こんにちは。算数・数学専門プロ家庭教師の鈴木です。
お子さんの様子を見て、計算ミスやケアレスミスが多くて悩んでいるという方のために、本気で、「私からは現段階で、これ以上お伝えすることがない!」と思えるまで、ミスの原因やミスのなくし方について、お話をしていきます。
保護者さん、またはお子さんと学習相談をしていて、必ずといって良いほど話題に上がるのが、計算ミスやケアレスミスを防ぐためにはどうするのかということです。
「子どもが計算ミスをよくします。言っても治りません・・・。」
「ケアレスミスがよくあるのですが、防ぐためにはどうすれば良いですか?」
といったご相談をいただくことが、とても多いです。
私は算数や数学の指導していて、お子さんがなにかミスをしたときには必ず、どこでどういったミスをしたのかを探す場面があります。
その場面において、問題を解くプロセスの中で「どんな間違いがあったのか」を私がお子さんに聞くと、決まって
「計算ミスです!」
「凡ミスです!」
などと言われることがあります。
しかし、ノートをよく見てみると、計算を間違えたというよりは、2と書くところを3と書いてしまっていた ということが原因で、結果として答が違っていたなど、単に計算ミスという言葉のみでは、済まされない場面があることも事実です。
そもそも「ミス」という言葉の意味を考えてみたいのですが、例えば、問題を解くプロセスにおいて、見直しの仕方を知っていたのに、解き急いでいた結果、それを実行できていなかったことが原因で答が違っていたとしたら、それは確かに「ミス」と言えるかもしれません。
しかし、問題を解くプロセスにおいて、お子さんが見直しの仕方を知らずに、間違った知識を使い、なおかつ「自分は正しい」と思い込んで問題を解き進めていった結果、答が違っていたとしたら、それは本当に「ミス」と言えるのかという問題が出てきます。
「具体的に何が原因でミスが起きているのか」、「防ぐ方法は何か」について考えたとき、上に書いたように、「確かにそれはミスだね・・・。」と言えるものと、そうでないものがあることに、私も長年の指導経験を通して気づきました。
まず簡単に、大まかに結論を言うと、計算ミスやケアレスミスなどというものは存在せず、「書き間違い」や「見間違い・見落とし」などが原因で、ミスが起きています。
そして、「ミス」などではなく、そもそも「間違ったこと」を「正しいこと」と思い込んでいることや、見直しの仕方を知らないことが原因で、答が違っていることがよくあります。
ここからは、算数が例の中心ですが、「ミスが起きる原因」「ミスの防ぎ方」「見直しのやり方」について、余すことなくお話していきます。
ここに書いてあることは、ほぼそのまま中学以降の数学にもあてはまるので、「うちの子もこんなミスをしている」と思った部分があれば、改善のための参考にして下さい。
「計算ミス」と言って良いのはどんな場合か?
そもそも「計算ミスとは何か?」を考えたときに、「計算ミス」という言葉の裏には、「公式や計算の仕方は知っているにもかかわらず、四則計算を間違えること」という意味があります。
このことから、計算ミスと言って良いのは、「四則計算」を行っているときにしたミスのみと言えます。
中学以降の数学では、例えば「符号を書き間違えること」や、「符号を見落とすこと」が原因で計算した答が違っているという結果論もあります。
ところが、中学以降は「数の四則計算」のみをする場面はほとんどないため (1学期の正負の数の計算ぐらいしかないため) お子さんがミスをしたとき、計算ミスが原因といって良い場面はほぼ皆無です。
くわしくは、以下の記事で、計算ミスの正体について解説しております。
https://sugaku1bann.com/2021/10/25/keisannmisunogenninntotaisaku/
他にもたくさんミスの例はありますが、「ミス」と言えることもあれば、「知識不足」「勘違い」と言った方が正しい場合もあるのです。
実をいうと、「子どもがミスをしている」というのは「大人から見るとミスしているように見える」という場合を指していることも多いのです。
次の節では、そのことについて述べていきます。
親御さんから見ると「ミス」 お子さんは「正解したつもり」
ここからは、「そもそもミスとは言えない例もある」という実例について書いていきます。
例えば「3けた÷1けたの割り算」をすると「187÷6=29あまり13」といった答を出してしまうお子さんがいました。
このような間違いをしてしまうタイプのお子さんは、あとで自分が出した答を見たときに、「18÷6の部分は、3で良い」ということに気づけるのであれば、この間違いはお子さんの「ミス」であるととらえることができます。
しかし、上の計算例に対して、お子さんにとって「何がいけないのか分からない」ということであれば、それはお子さんの中で、「正解を出したつもり」になってしまっています。
このときに、「大人から見るとミスしているように見えるけれど、子どもは正しい答を出したつもり」という構図が生まれている可能性があります。
上に書いたような間違いの例は、正確には「計算ミス」の範疇には入らないことがあります。
以下の記事で、なぜこのようなことが起きる可能性があるのか、このようなことにならないための対策はないかについて解説しております。
https://sugaku1bann.com/2021/10/26/misudewanakuseikaisitatumori/
よくあるミスはこの4種類
ここまで「計算ミスの正体」「ミスとは言えない実例」についてお伝えしてきました。
計算ミスの原因を考察するときにもお伝えしてきましたが、そもそも「計算ミス」の原因の多くは「書いたことが違う」「見ているところが違う」ことに由来します。
このことから、小学生・中学生のお子さんにあてはまるのは、計算ミスだけではありません。
具体的には「書き間違い」「見間違い」「書き忘れ」「見落とし」によって、正解として出したはずの答が間違っていることが多いです。
以下の記事で、これらのミスが起きる原因とその対策について解説しておりますので、お心あたりある方は、ぜひご一読下さい。
https://sugaku1bann.com/2021/10/28/kearesumisunoshoutai/
「ミス」ではなく「勘違いや思い込み・知識不足」
前節では、ミスのタイプやその原因について書いてきましたが、ミスとは「頭の中では正しく考えることもできているのに、書くことや見るポイントを間違えた結果、正解を出せなかったこと」です。
ここからは、そもそも「自分では今まで正しいと思ってきたことが、実は間違った形で認識していた」ということが、浮き彫りになる例について書いていきます。
いわゆる「大人から見るとケアレスミスをしているように見えるけれど、子どもは正しいことをしているつもり」になっていることが、明らかになるような実例です。
中学受験算数や中学以降の数学では、お子さんが、以下に書くような実例が原因で問題を正解できていないことが、割合として多くなってきます。
・問題文の読み方を知らない・または勘違いしている
・計算のルールを知らない
・「平行」や「垂直」だと思い込んでいる
・図形の種類を知らない・または勘違いしている
・図形の「見分け方」を知らない
・図形の特徴を勘違いしている
・立体の捉え方や体積の求め方を勘違いしている
・数学用語を正しく覚えていない
・数学記号の意味を覚えていない
・何をもって「正解」かを知らない
もしこれらのことが、お子さんに当てはまるのであれば、お子さんは「ミス」をしているのではなく、「勘違いや思い込み」によって「正解を出せたつもり」になってしまっている可能性があります。
こちらの記事で更にくわしく、勘違いなどが起きる原因についてまとめてありますので、ぜひご参考にして下さい。
https://sugaku1bann.com/2021/10/31/misudewanakutisikibusokukanntigai/
見直しの目的とそのタイミング
さてこれまで、「計算ミス」や「ミスの種類」とその原因、「ミスとは言えない実例」をお伝えしてきました。
思い込みや勘違いが原因で正解できていないのであれば、「正しい知識を身に付けること」をしなくてはなりません。
その場合は、またあとでも述べるように、「教科書の基本例題を解くこと」「例題を解くことで考え方を学ぶこと」などが、正しい知識を得るためには必要です。
ここでいう正しい知識とは、これまで述べてきた「問題文の読み方や計算のルール、記号の意味とその使い方、何をもって正解と言えるのかなどを理解していること」を指すとします。
以下の記事では、そういった正しい知識を得ているという前提で、「本番のテストにおいてミスを防ぐためにはどうすれば良いのか?」という考え方を軸に、見直しの目的とタイミングについてまとめております。
https://sugaku1bann.com/2021/11/10/minaosinotaiminngu/
見直しのタイミングとしては、どんな問題を解く際にも、以下に挙げるポイントが共通しています。
・問題文を振り返るとき
・問題文の条件を図として描き表すとき
・立式するとき
・計算の途中① 「式変形をするとき」
・計算の途中② 「方程式を解くとき」
・「自分は何を求めたのか」を振り返るとき
分野ごとに異なる見直しのタイミングとしては、以下のようなものがあります。
・数、ものの個数を数え上げるとき (数の性質に関する問題)
・底辺と高さを設定するとき (三角形の面積などを求める問題)
・どこの面を下に置くかを決めるとき (立体図形の体積を求める問題)
・展開図ともとの立体を比較するとき (立体図形の表面積を求める問題)
・場合分けをするとき (場合の数に関する問題)
・単位を換えるとき (速さの問題など)
・グラフを見て問題を解くとき (水量や速さの問題)
ミスをなくすためにすること・ 具体的な見直しの仕方
ここまで、見直しのタイミングについて述べてきました。
私がこれまで算数・数学の指導を行ってきて分かったことは、お子さん自身は見直しをする気持ちがあるものの「問題を解くプロセスにおけるどの場面で、何を確かめれば良いのかが分からない」ということだったのです。
このような理由から、この記事ではまず先に、見直しをするタイミングがどこにあるのかをお伝えして、そのタイミングにおいて何をするのかを書くことにしました。
前節でお伝えしてきた「タイミング」において、ミスをなくすために、具体的に「どう行動すれば良いのか」について、以下の記事にまとめておりますので、ミスが多いと感じる方は、ぜひご参考にしていただけると幸いです。
記事のURLは、この節の一番下にあります。
この記事にまとめてあることを、ここでも少しお伝えしておくと、まず大事なのは、ミスの原因が何かを知るということです。
例えば、問題文や自分が描いた図などを振り返り、「読み間違えていたポイント、描き間違っていたこと」などを見つけていくことが、ミスの原因を知るということになります。
その際、問題文の振り返り方については、「問題文をこのように読むことが正しいかどうか」を、過去に解いた問題の問題文なども思い出しつつ、判断するということが重要です。
もし仮に、間違った図を描いていたのであれば、対策としては「図はノート一面に大きく描き、書き入れた情報 (長さや角度) が正しいかどうかを、問題文とも比較しながら確かめていくこと」が基本的です。
この他にも、以下の記事では「自分が立てた式が正しいかどうかを振り返る」ということや、イコールの記号で結ばれた式が「どういう意味で同じなのか」を把握しておくことなど、数学でも大事なことを書いております。
こちらの記事に、「ミスのなくし方・見直しの仕方」がまとめてありますので、お子さんがどのようなミスをしているのかを探していただき、あてはまるところがございましたら、ご参考にして下さい。
https://sugaku1bann.com/2021/11/20/minaosinosikata/
知識不足や勘違いをなくすためにできること
これまでは、ミスを自分で見つけた上で、何をすればミスを防げるのかといったことについてお話をしてきました。
ここからは、そもそも知識不足をどう補うのか、勘違いしていることにいかにして気づくのかについて、その解決策をお伝えしていきます。
算数・数学が得意だと言っている人であっても、以下に書くことができているかを聞くと、「そこまでやっていない」「当たり前のことだと分かっていても、実行するのは難しい」といった声が上がります。
ですので、日々の学習において、まずは意識的に以下に書いたことができると、解ける問題も増え、成績アップにつながるはずです。
基本例題を解く
前に習った単元と結びつける
類題を「基本例題の考え方のマネ」をして解く
問題を解くことで「考え方」を身に付ける
解説を読むだけで済ませない
解き方の共通性を見つける
以下の記事で「基礎・基本の身に付け方」について、詳しく解説しておりますので、ぜひご一読下さい。
https://sugaku1bann.com/2021/12/14/kihonnnominitukekata/
合っているかそうでないかの判断が大事だけれども・・・
算数・数学の問題を解けるようにしていくためには、問題文の読み方を学ぶことや、受け入れることができた「ものの見方・考え方」をアウトプットする場面が必須であることなどを、この記事ではお伝えしてきました。
特に、はじめて見る例題をできるようにするためのプロセスにおいては、その例題の解説に対して「この問題を解くにあたり、こんな考え方を使うことは正しいかどうか」といったことに疑問を持ち、「なぜそれが正しいのか」を判断できると、問題に対するものの見方や考え方を受け入れられるきっかけが生まれます。
それらを受け入れた後に、例題の類題や他の問題を解く際に、今度は「この問題を解くにあたり、こうした考え方を使うことは、正しいのかどうか」を判断できると、解ける問題の種類も多くなります。
ところが、さまざまな生徒さんと関わってきて分かったことは、「正しいかどうかをどう判断すれば良いのかが分からない」と思っている生徒さんが、多くいることです。
問題を解くプロセスにおいて、私から生徒さんに、「この計算結果は合ってる?」「その考え方は正しい?」などと聴いてみると、「正しいかどうか分からない!」「合ってるかどうかって、どう確かめるの?」という声が返ってくることも多いのです。
「自分が考えていることが正しいかどうか」「教科書や問題集に載っている解説などの説明書きが正しいかどうか」を判断できるようにすることが大事ですが、それができていない生徒さんも多いです。
以下の記事では、「正しいかそうでないかを判断できるためにはどうすれば良いのか」について解説しております。
https://sugaku1bann.com/2022/01/02/seigohanndannwominitukeru/
まとめ
いかがだったでしょうか。実際に私が生徒さんを見ている中で、生徒さんがミスをしていると言えることもあれば、そうではなくて勘違いや思い込みがあるまま問題を解いた結果、答が違っているということがあります。
また、答が合っていたとしても、問題を解くプロセスにおいて、本来の見方・捉え方とは全く違ったものの見方をしているにもかかわらず、たまたま答が合っているだけになってしまっていることもあります。
そういったことは、生徒さんに問題をどう解いたのか、与えられた図形をどう見ているのかを聴いてみることで、明らかになります。
あるいは、問題文に書いてあることを、図として描いてもらうことでも分かります。
私が生徒さんとのコーチングを通して見えてきたのは、「計算ミスやケアレスミスというものは存在しない」ということです。
生徒さんの答が違っていたとき、どうすれば正解できたのかを共に考える場面がありますが、その場面において、生徒さんはよく「計算ミスがなければ良い」ということを口にします。
ところが、この記事でもお伝えしてきた通り、「見間違いや書き間違い」が問題を解くプロセスで起きていた結果、計算して出てきた答が違っているということや、図から式を立てる場面で、本来書きたかったこととは別のことを書いているということがあります。
もちろん、本当に見間違いなどがないかどうかを、確かめ忘れたという意味で「ケアレス」と言えることもあるかもしれません。
しかし、「確かめ方」をそもそも知らなかったとしたら、それは「ケアレス」などではなく、正誤判断の方法を身に付けられていないという意味で、知識不足ということになります。
算数・数学ではとにかく、問題文を読み、そこから図を描く場面や、式を立ててその式を変形していく場面など、「本当に自分がしていることは、合っているのかどうか」を確かめる場面がいくつもあります。
その場面において、合っているかどうかを、過去の分野単元とも関連させて判断することが、「自分で考えること」であり、合っていると判断できる実例を思い出すことは、結果として「自分にはこうしたことが理解できている」という意識を受け入れることにつながります。
算数・数学においてはどうしても、「できないこと」ではなくて、「今自分ができていること」に目を向けて、それらにどんな視点を付け加えていくと、何ができるようになるのかを見つけ出していくことが大切になってきます。
ご家庭で、お子さんの算数の勉強を見ていただいている親御さんは、お子さんにとっての「今できていること」を見つけられると、算数の成績を上げるきっかけを、見出せるようになってくるはずです。
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