数学のケアレスミスの原因をプロ家庭教師が徹底解説

こんにちは。算数・数学プロ家庭教師の鈴木です。

「ケアレスミスがなくならない!」

お子さんの様子を見て、このようなお悩みをお持ちの方がいらっしゃるかと思います。

これまで「計算ミス」とは何か、「そもそもミスとは言えない実例」について述べてきました。

計算ミスの原因を作る原因と、その対策について知りたい方は、以下の記事もお読み下さい。

https://sugaku1bann.com/2021/10/25/keisannmisunogenninntotaisaku/

「親御さんから見るとミスしているように見えるけれど、お子さん本人は正解したつもりになってしまっている」という構図が生まれてしまっている実例について、その原因と対策についてはこちらの記事もお読み下さい。

https://sugaku1bann.com/2021/10/26/misudewanakuseikaisitatumori/

計算ミスを考察するときにも、たびたび述べてきましたが、そもそも「計算ミス」が起きる原因は、その多くは「書いたことが違う」「見ているところが違う」ことに由来します。

このことから、小学生・中学生のお子さんにあてはまるのは、計算ミスだけではありません。

中学受験の算数のみならず、中学の数学からは特に、先に述べたような計算ミスに加えて、以下で解説するようなタイプのミスが原因で、正しい答にたどりつけないということが多くあります。

この記事では、「ケアレスミス」という言葉で済ますのではなく、具体的に、どういった場面において、何が原因で間違いが起きているのかについて解説し、どういった対策をすれば良いのかについてお伝えしていきます。

書き間違いによるミス

書き間違いのミスは、例えば問題用紙には (x^2+3x) と書いていたのにもかかわらず、解答用紙にはどういうわけか、(x^3+3x) などと書いてしまっているタイプのミスです。

これはいわゆる「頭の中で考えたことと、実際に書き起こしたことが違っている」という自覚がある人に多いミスです。

私にも経験がありますが、漢字を書くときに、「意識」という漢字を書く前に、「意見」という漢字を書いていたことがあったときに、頭の中では「意識」という漢字を書こうという指令が出ているはずなのに、手が勝手に「意見」と書くようにプログラミングされているかのような感覚があったのを覚えています。

他にも「3/8と出てきた答を8/3と書いてしまう」「x-yを解答用紙ではx+yと書いてしまう」といったように、「書く順番を間違えること」や「符号を書き間違えること」なども、書き間違いのミスのカテゴリーに含まれると考えられます。

見間違いによるミス

書き間違いのミスとも多いに関係がありますが、お子さんから話を聴くと、「0を6と見間違えてしまいました」といった実例があるように、自分が書いたことを見間違うといったタイプのミスもあります 。

こうしたミスが起きる原因として考えられることは、「自分が何を書いたのか、何を求めてきたのか、問題文には何が書いてあったのか」を振り返ることができていないということです。

このタイプのミスは、書き間違いのミスとも似ていますが、もうすこし詳しく具体例をもとに、ミスが起きるメカニズムについて、解説していきます。

例えばこんな問題文があったとします。

ある車が秒速5mでXm進み、その後秒速10mでYm進んだら、かかった時間は200秒でした。一方で、秒速3mでXm進み、秒速12mでYm進んだら、かかった時間は300秒でした。XとYの値を求めなさい。

問題を解くプロセスにおいて、はじめお子さんが問題用紙のとある空白に「(x/5)+(y/10)=200」という式を書き、その後また次に続く問題文を読み、今度は「(x/3)+(y/12)=300」という式が出てきたとします。

このときに、お子さんが「連立方程式を立てて数を求めれば良い」ということが分かっていたとしても、その連立方程式を立てる際に、問題用紙のとある空白に書いた式を見て、間違えて

・(x/5)+(y/16)=200   ・(x/3)+(y/12)=300

と書いてしまったとします。

このときに、問題文に書いてあること (つまり秒速10mと書いてあったこと) を振り返ることができていれば、上に書いたような見間違いが起きる確率は、下がったはずだと考えられるのです。

つまり、式を立てる際に、それが合っているかどうかを判断するための方法として、「問題文にある数値と一致しているかどうか」「自分が書いた式だけではなく、問題文に書いてあること」を振り返るという視点があるかどうかで、結果は大きく変わる可能性があります。

もちろん、数字や文字を「あとで振り返って見たときに、自分も他人も、何が書いてあるか分かるような字体」で書くことも大切です!

見落としが原因のミス

文章問題で、最後の一文に気づくことなく答を出してしまうなど、算数においては問題文の見落とし (読み落とし) や、与えられた図形の中に書かれている数値に気づくことなく問題を考えている結果、答が違っていることなどがあります。

中学以降の数学では、マイナスの符号を見落とすことなど、例はたくさんありますが、例えば文字式を計算する場面において「3x-x+5y=2x+5」などと書いてしまうタイプのミスが、見落としが原因のミスということになります。

このタイプのミスをしてしまうお子さんは、見間違いのミスをしてしまうお子さんとも似たところがあります。

すなわち、問題を解くプロセスにおいて、「問題文や計算式などをその都度振り返る」という行動が足りないと言えます。

「見落とし」というぐらいですので、例えば計算問題を解く場面においては、「計算式のはじめから終わりを見ていない」「途中までしか式を見ないまま答を出してしまう」「式中にある一つの文字、または式中にある一つの項のみを見ている」といったことなどが原因で、ミスが起きています。

図形の問題を解くときに、角度を求める問題などで、「図形の中のそこの角度に気付ければ、すぐに答が出たのに、気付かなかった」というような様子が多いお子さんは、他分野の問題を解くときにも、何かを見落としていることがないかどうかを、確かめる必要があります。

例えば上の図で、「あ~うの角度を求めなさい」という問題が分からないという生徒さんがいたのですが、図の中に何が描いてあるのかを確かめてもらったところ、すぐに答の出し方が分かったということがありました。

話を聴いてみると、「15°と書いてあるのに気づかなかった」ということだったのです。

つまり、逆に言えば、問題の中で図が与えられたときに、どういった条件が書いてあるのかを、全て見て確かめるということをすれば、どう解けば良いのかを思いつくことはできたはずなのです。

もちろん、図形の角度に関する類題を解いた経験が、多くはないことも関係している場合がありますが、「そんなこと気が付かなかった」といった声が多いお子さんは、「見落とし」が原因でミスをしている可能性が高いです。

こういったタイプのミスがあるお子さんは、計算問題を解く際には、式を計算したあとで、「式を声に出して読み上げてもらうこと」などが、ミスを防ぐことにつながります。

図形の問題であれば、図中に書いてある数値に〇をつけることなどが、見落としを防ぐきっかけとなります。

あるいはミスをしたとしても、自分で何がいけなかったのかに、気づくことができるきっかけが生まれます。

計算問題のみならず文章問題などでも、黙読のみでは問題文の見落としがある可能性もあるので、問題文を音読することが、問題文中の条件を見落とすことがないようにするための、一つの策であると言えます。

書き忘れが原因のミス

先に書いた「3x-x+5y=2x+5」としてしまうようなミスは実は、書き忘れのミスに含まれることもあります。

大きな違いは、書き間違いのミスと同様に、「見ていたのにもかかわらず、頭では分かっていたのに、手の動きがやろうとしていたこととは、違うことをしてしまう」ことに由来するミスであると考えられます。

お子さんがもし、上に書いた「3x-x+5y=2x+5」としてしまうようなミスをしているのであれば、お子さん本人に、どうすればミスがなくなるかを聞いてみることが、ミスをなくすことへの第一歩です。

「5yのyを見ていなかった」ということであれば、「左の式全体を2回以上見返すこと」などがお子さんの見直しポイントになります (この場合は見落としのミスです) 。

「yを書いたつもりなのに、書いていなかった」ということであれば、「自分が書いた右の式が、左の式と一致しているかどうかを振り返ること」などが、お子さんの見直しポイントになります (この場合は書き忘れのミスです) 。

また、書き忘れが原因でミスをしている例としては、小学生だと特に「単位の書き忘れ」があります。

解答用紙に、速さの問題で「分速50m」と書くところを、「50」しか書いていないといったタイプのミスが、書き忘れのミスのカテゴリーに含まれます。

テストの種類によっては、解答用紙に「分速   m」とあらかじめ書いてあることなどもあり、そういった形式のテストを受けた経験から、お子さんは「数だけ書くものだと思っていた」ということもあるかもしれません。

したがって、「どんなことまで書いて正解になるのか」を把握しておこことも、書き忘れをなくすための策であると言えます。

まとめ (これらのミスをなくすワンポイントアドバイス)

この記事では、ケアレスミスと言われるものの正体について、お伝えしてきました。

この他にも、問題を解いていくプロセスにおいて、「かけ算することが分かっていたのに、なぜか割り算をするものだと勘違いしていた」などの証言が、実際にお子さんと関わっている中であるように、「勘違いや思い込み」によって、答が間違っているということもあります。

次の記事では、そもそも「ミス」ではなく、「勘違いや思い込み」それ自体を、お子さんは正しいものだと認識してしているまま、問題を解いてしまっている場面があるという実例についてお伝えし、その原因と対策について書いていきます。

最後に、上に書いてきた4つのミスを防ぐための対策についてまとめます。

自分が書いたことをもう一度見る

見間違い、書き間違いによるミスをなくすためにも、自分が書き出したことが正しいかどうかを、振り返る場面が大事です。

特に、式を書くとき「=」の記号で式を結ぶ際には、「左に書いてある式と右に書いてある式は同じ意味をもつかどうか」を確かめるという視点が必要です。

線を引きながら問題文を読む

問題文の見落としによるミスをなくすために、例えば問題文の下に、うすく線を引きながら問題文を読んでいくなど、今自分がどこを見ているのかが分かるようにすることが大事です。

問題文に沿って、鉛筆をなぞるなどして、ここでもただなぞるだけではなく、「心の中の声を出して読む」ということで、見落としを防ぐきっかけとなります。

声に出して問題文を読む

問題文を声にだして読むことも、日々の学習においておすすめ致します。

私も指導の中で、すぐに「分からない」と言ってくるお子さんがいましたが、「問題文を声に出して読んでみて」と指示して、実際に読んでもらったところ、すぐにお子さんが「分かった」と言ってくれたことが何度もあります。

「声に出して読まなかったら、問題文に~が書いてあったことに気づかなかった」と言われたくらいですので、それだけ、黙読のみだと、問題文の読み落とし (つまり見落とし) がありますので、お心あたりある方は、実践していただければと思います。

問題文を振り返る

自分が書いたことしか振り返れていないと、そもそも問題文に書いてあった条件を、正しく把握できた上で問題を解けていないということに、気付けないときがあります。

この記事では、自分が書いたことを見間違って、答を間違ってしまったケースを紹介しましたが、実際にそうしたミスをしたお子さんにお話を聴くと、見直しをするときに、問題文を振り返るところまではしていなかったとのことです。

見直しをするとはどういうことなのかを、また別の記事でも書きますが、必ず問題文に書いてあったことを振り返って、自分の立てた式や描いた図が正しいかどうかを、確かめていくことが大事です。

図中に条件を書き入れる

図形の問題を解く際に、与えられた図の中に、角度や長さを書き入れるクセがないお子さんは、今からすぐにそのクセをつけていきたいところです。

問題文を声に出して読んだら、問題の解き方がすぐに分かったのと同様に、図の中にその都度答を出すためのヒントになるものを書き入れることで、どう解けば良いのかが分かってくることも多いです。

何を書くことまでが正解かを思い出す

単位の書き忘れを代表的な例として、何を書くことまでが正解なのかを思い出すことも大事です。

「それを書くことを知ってはいたけれど、書き忘れてしまった」ということであれば、それは立派な「書き忘れによるミス」になります。

問題演習を通して、「何まで書くことを求められているのか」を学ぶ姿勢が大事です。

この記事でお伝えしてきたことを、動画でも解説しておりますので、ぜひご覧下さい。

https://youtu.be/jZLtJmGVoik

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