小学生の算数が苦手な原因は?勉強しても伸びない理由を解説

「計算練習は毎日しているのに、テストになるとできない」

「一緒に勉強して、そのときは分かったと言っていたのに、次の日にはまた同じ問題を間違えている」

「他の教科はそれほど困っていないのに、算数だけ成績が伸びない」

小学生のお子さんを見ていて、このように感じることがあります。

小学生が算数を苦手になる原因は、単純な勉強不足だけとは限りません。

計算の基礎が十分に身についていない場合もあれば、問題の意味を理解できていない場合、以前に習った内容につまずきが残っている場合もあります。

また、解き方を教えてもらえばできるものの、自分一人では「何を使って解けばよいのか」が分からないケースもあります。

そのため、「算数が苦手だから、もっと問題を解かせよう」と勉強量を増やしても、それだけでは思うように伸びないことがあります。

大切なのは、できなかった問題を見つけたときに、

・どこまで理解できているのか

・どこから分からなくなったのか

・なぜその式を作ったのか

・本人はその考え方を正しいと思っているのか

・単純な計算ミスや見間違いなのか

といったことを一つずつ確認することです。

「何ができないか」だけではなく、「なぜできないのか」を確認してから、その子に必要な学習を考えることが重要です。

この記事では、これまで100人以上の算数が苦手な小学生を指導してきた経験も踏まえながら、小学生が算数を苦手とする原因と、勉強しているのになかなか伸びない理由について解説します。

実際に子どもの問題の解き方を見ていると、「割合が苦手」「図形が苦手」と単元名だけでは説明できないつまずきが見つかることがあります。

そのため、私は「何を間違えたか」だけではなく、「その子がどのように考えてその答えを出したのか」「別の問題でも共通する考え方に自分で気づけているか」を見ることを大切にしています。

家庭でお子さんの勉強を見るときに、どこを確認すればよいのかも具体的に紹介していきます。

小学生が算数を苦手になる原因は?

小学生が算数を苦手になる主な原因は、「勉強していないこと」よりも、学習のどこかに理解できていない部分が残ったまま次へ進んでいることにあります。

特に算数は、以前に学んだ内容を使って新しい内容を学ぶことが多いため、一つの小さなつまずきが、その後の学習にも影響することがあります。

また、「計算はできるから大丈夫」「公式を覚えているから理解している」とは限りません。

子どもがどのように考えて答えを出したのかまで確認すると、これまで見えていなかった原因が分かることがあります。

前に習った内容を理解しないまま進んでいる

算数は前に学習した内容を使って次の単元を学ぶため、以前の単元に理解不足があると、その後の問題も分からなくなることがあります。

たとえば、割合の問題が苦手だからといって、割合だけを何度も練習すればよいとは限りません。

割合を理解するためには、

・かけ算・わり算

・小数

・分数

・「何倍」という考え方

・もとにする量と比べる量の関係

など、それ以前に学んだ内容も必要になります。

そのどこかに理解できていない部分があれば、割合の公式を覚えて問題を繰り返しても、少し問題の形が変わっただけで分からなくなることがあります。

特に高学年になると、一つの問題を解くために複数の知識を使う場面が増えてきます。

そのため、現在学習している単元だけを見て、

「割合が苦手だから割合をもっと練習しよう」

と考えるのではなく、

「この問題を解くために必要な前の学習内容まで理解できているか」

を確認することが大切です。

現在の学年より前の内容に戻ることも、決して珍しいことではありません。

計算はできても「なぜその式になるか」を理解できていない

計算が正確にできても、「なぜこの式を使うのか」を説明できなければ、算数そのものを十分に理解できていない場合があります。

たとえば、「速さ=道のり÷時間」という公式を覚えていて、数字を当てはめることができたとします。

それだけを見ると、速さを理解できているように見えます。

ところが、文章問題になったときに、

「これは速さを求める問題なのか」
「道のりを求める問題なのか」
「どの数字を使えばよいのか」

が分からなくなる子もいます。

この場合、必要なのは公式をもう一度覚えることだけではありません。

問題を読んで数量の関係を考え、自分で必要な計算を選ぶ練習が必要です。

算数では「計算できること」と「問題を理解して式を作れること」を分けて見る必要があります。

家庭で確認するときも、「この公式を覚えている?」だけではなく、「どうしてこの式にしたの?」と聞いてみると、その子がどこまで理解しているのかが見えやすくなります。

文章を読んでも数量の関係が分からない

算数の文章問題が苦手な子の中には、文章そのものが読めないのではなく、文章に書かれた数量の関係を整理できていない子がいます。

たとえば、「2mの重さが7.6kgの鉄の棒があります。この棒の1.2mの重さは何kgですか」という問題を考えてみます。

文章を声に出して読むことができ、「2m」「7.6kg」「1.2m」という数字も見つけられる。

それでも、

「7.6÷2をするのか」
「7.6×1.2をするのか」
「2÷7.6をするのか」

が分からないことがあります。

この場合、文章を読む力だけの問題とは限りません。

「2mで7.6kgなら、1mでは何kgなのか」
「求めたい1.2mは1mの何倍なのか」

という数量の関係を順番に考える力が必要になります。

文章問題ができないときに、「問題をもっとよく読みなさい」と言うだけでは改善しにくいのは、このためです。

何を求める問題なのか、そのためには何を先に求めればよいのかを一つずつ確認する必要があります。

間違えた問題を「ミス」で終わらせている

同じ不正解でも、「考え方そのものを間違えている場合」と「正しく考えていたのに途中で間違えた場合」では、必要な対策がまったく違います。

たとえば、計算問題で答えを間違えたとします。

一見すると「計算ミス」に見えます。

しかし実際には、

・数字を見間違えた

・答えを書き写すときに間違えた

・繰り上がりを忘れた

・計算方法そのものを誤解している

など、さまざまな原因が考えられます。

ここで特に注意したいのが、本人が間違った考え方を正しいと思っているケースです。

この場合、「次は気をつけよう」と言っても改善しません。

本人にとっては正しい方法で解いているため、同じ問題に出会えば同じように考える可能性があるからです。

反対に、「ここ、もう一度見てみて」と言っただけですぐ間違いに気づけるのであれば、考え方自体は理解できている可能性があります。

間違いをすべて「ケアレスミス」とまとめず、その子がなぜその答えを出したのかまで確認することが、算数の苦手な原因を見つけるうえで重要です。

難しすぎる問題ばかり練習している

今の理解度より難しい問題ばかり解いていると、勉強時間を増やしても、自分で考えて解く力につながらないことがあります。

特に塾や学校の宿題では、現在の子どもの理解度に関係なく、決められた範囲の問題に取り組まなければならないことがあります。

すると、

問題を読む

分からない

解説を見る

それでも分からないので親に聞く

教えてもらいながら答えを書く

という勉強になりやすくなります。

これでは宿題そのものは終わっていても、「自分で考え方を思い出し、問題に合った方法を選んで、最後まで解く」という経験が不足します。

算数が苦手な子ほど、難しい問題をたくさん解くことより、「これは自分一人で解ける」というレベルの問題を確実に正解できるようにすることが大切です。

そして、そのレベルが安定してから少しずつ問題の難易度を上げていきます。

勉強しているのに算数が伸びないときは、勉強時間だけでなく、「今取り組んでいる問題の難易度がその子に合っているか」まで確認する必要があります。

勉強しているのに算数が伸びないのはなぜ?

勉強しているのに算数が伸びない場合は、「勉強時間が足りない」と考える前に、その時間の中で子どもが自分で考えて問題を解いているかを確認する必要があります。

・毎日宿題をしている

・塾にも通っている

・分からない問題は親や先生に質問している。

これだけを見ると、十分に勉強しているように思えます。

しかし、算数では「勉強した時間」と「自分で解けるようになった問題の数」が必ずしも一致するとは限りません。

特に算数が苦手な子の場合、

・解説を読んで理解する

・先生に解き方を教えてもらう

・親からヒントをもらう

・解答を見ながら解き直す

といった学習に多くの時間を使っている一方で、何も見ず、誰にも教えてもらわず、自分で考えて正解する経験が不足していることがあります。

そこで一度、「これだけ勉強しているのになぜ伸びないのだろう」と考えるだけでなく、「そもそも、今やっていることは算数ができるようになるための勉強になっているだろうか?」というところから確認してみる必要があります。

そもそも「勉強した」ことになっていない?

机に向かって問題集を進めたり、宿題を終わらせたりするだけでは、算数ができるようになるという意味での「勉強」になっていない場合があります。

これは、子どもが勉強していないという意味ではありません。

本人は長い時間机に向かっていますし、宿題も終わらせています。塾にも通い、分からない問題の解説も聞いているかもしれません。

それでも成績が伸びないのであれば、勉強時間ではなく「その時間に何をしていたのか」を見る必要があります。

たとえば、1時間算数を勉強したとしても、

・ほとんどの問題で解説を見ていた

・分からなくなるたびに親に聞いていた

・先生に教えてもらった解き方をそのまま写していた

・答え合わせをして、正解を確認しただけで終わった

・間違えた問題の解説を読んで「分かった」として終わった

という状態であれば、1時間勉強したこと自体は事実でも、「自分で問題を解けるようになるための練習」がどれだけできたかは別に考える必要があります。

算数のテストでは、隣に先生や親はいません。

解説を見ることもできません。

問題を読んだら、「これは何を求める問題だろう」「どの知識を使えばいいだろう」「この式で本当に合っているだろうか」と自分で考え、最後まで答えを出さなければなりません。

つまり、最終的に必要になるのは、「教えてもらえば分かる力」ではなく、「何も見ない状態から自分で考えて正解までたどり着く力」です。

家庭学習でも、この状態に近い練習がどれだけできているかを見る必要があります。

たとえば、次のように確認してみると分かりやすくなります。

【「勉強した」を判断するときに確認したいこと】

・今日習った問題を、解説を閉じてもう一度解けるか

・翌日に同じ問題を出されても解けるか

・数字や聞かれ方が少し変わっても考えられるか

・「なぜこの式にしたの?」と聞かれたときに説明できるか

・以前に習った問題と混ぜて出されても、使う解き方を自分で選べるか

これらができなければ、「勉強時間が足りなかった」とは限りません。

勉強した内容が、まだ「自分一人で使える知識」になっていない可能性があります。

算数が苦手な子に必要なのは、単純に机に向かう時間を増やすことではありません。

「教えてもらう時間」だけで終わらせず、「教えてもらう → 自分で解く → 何も見ずにもう一度解く → 別の問題でも使えるか確かめる」というところまで学習に含めることが大切です。

「毎日こんなに勉強しているのに伸びない」と感じたときほど、勉強量を増やす前に、何をもって「勉強できた」とするのかを見直すことが、原因を見つける第一歩になります。

解説を聞いて「分かった」で終わっている

解説を聞いて理解できることと、後から一人で同じ問題を解けることは別です。

先生から説明を受けた直後であれば、

「分かった」
「なるほど」
「そうやって解くんだ」

と納得できることがあります。

しかし、翌日になって同じ問題を出すと、最初の式から作れないことがあります。

これは、説明を理解していなかったとは限りません。

説明を聞いているときには理解できていても、自分で必要な知識を思い出し、その問題に合った解き方を選ぶところまで身についていないことがあるからです。

たとえば、割合の問題を先生と一緒に解いたとします。

先生から、「ここがもとにする量だから、この式になるよ」と説明されれば、その場では理解できる子も多いでしょう。

ところが、一人で別の割合の問題を解くと、「何を何で割るんだっけ?」となってしまうような場合には、もう一度同じ説明を聞くだけでは十分とはいえません。

必要なのは、説明を聞いた後に解答やノートを閉じて、「では、今度は一人で解いてみよう」と確認することです。

そのときに初めて、

・最初に何を考えればよいか

・どの数字を使えばよいか

・どの式を選べばよいか

・最後まで自分で計算できるか

が分かります。

算数では「説明が分かったか」だけでなく、「説明がなくても自分で正解できるか」まで確認することが大切です。

宿題が「自分で解く練習」になっていない

宿題を毎日きちんと終わらせていても、その多くを親や先生に教えてもらいながら解いている場合、自分で考えて解く練習が不足することがあります。

算数が苦手な子の場合、宿題の難易度そのものが現在の理解度より高くなっていることがあります。

すると家庭では、

「ここはどうやって解くの?」と子どもが聞く。

親が解き方を説明する。

一緒に式を作る。

子どもが計算して答えを書く。

次の問題でも分からなくなり、また親が説明する。

という状態になりやすくなります。

この方法でも宿題は終わりますし、その場では問題を理解できることもあります。

しかし、毎回誰かが最初の考え方を与えてしまうと、子ども自身が、「この問題は何を使えば解けるだろう?」と考える時間が少なくなります。

ここで確認したいのは、宿題を何ページ終えたかだけではありません。

【宿題で確認したいこと】

・最初から最後まで一人で解けた問題はいくつあったか

・ヒントが必要だった問題はいくつあったか

・解説を見なければできなかった問題はどれか

・教えてもらった問題を後でもう一度一人で解けたか

このように分けて見ると、同じ「宿題を全部終えた」という状態でも、学習内容には大きな違いがあることが分かります。

宿題の目的は、決められたページを終わらせることだけではなく、習ったことを自分で使えるようにすることです。

親が毎日のように横について教えなければ宿題が進まない場合は、本人の努力だけの問題として考えず、宿題の難易度が現在の理解度に合っているかも確認した方がよいでしょう。

解き方を覚えることが勉強の中心になっている

解き方を覚えるだけの勉強では、問題の形が少し変わったときに対応できないことがあります。

算数の学習では、

「この問題はこの公式」
「この形が出たらこの解き方」

と覚えることで解ける問題もあります。

もちろん、基本的な解き方を覚えること自体は必要です。

問題は、覚えた解き方の中から何を使えばよいのかを、自分で考える練習が不足している場合です。

たとえば、授業で「つるかめ算」を習った直後に、テキストの「つるかめ算」というページを解くとします。

子どもは、そこに並んでいる問題がすべてつるかめ算だと分かっています。

そのため、「これはつるかめ算だから、習った方法を使おう」と考えれば解けます。

ところがテストでは、「これはつるかめ算です」とは書かれていません。

割合、速さ、比、つるかめ算など、さまざまな問題が混ざった状態から、「この問題では何を使うのか」を自分で考えなければなりません。

授業や家庭学習ではできるのに、テストになると急に点数が取れなくなる場合、この部分につまずいていることがあります。

そのため、一つの単元を学習した後には、その単元だけを繰り返すだけでなく、以前に学習した問題も混ぜて解いてみることが有効です。

「解き方を知っている」状態から、「問題を見て必要な解き方を自分で選べる」状態にすることが、算数の成績につなげるためには必要です。

できない問題ばかり増やしている

算数が苦手な子に必要なのは、難しい問題を次々と追加することではなく、自分で正解できる問題を着実に増やしていくことです。

成績が伸びないと、

「もっと問題を解かせた方がいいのでは」
「別のドリルもやらせた方がいいのでは」
「塾の授業を増やした方がいいのでは」

と考えることがあります。

しかし、現在使っている教材で分からない問題が多い状態のまま、新しい教材を追加しても、分からない問題がさらに増える可能性があります。

たとえば、10問のうち8問を教えてもらわなければ解けない教材を何度も続けるより、まずは基本的な問題に戻り、

「10問のうち8~9問は自分で考えて正解できる」

という状態を作る方が適しているケースがあります。

そのうえで、少しずつ難しい問題へ進みます。

ここで重要なのは、簡単な問題だけを続ければよいということではありません。

現在の理解度に合った問題から始めて、「自分で解ける範囲」を少しずつ広げることが目的です。

そのため、勉強しているのに成績が伸びないときには、勉強時間や教材の冊数だけを見るのではなく、「この子は、今使っている教材の問題をどのくらい一人で解けているだろうか?」と考えてみてください。

教えてもらえば解ける問題がたくさんあることよりも、何も見ずに自分で正解できる問題が増えているかどうか。

そこを確認すると、勉強しているのに算数が伸びない原因が見つかることがあります。

算数が苦手な原因を「間違い方」から見つける方法はある?

算数が苦手な原因を見つけるには、正解・不正解だけを見るのではなく、「なぜその式を作ったのか」「なぜその答えになったのか」を確認することが大切です。

同じ不正解でも、その原因は一人ひとり違います。

たとえば、計算問題を間違えた子に対して、「また計算ミスをしたね」と判断したとします。

しかし実際には、数字を書き間違えただけかもしれませんし、計算方法そのものを誤解している可能性もあります。

文章問題でも同じです。

かけ算をするべき問題でわり算をしていたからといって、単純に「かけ算とわり算の使い分けができない」とは限りません。

問題文に書かれている数量の関係を理解できていない場合もあれば、以前に習った「1あたりの量」の考え方につまずきが残っている場合もあります。

間違えた問題そのものよりも、「その答えに至った考え方」を見ることで、初めて必要な対策が見えてきます。

まず「どう考えてこの式を作ったの?」と聞く

子どもが問題を間違えたときは、すぐに正しい解き方を教えるのではなく、「どう考えてこの式を作ったの?」と聞いてみると、理解できていない部分を見つけやすくなります。

たとえば、半径6cm、中心角60度のおうぎ形のまわりの長さを求める問題があったとします。

おうぎ形のまわりの長さは、

・2本の半径

・弧の長さ

を合わせて求めます。

ところが、2本の半径の部分を「6×6」と計算した子がいたとします。

答えだけを見ると、「足し算と掛け算を間違えた」「計算方法を覚えていない」と考えてしまうかもしれません。

しかし、ここですぐに、「6+6でしょ」と教えてしまうと、その子がなぜ6×6としたのかは分からないままです。

そこで、「どうして6×6にしたの?」と聞いてみます。

すると、「おうぎ形のまわりを求めるから、長さを掛けると思った」など、その子なりの考え方が出てくることがあります。

この答えが分かれば、必要なのは単に正しい式を教えることではありません。

「この6cmはどこの長さ?」
「こっちの直線も何cm?」
「この2本を合わせた長さなら、どうすればいい?」

と確認しながら、本人がどこで考え違いをしたのかを整理することができます。

ここで重要なのは、子どもの考え方を聞く目的が、間違いを責めることではないということです。

目的は、「この子は、どこまでは正しく考えられていて、どこから理解がずれたのか」を確認することです。

間違えた直後こそ、その子の考え方が表れやすい場面でもあります。

正しい解き方を先に教えてしまう前に、一度「どう考えたの?」と聞いてみることで、算数が苦手な原因を具体的に探しやすくなります。

「これで合っている?」と聞くと分かる意外なこと

「これで合っていると思う?」と確認すると、本人がその考え方を正しいと思っているのか、それとも自分でも間違いに気づけるのかを見分けやすくなります。

これは、算数の間違いを考えるうえで大きな違いです。

たとえば、「7×8=54」と書いていたとします。

そこで、「これで合っている?」と聞いたとき、「あ、違った。56だ」とすぐに直せるのであれば、九九そのものを理解していないとは限りません。

数字の書き間違い、見間違い、確認不足など、別の原因を考える必要があります。

一方で、「合っているよ」と本人が考えているのであれば、九九の定着状況を確認した方がよいでしょう。

文章問題でも同じです。

本来はわり算を使う問題でかけ算をしていたときに、「この式で合っていると思う?」と聞いてみます。

本人が、「うん、これで合っている」と答えるのであれば、単純なうっかりミスではありません。

本人の中では、その問題に対してかけ算を使うことに理由があるということです。

その理由を聞いていけば、

「文章のどこを見てそう考えたのか」
「どの数量とどの数量を関係づけているのか」
「以前に習った考え方をどのように使っているのか」

を確認できます。

反対に、「あれ? ここはわり算だった」と自分で気づけるのであれば、考え方そのものは理解できている可能性があります。

このように、「正しい答えを知っているか」だけでなく、「自分の答えが正しいかを自分で判断できるか」も確認することが重要です。

間違いは「理解の誤り」と「見間違い・書き間違い」に分けて考える

算数の間違いは、まず「考え方そのものに誤りがあるのか」「考え方は合っているのに途中で間違えたのか」を分けて考えると、必要な対策を決めやすくなります。

たとえば、次の2人が同じ計算問題を間違えたとします。

【Aさん】

計算方法そのものを間違えており、「これで合っている?」と聞いても、自分の計算方法が正しいと思っている。

【Bさん】

正しい計算方法で進めているが、途中で「3」を「8」と書き写してしまい、答えを間違えた。指摘するとすぐに自分で直せる。

結果だけを見れば、どちらも「不正解」です。

しかし、AさんとBさんに同じ対策をしても適切とは限りません。

Aさんの場合は、計算の仕組みや考え方そのものをもう一度理解する学習が必要です。

一方、Bさんの場合は、同じ内容を最初から教え直すよりも、

・途中式を省略しすぎていないか

・数字を読みやすく書いているか

・問題文から数字を正しく写しているか

・答えを出した後に確認しているか

などを見た方がよい場合があります。

この違いを見ずに、すべてを「ミスが多い」という一言でまとめてしまうと、必要のない問題を何度も解かせることにもなります。

反対に、考え方を誤解しているのに、

「次はよく見て」
「落ち着いて計算して」

と伝えるだけでは、同じ間違いを繰り返す可能性があります。

【間違えたときの確認事項】

・どのように考えたのかを聞く

・本人はその答えを正しいと思っているか確認する

・考え方そのものに誤りがあるかを見る

・考え方が正しければ、どこで数字や計算を間違えたかを見る

・原因に合わせて復習内容を決める

「間違えたから、もう一度同じ問題をやる」のではなく、「なぜ間違えたかによって、次に何をするかを変える」ことが重要です。

できなかった単元より「その前の理解」を確認する

同じ単元を何度練習してもできない場合は、現在の単元ではなく、その問題を解くために必要な前の学習内容につまずきがないか確認します。

たとえば、小学5年生で割合ができない子に、割合の問題を繰り返し解かせたとします。

それでもできるようにならない。

このとき、「割合が苦手だから、もっと割合をやらせよう」と考えるだけでは、原因が解消されない場合があります。

実際には、

・小数のかけ算・わり算が不安定

・分数と小数の関係を理解していない

・「何倍」という意味が分かっていない

・1あたりの量を求めるわり算が分かっていない

・問題文から数量の関係を読み取れない

など、割合を学習する前の段階につまずきが残っていることがあるからです。

この場合、現在の学年の教材だけにこだわる必要はありません。

必要であれば、4年生、3年生と前の内容まで戻って確認します。

ただし、「算数が苦手だから3年生の最初から全部やり直す」という意味ではありません。

現在できない問題から逆にたどり、「この問題を解くために必要な知識のうち、どこから一人で使えなくなるのか」を探します。

たとえば割合ができないのであれば、

まず簡単な割合の問題を確認する。

できなければ、何倍かを求める問題を確認する。

それも難しければ、わり算や小数まで戻ってみる。

このように一段ずつ確認していけば、必要以上に広い範囲をやり直さずに済みます。

算数は学年が上がるにつれて、以前に習った知識を組み合わせて解く問題が増えていきます。

そのため、今できない単元だけを見るのではなく、「どこまで戻れば、自分一人で正しく解けるのか」を見つけることが、苦手克服の出発点になります。

そして、その地点が見つかったら、そこから現在の単元まで少しずつ積み上げ直します。

算数が苦手な原因を探すときに見るべきなのは、テストの点数だけではありません。

「どんな間違いをしたか」「なぜそう考えたか」「どこまで戻れば一人で解けるか」を確認することで、その子に必要な学習が具体的に見えてきます。

算数が苦手な小学生には家庭でどう教えればいい?

算数が苦手な子を家庭で教えるときは、正しい解き方を説明することよりも、「どこまで分かっているのか」を確認しながら、子ども自身に考えてもらうことが大切です。

ただし、最初に知っておいてほしいことがあります。

それは、算数が苦手な子を家庭だけで教えることは、実際にはかなり難しいということです。

算数の問題を大人が解けることと、算数が苦手な子に教えられることは同じではありません。

特に、何度説明しても理解できない、以前に習った内容にもつまずきがある、親が横についていないと宿題が進まない、といった場合には、単に解き方を説明するだけでは改善しないことがあります。

算数が苦手な子への指導には、大きく分けると次の3つが必要になります。

【算数が苦手な子を教えるために必要な3つの力】

教務知識:その問題の解き方だけでなく、どの知識が前提になっているのかを理解していること

コーチングの知識と実践:答えをすぐ教えず、質問によって子どもの考えを引き出すこと

その子が本当にできているところを見抜く力:「分かったと言っている」「一度正解した」だけで判断せず、一人でできる地点を正確に確認すること

家庭ですべてを行おうとする必要はありません。

一方で、この考え方の一部を取り入れるだけでも、家庭での算数の見方は変えられます。

正しい解き方をすぐ教えず、まず考え方を聞く

家庭で実践しやすい方法の一つは、子どもが間違えたときに正解をすぐ教えず、「どう考えたの?」と聞くことです。

たとえば、子どもが文章問題で間違った式を書いたとします。

大人が見れば、「ここはかけ算じゃなくて、わり算でしょ」とすぐに分かることがあります。

しかし、そこで正しい式を教えてしまうと、子どもがなぜかけ算を選んだのかは分かりません。

そこで、「どうしてこの式にしたの?」と聞いてみます。

大切なのは、問い詰めるように聞くことではありません。

子どもの説明を途中で訂正せず、まず最後まで聞きます。

すると、「『全部で』と書いてあったから、かけ算だと思った」「大きい数字を小さい数字で割ればいいと思った」「前に似た問題でこの式を使ったから」など、その子なりの理由が出てくることがあります。

ここで初めて、何を教える必要があるのかが分かります。

正しい答えを教える前に、子どもが今どのように考えているのかを知ることが家庭でも実践できるコーチングの第一歩です。

家庭では「教える技術」より「考えてもらう質問」を使う

算数が苦手な子には、答えへ誘導する質問だけでなく、本人の考えを言葉にしてもらう質問が有効です。

たとえば、「ここはわり算じゃない?」と聞けば、子どもは「そうかもしれない」と答えられます。

しかし、これでは子ども自身がわり算を選んだわけではありません。

家庭では、できるだけ、以下のような質問をしてみると良いです。

【家庭で使いやすい質問】

・「この問題では何を求めるの?」

・「この数字は何を表している?」

・「どうしてこの式にしたの?」

・「ここまでで分かることは何?」

・「この図を描いたのはどうして?」

・「これで合っている?」

・「前に解いた問題で似ているものはある?」

ポイントは、親が考えている正解を当てさせるための質問にしないことです。

たとえば本当は「12÷3」を使わせたいのに、「12を3でどうするの?」「かけるの? 割るの?」「3人に分けるんだから?」と質問を重ねれば、最終的には子どもも「割る」と答えられるでしょう。

しかし、それは子どもが自分で考えたというより、大人が正解まで誘導した状態です。

コーチングでは、正解を言わせることだけを目的にせず、「今、何を考えているのか」を本人の言葉で出してもらうことが重要になります。

そして、分からないのであれば、「もう一度問題文を読んでみよう?」と聞いてみます。

これによって、「全部分からない」と思っていた問題の中にも、本人が理解できている部分が見つかることがあります。

分からないときはどこまで戻ればいい?

分からない問題が続くときは、学年で一律に戻るのではなく、その問題に必要な知識のうち「一人でできるところ」まで戻ることが大切です。

たとえば、小学5年生の割合が分からないからといって、小学4年生の教材を最初から全部やり直す必要があるとは限りません。

割合の問題ができないのであれば、

「簡単な割合なら分かる?」

「何倍かを求める問題はできる?」

「小数のわり算はできる?」

「整数のわり算ならできる?」

というように確認していきます。

そして、「ここなら説明されなくても一人でできる」という地点を見つけます。

ここが非常に重要です。

子どもが、

「それ知ってる」
「前に習った」
「分かるよ」

と言っただけでは、「できる」とは判断できません。

実際に問題を出して、何も見ず、ヒントも与えずに解いてもらいます。

そこで正解できるかを確認します。

なぜなら、「習ったことがある」「説明を聞けば分かる」「一人で問題を解ける」は、それぞれ違う状態だからです。

算数が苦手な子への指導では、この「本当に一人でできる地点」を正確に見つけることが、その後の学習内容を決めるうえで重要になります。

実際に4年生の内容まで戻って学習したケース

実際に私が指導した中には、中学受験の算数で偏差値40程度だった子が、4年生の内容まで戻って学習したケースがあります。

このとき、単純に「偏差値が低いから簡単な問題をやり直そう」と考えたわけではありません。

問題の解き方を確認していくと、4年生で学習する分数の足し算・引き算の段階まで戻って確認する必要がありました。

ここで重要だったのは、計算方法だけではありません。

「なぜここでは足し算をするのか」
「なぜこちらでは引き算をするのか」

というところから確認しました。

すると、その後の文章問題でも、文章に書かれている数量の関係から「ここでは何を足すのか」「何を引くのか」を考えられるようになっていきました。

その子は、そこから基礎的な内容を一つずつ積み上げ直し、約4か月で中学受験算数の基礎的な問題を理解できるところまで進みました。

その後、さらに学習を続け、模試では偏差値60まで上がっています。

この経験からも、「6年生だから6年生の問題をする」「受験生だから入試問題を解く」と、現在の学年だけで学習内容を決める必要はないと考えています。

大切なのは、どの学年まで戻ったかではなく、「どこからなら本人が意味を理解して、自分で考えられるのか」を見つけることです。

必要な地点まで戻ることができれば、その後に学習する内容とのつながりも見えやすくなります。

図や絵を使えば算数は理解しやすくなる?

数量の関係を頭の中だけで整理することが難しい場合には、図や絵に表すことで理解しやすくなることがあります。

特に、文章問題、割合、速さ、比、図形などでは、書かれている情報を目で確認できる形にすると、何と何を比べればよいのかが見えやすくなります。

ただし、「図を描けば必ず解ける」というわけではありません。

子ども自身が、

「この線は何を表しているのか」
「この数字はどこに書けばよいのか」
「何と何を比べているのか」

を理解していることが必要です。

そのため、親がきれいな図を完成させて、

「こう描けば分かるでしょ」

と見せるだけではなく、

「この2mはどこに書けばいいと思う?」

「7.6kgは何の重さ?」

などと質問しながら、子ども自身に図を作ってもらいます。

図は正解を教えるためのものではなく、子どもが自分の考えを整理するために使うことが大切です。

ドリルや教材はどのように選べばいい?

算数が苦手な子のドリルや教材は、「今の学年だから」という理由だけで選ばず、その子が一人で解ける問題をある程度含んでいるものから始めることが大切です。

たとえば小学5年生だからといって、必ず小学5年生の教材だけを使わなければならないわけではありません。

前の学年の内容につまずきがあるのであれば、その部分だけ戻ることも選択肢になります。

教材を選ぶときには、

・最初から分からない問題ばかりになっていないか

・解説を読まなければほとんど進めない状態ではないか

・一人で正解できる基本問題があるか

・間違えた問題をもう一度練習できるか

・少しずつ難易度が上がる構成になっているか

などを確認します。

「評判のよい教材」と「今その子に必要な教材」は同じとは限りません。

難しい問題集を最後まで終わらせることより、自分で解ける問題を増やし、そのうえで次の段階へ進める教材を選ぶ方がよい場合があります。

家庭で教えることが難しくなったらどうすればいい?

親が何度教えても理解できない、毎日のように付きっきりになっているという場合は、家庭だけで解決しようとしないことも選択肢です。

算数が苦手な子への指導は、問題の解き方を知っていればできるものではありません。

たとえば、割合の問題を間違えている子がいたとします。

指導する側には、「割合を説明する」だけではなく、

「割合そのものが分からないのか」
「何倍という考え方が分からないのか」
「小数のわり算につまずいているのか」
「文章から数量の関係を読み取れていないのか」
「実は割合は理解していて、問題の条件を読み間違えただけなのか」

を見分ける必要があります。

さらに、原因が分かったとしても、説明すれば終わりではありません。

本人に質問しながら考えてもらい、どこまで理解できたかを確認し、最後には一人で解けるかを確かめる必要があります。

私が実際の指導で見るポイント

私が実際の指導で見ているのは、「この問題を解けるかどうか」だけではありません。

問題が変わっても、その中にある共通した考え方に子ども自身が気づけるかを確認します。

文章問題でも図形問題でも、「この問題にはこの解き方」と一問ずつ別々の解法として覚えているだけでは、初めて見る問題に対応することが難しくなります。

たとえば、ある問題では「全体と一部分の関係」を考え、別の問題でも同じ関係を使っているのであれば、問題の見た目が変わっても、

「この前の問題と同じことを考えればいい」

と本人が気づけるかを見ます。

反対に、以前解いた問題と数字や文章が少し変わっただけで、まったく別の問題だと感じてしまうのであれば、正解した問題についても「本当に理解できているのか」をもう一度確認します。

「一度正解したか」ではなく、「問題が変わっても共通する考え方を自分で使えるか」まで確認して、その内容を本当に理解できているかを見るようにしています。

つまり、算数が苦手な子への指導には、

「何を教えるか」という教務知識

「どう考えてもらうか」というコーチング

「どこまで本当にできているか」を見抜く力

の3つが関係します。

これは家庭で毎日行うには簡単なことではありません。

特に、親子の場合は、

「さっき説明したでしょう」
「昨日もやったよね」
「どうして分からないの?」

といったやり取りになりやすく、勉強そのものとは別の難しさも出てきます。

そのような状態になっているのであれば、親がさらに詳しい教え方を身につけなければならない、と考える必要はありません。

家庭では、

・どこで困っているかを見る

・子どもの話を聞く

・すぐに答えを教えず考えてもらう

・一人でできたところを確認する

ところまでを意識する。

そのうえで、「どこまで戻るべきか分からない」「何を理解していないのか判断できない」という部分については、算数の指導経験がある人に見てもらうという分け方もできます。

家庭での役割と、専門的な指導の役割を分けて考えることで、親が毎日すべてを教えなければならない状態を避けやすくなります。

家庭で最も大切なのは、親が先生の代わりになることではありません。

子どもがどこまで自分で考えられるのかを見ながら、必要以上に答えを先回りして与えないことです。

そして、家庭だけでは原因を見つけられない状態が続いているのであれば、「もっと勉強させる」前に、その子が本当に一人でできている地点を一度正確に確認することが必要です。

算数が苦手なのは発達障害が原因なの?

算数が苦手だからといって、それだけで発達障害や学習障害が原因だと考えることはできません。

小学生が算数につまずく理由には、これまで説明してきたように、前の学年の理解不足、問題の難易度、文章問題の数量関係の理解、学習方法など、さまざまなものがあります。

実際、

「何度教えても同じところを間違える」
「文章問題になるとまったく式が立てられない」
「計算ミスが非常に多い」

といった状態が続くと、

「何か特性があるのではないか」

と考える保護者の方もいると思います。

もちろん、学習面で継続的な困難が見られる場合には、必要に応じて学校や専門機関へ相談することも選択肢になります。

一方で、家庭で算数の問題を解いている様子だけを見て、発達障害や学習障害かどうかを判断することはできません。

大切なのは、最初から原因を一つに決めるのではなく、「具体的に何ができて、何ができないのか」を確認することです。

算数が苦手というだけで発達障害とは判断できない

算数が苦手という事実だけから、発達障害や学習障害の有無を判断することはできません。

文部科学省は学習障害(LD)について、全般的な知的発達に遅れはない一方、「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」といった特定の能力の習得や使用に著しい困難を示す状態としています。

また、文部科学省の資料では、学業成績だけではなく、行動観察や詳細な心理検査なども含めて学習上の困難を把握する考え方が示されています。

そのため、「算数が苦手」「計算ミスが多い」「文章問題ができない」といった一つの様子だけから、家庭で発達障害や学習障害だと判断することはできません。

「文部科学省『学習障害児に対する指導について(報告)』」

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/002.htm?

たとえば、「小学5年生なのに割合がまったく分からない」という状態だけを見ても、その理由はいくつも考えられます。

・割合を習ったときの理解が不十分だった

・小数のかけ算・わり算が十分に身についていない

・「何倍」という考え方につまずいている

文章問題から数量の関係を整理することが難しい

・現在使っている教材が本人には難しすぎる

・解き方を覚える学習が中心になっている

このような場合には、前の単元まで戻って学習することで理解が進むこともあります。

また、

「計算ミスが多い」
「図形が苦手」
「文章問題ができない」

といった一つの特徴だけから原因を決めることも避けた方がよいでしょう。

ここでも、前のセクションで説明した方法が役立ちます。

「どう考えてこの式にしたの?」

「これで合っていると思う?」

「ここまでは一人でできる?」

と確認していくことで、単純に「算数ができない」とまとめるのではなく、その子が実際に困っている部分を具体的に把握することができます。

たとえば文章問題では式を立てられなくても、図にすると数量の関係を理解できる子もいます。

反対に、計算はできていても「なぜこの計算をするの?」と聞くと説明できないこともあります。

この二つでは、必要な学習や支援も違います。

「算数が苦手」という大きなくくりで考えるのではなく、「何をするときに困難が生じているのか」まで細かく見ることが重要です。

学習以外にも気になることがある場合はどこへ相談する?

算数だけでなく、他の学習や学校生活などでも継続的に困っていることがある場合には、家庭だけで判断せず、学校や適切な専門機関へ相談する方法があります。

相談を考える場合にも、「算数が苦手です」という情報だけではなく、普段の様子を具体的に整理しておくと伝えやすくなります。

【相談前に整理しておきたいこと】

・どの教科・単元で困っているか

・いつ頃から困りごとが続いているか

・計算・文章問題・図形など、特に難しいものは何か

・口頭で説明すると分かるのか

・図や具体物を使うと理解できるのか

・一度できた問題を後日もう一度解けるのか

・学校ではどのような様子なのか

・家庭学習ではどのような場面で困るのか

などです。

まずは、普段のお子さんの様子を知っている学校の先生などに相談することも考えられます。

さらに専門的な相談が必要な場合には、学校と相談しながら、地域の教育相談窓口や発達・学習に関する適切な専門機関につなげてもらう方法もあります。

重要なのは、家庭で診断しようとすることではありません。

また、インターネット上にある特徴の一覧とお子さんを照らし合わせて、「これが当てはまるから、きっとそうだ」と結論づけることでもありません。

家庭でできるのは診断ではなく、「どのような場面で、どのような困りごとが起きているのか」を具体的に観察して整理することです。

これは、算数の学習方法を考える場合にも役立ちます。

たとえば、「小学5年生なのに算数ができない」という情報だけでは、何から復習すればよいのか分かりません。

しかし、

「小数の計算は一人でできる」
「簡単な何倍の問題もできる」
「文章になると、どの数字を使うのか分からなくなる」

というところまで分かれば、確認すべき部分はかなり具体的になります。

反対に、算数だけに限らず、学習や日常生活のさまざまな場面で継続的な困難が見られるのであれば、算数の勉強方法だけで解決しようとせず、必要に応じて専門的な相談につなげることも大切です。

算数が苦手な原因を考える目的は、子どもに何かの名称を当てはめることではありません。

「この子は今どこで困っているのか」「どのような方法なら学習しやすいのか」を具体的にして、必要な対応につなげていくことが重要です。

算数の苦手を克服するために、まず何から始めればいい?

算数の苦手を克服するために最初にすることは、難しい問題をたくさん解くことではありません。

「どこまでは一人でできるのか」を確認し、そこから少しずつできることを増やしていくことです。

そして、もう一つ見落としたくないのが、「ものを正確に数える」「順番に整理する」「数えたものと数えていないものを区別する」といった、算数を学ぶうえで土台となる力です。

高学年だからといって、こうしたことが必ず身についているとは限りません。

計算や公式の復習をするだけではなかなか改善しない場合には、問題集の単元よりもさらに手前にある部分まで確認する必要があります。

①できなかった問題を集める

最初に、テストや宿題で間違えた問題をいくつか集めて、「どのような場面でつまずいているのか」を確認します。

一問だけを見るのではなく、ある程度まとめて見ることがポイントです。

たとえば、

計算問題で間違えることが多い

文章問題になると式を立てられない

図形問題になると手が止まる

・割合や比など、特定の単元で間違いが多い

・解き方を習った直後はできるが、しばらくするとできなくなる

・問題の条件を一つ読み落とすことが多い

など、その子なりの傾向が見えてくることがあります。

ここで、

「図形が苦手なんだ」
「文章問題が苦手なんだ」

とすぐに結論を出さないことも大切です。

図形問題を間違えたとしても、本当に図形の知識が不足しているとは限らないからです。

たとえば、図形そのものは理解していても、長さを数えるときに同じ場所を二度数えているかもしれません。

問題文の条件を途中で一つ飛ばしているかもしれません。

「何の単元を間違えたか」と「なぜ間違えたか」は分けて考える必要があります。

②答えではなく「どう考えたか」を確認する

間違えた問題を見つけたら、すぐに解き直しをさせるのではなく、「どう考えてこの答えになったのか」を確認します。

ここまでの記事でも触れてきたように、

「どうしてこの式にしたの?」

「どこまでは分かった?」

「これは何を求めようとしたの?」

「これで合っていると思う?」

と聞いてみます。

ここで確認したいのは、正しい説明ができるかどうかだけではありません。

子どもが問題を解くときに、何を見て、どのような順番で考えているのかを見ます。

たとえば図形問題であれば、完成した答えだけでなく、

・どこから数え始めたか

・どのような順番で数えたか

・数え終わった場所が分かっているか

・見えていない部分も考えているか

・同じものを二度数えていないか

といった途中の行動を見ることがあります。

すると、本人が「図形が苦手」だと思っていた問題の中から、さらに基本的なつまずきが見つかることがあります。

「ものを正確に数えられるか」を確認する

算数が苦手な子を見るときには、「そもそも、ものを正確に数えられているか」を一度確認することが重要です。

「数を数える」というと、小学校低学年で身につける簡単なことのように思えるかもしれません。

しかし、ここでいう「数える」とは、1、2、3……と言えることだけではありません。

対象を一つずつ確認し、数えたものとまだ数えていないものを区別し、重複や数え漏れを起こさず、最後まで正確に数えることです。

これは高学年の算数でも必要になります。

「数え上げ」ができるかどうかを確かめる重要性

実際に、私が見てきた子の中に、小学6年生で、

「正8角柱の面の数はいくつですか?」

という問題に取り組んだ子がいました。

その子は最初、正8角柱の図を自分で描いて、面を一つずつ数えようとしていました。

ここまではよかったのです。

ところが、数えている様子をよく見てみると、

上の面を数える

横の面を数え始める

横の面をすべて数え終わる前に下の面へ移る

再び横の面を数える

どこまで数えたのか分からなくなる

という数え方をしていました。

さらに、立体の図では裏側の面がすべて見えているわけではありません。

ところが、図に直接見えている面だけを数えて、「これで全部」と考えてしまうこともありました。

この状態で、「8角柱の面の数は、側面が8面で、底面が2面だから10面」と答えだけ教えても、その問題は正解できるようになるかもしれません。

しかし、それだけでは根本的な部分が残ります。

必要だったのは公式を覚えることよりも、

「上の面を数えたら、次は何を数える?」

「横の面はいくつある?」

「どこから数え始めれば、同じ面を二回数えずに済む?」

「図では見えないけれど、裏側にも面はない?」

と一つずつ確認することでした。

そして、「上の底面を1面 → 側面を順番に8面 → 下の底面を1面」というように、対象を整理して数えていきます。

この子の場合、私は「立体の図をもっとたくさん描こう」と指導しただけではありません。

取り入れたのが、面に色を塗ることと、立体を斜めから見た図を自分で描く練習です。

色を塗ることで、

「ここはもう数えた」
「この面はまだ数えていない」

ということを目で確認できるようにしました。

さらに重要だったのが、斜めから見た立体を描く練習です。

正8角柱を一方向から見ただけでは、裏側にある面は直接見えません。

そこで、見る方向を変えたつもりで立体を何度も描いてもらいました。

すると、本人も次第に、「今の図では見えていないだけで、面そのものがなくなったわけではない」ということに気づけるようになりました。

これは「正8角柱の面は10面」と覚えることとは違います。

見えているものだけを数えるのではなく、立体全体を考えて、見えていない部分まで含めて確認するという考え方を身につけるための練習です。

この経験からも、算数が苦手な子に対しては、公式や解き方を教えるだけでなく、その子が実際に何を見て、どのような順番で考えているのかまで確認する必要があると考えています。

この経験から私が強く意識するようになったのが、算数・数学が苦手になる原因を考えるとき、「ものを正確に数える」という非常に基本的な部分まで確認する必要があるということです。

この力は立体図形だけに使うものではありません。

・多角形の辺や対角線を数える

・規則性の問題で並んでいるものを数える

・場合の数で重複なく数える

・表やグラフから必要な情報を拾う

・文章問題の条件を一つずつ整理する

といった、さまざまな算数の学習につながっています。

「数えることくらいできるはず」と考えず、実際にどのように数えているのかを見るところに、算数の苦手を見つける手がかりが隠れていることがあります。

子どもの興味があることと算数を関連づける

「正確に数える力」を身につけるために、必ずしも最初から算数の問題集を使う必要はありません。子どもが興味を持っているものを使って、実際に数えたり比べたりする経験を増やすことも大切です。

算数が苦手な子に、「数える練習をしよう」と言ってプリントを追加しても、本人にとっては勉強が増えただけになってしまうことがあります。

それよりも、その子が普段から興味を持っているものの中で、数字を使える場面を探します。

たとえば電車が好きなら、

「この編成は何両ある?」と数えてみる。

スポーツが好きなら、

選手の得点や記録を比べてみる。

ゲームが好きなら、持っているアイテムを種類ごとに分けて、

「全部でいくつある?」
「同じものを二回数えないためには、どう分けたらいい?」

と考えてみる。

ブロックが好きなら、実際に並べて、

「縦に何個、横に何個ある?」
「全部を一つずつ数えなくても分かる方法はある?」

と考えることもできます。

ここで重要なのは、何でも無理に「算数の勉強」に変えることではありません。

興味のある対象だからこそ、自分からよく見て、正確に数えようとする。その経験を算数につなげていくことが大切です。

そして、ただ答えを当てるのではなく、

「どうやって数えた?」

「数え忘れはない?」

「同じものを二回数えていない?」

「どこから数え始めたら分かりやすい?」

と聞いてみます。

これも家庭で実践できるコーチングの一つです。

親が、「全部で12個だよ」と答えを教えるのではなく、「どうすれば正確に数えられるか」を子ども自身に考えてもらうのです。

この積み重ねは、単に数を数える練習だけではありません。

対象を整理する、順序を決める、数えたものを区別する、漏れがないか確認するという、算数で必要になる考え方の練習にもなります。

③原因に合わせて復習する内容を決める

間違えた原因が分かってから、その子に必要な単元・問題レベル・練習方法を決めます。

同じ「図形ができない」という子でも、必要な学習は違います。

たとえば、以下のような事例を考えてみます。

【図形問題を間違えた場合】

図形の性質を知らない
→ 基本的な性質から学習する

公式は知っているが、どこを使うか分からない
→ 図と公式を対応させる練習をする

立体で見えない部分を考えられない
→ 実物や模型を動かして確認する

面や辺を正確に数えられない
→ 順番を決め、数えた場所を確認しながら数える練習をする

このように、結果は同じ不正解でも対策は変わります。

だからこそ、「算数が苦手だからこのドリル」「図形が苦手だから図形問題を100問」と決める前に、原因を確認する必要があります。

苦手克服では、問題数を増やすことより、「今のつまずきに対して、その練習が本当に必要なのか」を考えることが重要です。

④最後は「何も見ずに解けるか」を確認する

復習の最後には、必ず「何も見ず、ヒントももらわずに一人で解けるか」を確認します。

教えてもらった直後に解けるだけでは、まだ十分ではありません。

解説を閉じ、ノートも見ずに、最初からもう一度解いてみます。

さらに可能であれば、少し時間を空けてから同じ考え方を使う別の問題にも取り組みます。

ここで、

・問題を読んで何を求めるか分かる

・必要な考え方を自分で思い出せる

・式や図を自分で作れる

・最後まで一人で計算できる

・自分の答えが合っているか確認できる

というところまでできれば、その内容が少しずつ自分で使えるようになってきたと考えられます。

これは、先ほどの「正確に数える」練習でも同じです。

最初は、

「次は横の面を数えよう」

「裏側にも面があるよ」

と声をかける必要があるかもしれません。

しかし最終的には、子ども自身が、

「まず上を数えて、次に横を順番に数えて、最後に下を数えよう」

「見えていない面もあるから確認しよう」

と考えられる状態を目指します。

「教えてもらえばできる」から「一人で考えてできる」へ移ったかどうかを確認するところまでが、復習です。

算数の苦手を克服しようとすると、どうしても「どの教材を使うか」「何問解かせるか」に目が向きやすくなります。

しかし、その前に確認したいことがあります。

正確に数えられるか。

順番に整理できるか。

自分がどこまでやったか把握できるか。

問題に書かれたものだけでなく、見えていないものまで考えられるか。

こうした基本的なところにつまずきがあれば、難しい問題を増やしても学習がうまく積み上がらないことがあります。

だからこそ、子どもの興味がある身近なものも使いながら、「正確に見る・正確に数える・整理して考える」というところから経験を積み重ねることも、算数が苦手な小学生にとって大切な学習になります。

算数が苦手な小学生についてよくある質問

Q1. 算数が苦手な子にはどんな習い事が向いている?

算数が苦手な子の習い事は、種類だけで選ぶのではなく、「その子がどこまでできているのか」を確認し、つまずきに合わせて学習内容を調整できるかを見ることが大切です。

たとえば、算数の成績を上げるために塾や個別指導へ通ったとしても、現在の理解度より難しい問題を教えてもらい続けるだけでは、自分で解ける問題がなかなか増えないことがあります。

特に確認したいのは、

・分からない原因まで確認してもらえるか

・必要であれば前の学年・単元まで戻れるか

・解き方を教えるだけで終わっていないか

・子ども自身に考えてもらう時間があるか

・最後に一人で解けるかまで確認しているか

という点です。

「どこへ通うか」だけでなく、「そこでどのような学習をするのか」を確認することが重要です。

Q2. 算数が苦手な子は個別指導の方がいい?

個別指導が向いている子もいますが、「個別指導だから算数の苦手を克服できる」とは限りません。

算数が苦手な子の場合、一人ひとりつまずいている場所が違います。その意味では、現在の理解度に合わせて学習内容を変えられる個別指導には利点があります。

ただし、個別指導でも先生がほとんどの時間を使って解き方を説明し、子どもがそれを聞いて問題を解いているだけでは、「教えてもらえばできる」という状態から抜け出せないことがあります。

見るべきなのは指導形態だけではありません。

その子が本当にできているところを確認し、必要なところまで戻り、最後には何も見ずに自分で解くところまで指導しているかを確認することが大切です。

Q3. 算数が苦手な子におすすめのドリルは?

算数が苦手な子には、難しい問題がたくさん載っているドリルよりも、現在の理解度に合った基本問題を自力で解ける教材が適しています。

小学5年生だから小学5年生のドリル、小学6年生だから小学6年生のドリル、と学年だけで決める必要はありません。

前の学年につまずきがあるなら、必要な単元だけ戻って学習する方法もあります。

大切なのは、解説を読まなければ進めない問題ばかりになっていないかという点です。

まず自力で正解できる基本問題を増やし、理解が安定したら少しずつ難易度を上げていきます。

教材を増やすことより、一冊の中で「何も見ずに解ける問題が増えているか」を確認する方が重要です。

まとめ|算数が苦手な原因を見つけてから勉強方法を決めよう

小学生の算数が苦手な原因は、単純な勉強不足だけではありません。大切なのは、勉強量を増やす前に「なぜその問題を間違えたのか」を確認することです。

この記事の重要なポイントを整理すると、次のようになります。

「分かった」と「何も見ずに一人で解ける」は別の状態

・間違えたときは、正解を教える前に**「どう考えたの?」と確認する**

・今の単元を繰り返してもできない場合は、一人でできるところまで戻って学習する

正確に数える・整理する・数え漏れや重複を確認するといった基本的な部分も見る

・家庭だけで原因を特定することが難しい場合は、教務・コーチング・子どもの現在地を見極めることのできる指導者に相談する

「算数が苦手だから、もっと勉強させなければ」と考えると、ドリルを増やしたり、難しい問題を繰り返したりしがちです。

しかし、本人が理解できていない状態のまま問題数だけを増やしても、「分からない問題を、解説を見たり教えてもらったりしながら終わらせる」学習が増えてしまうことがあります。

まずは、間違えた問題を一問取り出して、「どう考えて、この答えになったの?」と聞いてみてください。

そこから、「間違える → 考え方を確認する → 原因を分ける → 必要なところまで戻る → 何も見ずに解けるか確認する」という流れで学習を見直していきます。

また、子どもが興味を持っている身近なものを使って、正確に数える、順番に整理する、比べる、規則を見つけるといった経験を積むことも、算数の土台につながります。

算数が苦手な原因が分からないときは、学習相談をご利用ください

ここまでご紹介してきたように、小学生が算数を苦手になる原因は、「勉強時間が足りない」「計算練習が足りない」といったことだけではありません。

実際には、

・前の学年で習った内容につまずきが残っている

・解き方は覚えていても、なぜその式になるのか理解できていない

・文章から数量の関係を読み取れていない

・ものを正確に数えたり、整理したりするところにつまずきがある

・教えてもらえば解けるものの、一人では解き方を選べない

・現在取り組んでいる問題が本人には難しすぎる

など、さまざまなケースがあります。

そのため、「算数が苦手だから、とにかく問題をたくさん解かせよう」とする前に、まずは「どこまでは一人でできて、どこから分からなくなっているのか」を確認することが大切です。

私はこれまで、50人以上の算数が苦手な小学生を指導してきました。

学習相談でも、「この問題にはこの解き方」と一問ずつ解法を教えることだけを目的にはしていません。

お子さんが実際に問題をどのように考えているのかを確認し、

「なぜこの答えになったのか」

「どの問題にも共通する考え方に気づけているか」

「どこまで戻れば、自分一人で考えられるのか」

というところから、現在の学習状況を整理していきます。

特に、

「塾に通っているのに算数だけ成績が上がらない」

「個別指導も利用しているが、一人になると問題が解けない」

「宿題をするたびに親が付きっきりで教えている」

「前の学年まで戻った方がよさそうだが、どこまで戻ればよいか分からない」

「いろいろな教材を試したが、何を続ければよいのか分からなくなった」

という場合には、一度、現在の学習状況を整理してみることをおすすめします。

学習相談では、「もっと勉強しましょう」で終わらせるのではなく、お子さんが今どこでつまずいているのかを確認したうえで、これから何を優先して学習すればよいのかを一緒に整理します。

算数の苦手について、「まずは原因を整理してほしい」という段階でも構いません。

お子さんに合った学習の進め方を知りたい方は、学習相談からお問い合わせください。

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