに忘れる
他にも「文章を読んでいない」「面倒くさがる」などなど、「算数ができなくなる原因と思われること」が、話題に上がりますが、このような様子が見られる場合、そもそもお子さんは、以下に挙げることが課題としてあると考えられます。
これらの課題こそが、低学年においては「算数ができない状態」を指します。
正確に数えることができない
計算ミスが多い場合、特に低学年だと「足し算・引き算」が計算の中心になると思いますが、そもそもお子さんは「正確に数えること」ができていない可能性があります。
「計算」というと、数や文字をノートに書くという、一種の「作業のようなもの」であると捉えられがちかもしれませんが、学年が低いうちは、決してそうではありません。
仮に「12-7」という式があったとき、大事なのは、これらをただ「数字・記号」と捉えるのではなく、「12」という数が何かしらの「量」を想像できていることです。
「1個、2個、・・・、12個」「1本、2本、・・・、12本」という具合に、「数えられる量」と「数字」が結びついているという感覚を持てることが大事です。
が、しかし、算数ができない子は、こうした感覚を持てていないことも多いのです。
自分の興味があることと結びつかない
「数えられる量」と「数字」が結びつかないとき、その原因として「自分の興味あること」と「量」が結びつかないということが考えられます。
算数や数学は「ただのお勉強」ではなく、「生活の中から生まれたもの」であると捉えられるのですが、そのことに納得いかないお子さんも多いように、私は感じます。
どうしても、色んなお子さんの話を聴く限り、「生活をしていく上で、いちいち数えたりしようなんて考えないよ・・・」という声も多いです。
図形を想像できない
算数ができないお子さんには、「自分で図を描けない」「図を描くことを面倒くさがる」という共通点が浮かびあがります。
低学年だと「かたち」という表現でもって図形を扱うことになりますが、算数ができないお子さんは「かたちの特徴」を説明できないことが多いです。
もう少し具体的にいうと、「どんなかたちなのか」「身のまわりにそのようなかたちのものがあるかどうか」を説明できません。
算数で使われる言葉にピンとこない
「~より多い」「~のほうが・・・より少ない」などといった「算数で出てくる言葉」が何を意味するのかを理解できていないことも、算数ができなくなる原因の一つです。
このような「大人であればすぐに分かる表現」であっても、お子さんには理解できていないことも珍しくないです。
何かに例えられない
具体的な「量」を「数字」に置き換えて表現することが、算数の学習の基本となりますが、学年が上がるにつれて、今度は「数字」を図に例えるという考え方を学びます。
例えば典型的なのが、ものの個数を「線分の長さに例える」というものですが、線分を描かれたところで、「それはものの個数とは全く別のもの」だと思ってしまうお子さんも、実は多くいます。
「数を図に置き換える」ということを、算数でも数学でも頻繁に行いますが、これをできるようになると、算数の力も身についてきます。
算数ができなくなる原因
さて、これまで「算数ができない状態」について解説してきましたが、このような状態に陥ってしまう主な理由を、書いていきたいと思います。
よく「子どもが自分で考えない」「何となく答を出している」という声を聴きますが、結論からいうと、「自分で考えない」というのは、「自分の中にある成功体験を思い出さない」ということです。
「何となく答を出している」というのは、「たまたま式を書いて計算したら、答が合ってしまった」という状態を意味することが多いです。
主にこれらの2つの理由によって、「算数ができなくなっている」と言えることも多いので、こうした背景についても、以下で解説していきますね。
前に習ったことを思い出さない
算数・数学はどうしても、「前に習った単元をもとに理解する」が、学習の基本姿勢となります。
かけ算であれば、「同じ数を3回足すこと」を「×3」で表現しますよね。
このときに大事なのが、「以前に同じ数を3回足すようなことがあったかどうか」を思い出し、今習っているかけ算が、「足し算が姿形を変えたもの」であると認識できることです。
「前に習ったことの延長線上に、今の単元がある」と認識できることで、「前のことを思い出すから、そのことがそのまま記憶に残る」からこそ、理解が定着するというイメージです。
なのですが、算数ができないお子さんだと、この認識を持てるまでに時間がかかることも、しばしばあります。
もしお子さんが、「新しい単元なのだから、前に習ったことは関係ない」という認識であれば、算数ができなくなる大きな原因を抱えているかもしれません。
どうすれば正解できたかを思い出さない
「前に習ったことを思い出さない」という姿勢とも関係しますが、算数が苦手なお子さんは、問題を解くときに、「何が正解で、どうすればその正解を出せたのか」を思い出せないことが多いです。
結局のところ、「正解を出せた理由」を知らないがために、「こうすればうまくいく」という一つの方法を思い出せない、かあるいはそもそも知らないと考えられます。
逆に算数が苦手なお子さんは、「この問題は (今まで解いた問題とは別に) どう解くのか」を考えていることが多いです。
もしお子さんが、問題集などを使っていて、例題の解き方をマネして類題を解くところを、例題の解き方と違うことをしてしまう様子がある場合、「どうすれば正解できたのか」を知らない可能性があります。
合っているかどうかを判断しない
「子どもが見直しをしない」というお悩みとも関係してきます。
「前に習ったことを思い出さない」「正解できた理由を知らない」といった様子にもつながってくるのが、「合っているかどうかを確かめない」という間違った姿勢です。
どの教科でも欠かせないのが「見直しをすること」なのですが、算数・数学においては「自分の考えが正しいかどうか」「自分が書いたことが正しいかどうか」などを、一つ一つ確かめていくことになります。
「正しいかどうか」をどう判断する際に、ここでもやはり「前にこう考えて正解できたから、ここでもこう考えるのは正しい」と思える気持ちが大事になります。
ここまでお読みいただいて、お気づきの方もおられると思いますが、算数ができないお子さんというのは「前に習ったことを振り返らない (自分で思い出さないタイプの子) 」とも言えます。
前に習ったことを思い出し、「今習っていることとのつながり」を見つけ、「正しいかどうかを判断できる」という思考が持てると、算数も数学もできるようになります。
が、しかし、算数ができないお子さんは、こうした思考タイプではないと考えられます。
間違ったらそのままにしておく
前に習ったことを「振り返らない」「思い出さない」という姿勢とも関係してくるのが、「間違いを振り返らない」という姿勢です。
当然のことながら、間違ったものをそのままにしておくと、次に習う単元を理解できません。
問題を解き「マルつけをして、赤色で答を書いただけ」という様子があれば、それが間違いなく「算数苦手の原因」となってしまいます。
親の教え方が悪いのが原因?
よく「親の教え方が悪い」などという声もありますが、それは本当かと疑問が浮かぶことも確かです。
ただどうしても、お話を聴く限り、親御さんから「こうするとうまくいかないんですね」などのお声もあったことは事実です。
以下ではそのような実例を2つ紹介していきますので、「教えているのに、全く成果がでない」といったときの参考にしていただければと思います。
感情的になってしまう
感情的になってしまうのは、人間である以上仕方のないことだと思います。
親御さんが感情的になったとしても、そのことがお子さんにどう影響があるのかなど、確かめようがないという見方もあります。
ただどうしても、感情的になることで、「お互いに分かり合えない状態」になってしまうのであれば、教えているのに理解されないという構図が成立しているのかもしれません。
感情的になってしまう理由は、主に親御さんの「期待値・基準値が高いこと」が挙げられます。
「この学年なら、これができて当然なのにできない」「こんなことできると思っていたのにできない」などと思っていると、それが不満となってしまうことから、感情的になってしまいます。
「親の考え」=「子どもの考え」
お子さんの様子を見ていると、「大人が考えているように、子どもも考えていることなどまずない」と断言できます。
「相手と自分は全く別の生きもの」であることを知ると、「子どもはこれをこんな風に考えていた」ということも分かり、お子さんが算数を理解できない原因が見えてきます。
しかし、親御さんが教える際に、「子どももこの問題に対して、こう考えているに違いない」というバイアスがかかると、お子さんにとっての理解の妨げになる可能性が高いです。
実証済み!成果が出る算数の教え方
ここまで、算数ができなくなる理由について書いてきましたが、ここからは具体的に、「どう教えれば成績が上がるのか」について書いていきます。
私も以前、低学年の算数が全くできなかった女の子を指導した経験がありますが、以下に書いてあることを実践した結果、テストで90点を取れるようになりました。
基本スタンス「教えなくて良い!」
「親御さんの考え」=「子どもの考え」ではないと、先ほどお伝えしましたが、まず大事なのは「お子さんの言い分を聴くこと」です。
こちらから知識を教えるのではなく、まずお子さんが「与えられた問題に対して、どのように考えているのか」を聴いてみることが大事です。
そうすることで、お子さんの中で「理解できているところ」「実は勘違いしていたところ」が見えてきます。
記号の意味、文章の読み方など「覚えるべきことを教える」のは、まずお子さんの考えを引き出してからです。
式でも文章でも何でも「読んでもらう」
お子さんが、例えば文章を読みとばしていないか、式を見間違っていないかなどを確かめるべく、お子さんには必ず「声に出して読む」を実践してもらうと良いです。
「子どもがすぐに分からないと言います」というご相談もありますが、もう一度問題文を読ませることで、すぐに解き方が分かったという事例もよくあります。
それぐらい、問題文を読んでいないことなど珍しくないのです。
解きはじめる前に「説明してもらう」
すぐに問題を解くよりかは、一度お子さんに、今からどのように問題を解こうとしているかを聴き出してみるのもおすすめです。
先ほどもお伝えした通り、算数ができないお子さんは「例題の解き方と別の解き方」で解こうとすることもあります。
そのようなことがないかを見るためにも、まずお子さんに、「どんな風に解くか」を聴いてみると良いです。
すぐに丸つけをしない!
解き終わったら、すぐに丸つけをせずに、「見直しの時間」を設けることがおすすめです。
自分の書いたことが合っているかどうか、考えていることが正しいかどうかを振り返ってもらうことで、それがそのまま「見直しの姿勢」につながります。
お子さんから、「 (お子さん自身が分かる限り) これ以上見直しようがない」と言われたら、丸つけをしてみて下さい。
合っていた問題こそ「説明してもらう」
「合っていたらそれで良し」「合っていて当然」ではなく、「正解できた理由」にお子さん自身が気付けるように、どう解いたかを説明してもらうことも大事です。
そうすることで、「このような問題は、こう考えると正解できる」という考え方を見つけやすくなりますし、次に同じような問題を解く際に、その考え方を使うきっかけにもつながります。
間違った問題は「一緒にミスを探す」
見直ししたにもかかわらず、正解できなかった場合、「見直しのポイントがどこにあるのか」、見直しのポイントにおいて「何を確かめることが見直しなのか」を理解できていないことが考えられます。
見直しの仕方についてはこちらの記事でも解説していますので、ぜひ参考にして下さい。
https://sugaku1bann.com/2021/11/10/minaosinotaiminngu/
親御さんから「ここでこれが正しいかどうか確かめた?」などとお子さんに聞きながら、「実は見直しができていなかったポイント」がどこなのかを、お子さんと一緒に探してあげて下さい。
算数を得意にするためにお子さんにとって必要なこと
ここからは、算数を得意にしていくために必要なことを「お子さんがやること」「親御さんがやること」に分けて書いていきますね。
まずはお子さんがやることについてです。
毎日学ぶことが一番大事!
その日習ってきたことは、すぐにもう一度家庭で学習することが大事です。
毎日その繰り返しをしていくことで、考え方の定着にもつながります。
ただ家庭学習のときに守るべきことは、「解説・ヒントなど何も見ないで正解を出す」ということです。
その日習ったことを思い出し、「こうすれば正解できた」と思えた上で、実際に問題を解いてみることが大事です。
「できないこと」を家庭学習にしない
どんなに勉強ができる人でも、「一人でできること」には限界があります。
算数ができないお子さんであればなおさら、「自分一人では正解できない問題」などがあるのは当然です。
このときに大事なのが「できないことを家庭学習にしない」という考え方です。
よく塾に通っていて、塾からの宿題が「問題集の中でも習っていないこと」になってしまっているご家庭がありますが、これだと結局「できたことを思い出す」という思考が身につきません。
もっときつい言い方をすれば、「宿題をしたフリ」をお子さんがしてしまう可能性さえあります。
このような考えから、ご家庭では原則「できるようになったことを繰り返す」が大事です。
算数を得意にするために親にとって必要なこと
次に、親御さんにとって必要なことを書いていきたいと思います。
教えることよりも、以下に書くようなことの方が大事だと、個人的に感じるときもあります。
「面倒くさい」という態度を親が出さない
お子さんがよく「数字を書くのが面倒くさい」「図を描くのが面倒くさい」と言ってくることがありますが、その親御さんと話していると、親御さんからも「面倒くさい」というワードが出ることがありました。
「算数」=「面倒くさいこと」とお子さんが認識してしまうのは、親御さんの普段の何気ない会話の中にヒントがあると、私自身も感じています。
親御さんからはぜひ「数字を一つ一つ書けばできるよ」「図をこんな風に描けばできるよ」などと声をかけてあげられると良いのではないかと思います。
できていることを具体的に伝える
よく「ほめると図に乗ります」という方もいらっしゃいますが、よく聞いてきると、お子さんに向かって「天才だね」「素晴らしいね」と声をかけた結果、図に乗ってしまったそうです。
声のかけ方という観点では「能力ではなくプロセスを認めること」が大事になってきますので、それがお子さんに伝わるような声かけができると良いです。
能力をほめてしまうと、仮に何かができなかったとき、それまで自分がしてきたプロセスを振り返らずに、自分の能力の否定につながると考えられることから、「プロセスを承認すること」の方が大事だと言われています。
一緒に喜ぶ
できるようになったとき、一緒に喜ぶことも大事です。
特に低学年のうちは「正解を出せることが嬉しいこと」だと思えることで、また次も勉強してみようという気持ちも生まれます。
「できて当然」という態度ではなく、「これができれば、また次これもできるようになる」という期待を持てるような姿勢を見せることが大事です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
算数ができないと、お子さんの自身もなくなってしまうと心配な方もいらっしゃるかと思います。
どんなお子さんも、「正しい思考のアウトプット」を身につけ、とにかく「最後まで自分で答を出す」という行動を繰り返すことで、間違いなく算数・数学ができるようになります。
ぜひこの記事も参考に、算数をお子さんに教えられると良いのではないかと思います。