割合の還元算とマルイチ算の違い 問題文から分かるその見分け方

こんにちは。鈴木です。

今日は、割合の問題の中でも、もとにする量が2つあるものについて、お話をしていきます。

還元算と、マルイチ算というものについて、お話をしていくのですが、この2つの問題は、少しやっかいなところがあります。

それは、問題文を読むかぎり、とてもよく似ているのに、お互い解き方が違い、なおかつマルイチ算については、難易度が高いというところです。

習ったけど、いまいちよく分からないという方は、この記事が理解の助けになればと思います。

なお、この記事は、割合をかなり苦手としている生徒さんやその親御さんに向けて書いています。

割合にはある程度理解があり、ダイレクトに、還元算とマルイチ算の違いを知りたい方は、以下の「還元算と決定的に違うところ」を参照して下さい。

もとにする量が2つある問題 その1

これからお話する還元算とマルイチ算は、こんな問題を解くことで、理解できるようになります。

例題.1 ある本を読むのに、1日目は全体の2/5を読み、2日目は残りの5/6を読んだところ、8ページ残りました。この本は全体で何ページありますか。

割合を考えるときは必ず線文図を描く

問題文の中に分数が入るかぎり、線分図は必須です。

まずはこんな図を描きましょう。

どんな問題で線分図を描くのかが、よく分からないという生徒さんもいますが、線分図を使うことが分かるポイントは、問題文の中に分数が入っていることです。

割合とは、「一方が他方の何倍か」「一方が他方の何分のいくつなのか」を分かりやすく見るための考え方です。

苦手な方は、こちらの記事も読んでいただき、割合の復習をされると良いと思います。

https://sugaku1bann.com/2022/03/07/wariainonigatetaisaku/

何がどの量の「何分のいくつなのか」を意識する

問題文を読むと、1日目は全体の2/5、2日目は残りの5/6を読んだとあります。

割合に苦手意識がある生徒さんに関しては、ただただ「2/5」とか「5/6」ということではなく「どの量の何分のいくつなのか」を振り返ってもらいながら、理解度を見ていく必要があります。

線分図を見て、どこからどこの長さが、問題文中の何を表すのかを気にしながら、問題を解けると良いですね。

次々にもとにする量を求める

線分図を見ると、2日目の、残りの1/6にあたる部分が8ページとなっていることが分かります。

つまり、1日目に読んで残ったページは、8×6=48ページとなっています。

1日目に本全体の2/5を読んだわけですので、48ページというのは、本全体の3/5にあたります。

分数の考え方の原点に戻る

割合の言葉で言えば、48ページは本全体の中の比べられる量、3/5は割合そのものです。

ここではあえて、分数の考え方に戻って、本全体のページ数を求めます。

全体の3/5が48ページなので、全体の1/5にあたるページは16ページです。

つまり、全体は16×5=80ページとなっています。

これは

48÷(3/5)=48×(5/3)=48÷3×5

を計算していることにあたります。

もとにする量が2つある問題 その2(還元算)

お次ももとにする量が2つあるタイプの問題です。

ですが、前の問題とは少し違うところがあります。こうした違いにも気をつけて問題文を読めると良いですね。

例題.2 花子さんは持っているお金の1/6より200円多いお金でふで箱を買い、残りのお金の2/7でアメを買ったところ、300円残りました。花子さんがはじめに持っていたお金は何円ですか。

線分図を描く

問題文の中に分数が入っているかぎり、「線分図を描いて問題を解いてね」と言われているようなものです。

こんな線分図を描いて下さい。

次々にもとにする量を求める

どんな問題でもそうですが、「何を求めることからすれば良いのか」を意識することが大事です。

還元算の場合は、問題文の中の「残りの〇〇を使ったら何円残った」という部分に注目するところがポイントです。

この問題では「残りのお金の2/7でアメを買ったところ、300円残った」とありますので、ここから問題を解くことを考えます。

残りのお金の2/7を使ったら、300円残ったので、この300円というのは「残りのお金の5/7」となっています。

線分図で描くとこんな感じです。

ここから、残りのお金は300÷(5/7)=300×(7/5)=420(円) であることが分かります。

線分図を見ると、持っているお金の1/6より200円多いお金を使ったら、420円残ったことが分かるので、持っているお金の5/6は620(円)であることも分かります。

このことから、はじめに持っていたお金は620÷(5/6)=744(円)となります。

そもそも線分図を描くメリットは何か

線分図を描くことで、例えばお金の問題であれば、「持っているお金の何分のいくつ」といった情報に加えて、「何円よりいくら多い」などの問題文も、線の長さとして目に見える形に変えることで、式もたてやすくなります。

ですので、一番のメリットは、目で見たときに式がたてやすくなるという点です。

文章問題の場合は

・問題文を図に直す

・図が表すことを式に直す

・式を計算する

という手順を踏むことになります。

線分図を描くメリットは本来、線分図に描いてあることを、そのまま計算式として表現できるという点にあります。

もとにする量が2つある問題 その3(マルイチ算)

次に考える問題が、マルイチ算です。

これは、全体の量を①とおくことから、この名がつくらしいですが、これはどの割合の問題でも同じです。

まずはこんな典型的な問題を考えていきます。

ふくろに入っているアメを、はじめに全体の2/7より12個多く取り出し、次に残りの5/6を取り出したところ、はじめの1/14が残りました。はじめにアメは何個入っていましたか。

線分図を描く(ここまでは還元算と同じ)

還元算を解いたときと同じ線分図を描きます。

割合の単元に関しては、量そのものや「何がどれの何分のいくつなのか」といったことを、全て線分図として表すことは、どの問題でも共通しています。

やはり、こんな線分図を描きます。

還元算と決定的に違うところ

還元算の問題と比べてみると

「はじめに全体の何分のいくつより何個多く(あるいは少なく)とり、次に残りの何分のいくつを取ったところ」

まではほぼ全く同じなのですが、その次の問題文に注目してみて下さい。

「はじめの1/14が残りました」

とありますよね。

この部分こそが、還元算とマルイチ算との決定的な違いで、還元算では具体的に「いくつ残っている」と問題文に書いてあるのに対し、マルイチ算では「何分のいくつ残った」と書いてあるのです。

数学的な計算知識を要するポイント

具体的な解き方の解説に入ります。

画像の線分図中にある「◯の2/7などを、(2/7)」と書いて解説していきますね。

問題文には「はじめに全体の2/7よりも12個多く取り出した」とあります。

この文からは、取り出した個数と、残りの個数について

・取り出した個数は(2/7)+12

・残りの個数は(5/7)-12

となることが分かります。

このすぐあとに計算することの中に、中学からの数学では当たり前に使う計算テクニックが出てきます。

問題文中の「残りの5/6を取り出したところ」という部分を、計算式として表すと

[(5/7)-12]×5/6

となります。

この式の作り方については、「残り」にあたる「(5/7)-12」全体にカッコをつけて、5/6をかけるということに、難しさがあります。

そして、これを計算した結果は

[(5/7)-12]×5/6=(25/42)-10

となるのですが、ここにこそ、はじめにお伝えした数学の計算テクニックが隠れています。

それは一般的な式として書くと

(A-B)×C=AC-BC

となる部分のことです。

他の割合の問題や還元算と比べて、線分図を書いて式を作る以外に、マルイチ算では以下の2点が加わることで、難易度がいきなり上がります。

・そもそもカッコを持ち出してかけ算の式を作ること

・中学の数学では当たり前に使う計算テクニック(分配法則といいます)を使うこと

マルイチ算の解説

計算式を含めた解説については、以下の画像にまとめましたので、お読みいただけるとありがたいです。

還元算とマルイチ算まとめ

還元算とマルイチ算との間には、理解していく過程においてギャップが出てくることも多いです。

還元算やマルイチ算を勉強していくときに大事なのは、まずは割合の問題について、線分図を使うことに対する理解を持つことです。

中学入試の算数では、◯◯算など、文章問題に名前がついていますが、大事になってくるのは

・どんな問題にも共通する「問題文中の注目ポイント」

・似た単元同士の問題の解き方に共通する「問題を解く上で大事な考え方」

の2つです。

これらは基本問題を解いていくことで、身につけられると良いですね。

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