「模試では毎回、志望校の合格可能性が80%以上になっている」
「偏差値も志望校の目安を上回っている」
このような結果が続けば、「このままいけば、きっと大丈夫だろう」と思うのは自然なことです。
もちろん、模試で良い成績を取れていることは大きなプラス材料です。
これまで勉強してきた成果が出ている証拠でもあります。
しかし、中学受験では、「模試の成績が良い=志望校に合格できる」とは限りません。
反対に、模試の判定があまり良くなかった子が、過去問対策を進めることで志望校に合格することもあります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
この記事では、模試の成績と志望校合格が必ずしも一致しない理由と、模試の結果を志望校合格につなげるために何をすればよいのかについて解説します。
模試と志望校の入試問題は「同じテスト」ではない
まず知っておきたいのは、「模試と実際の入試問題では、出題される問題の性質が違う」ということです。
模試は、さまざまな学校を志望している多くの受験生が受けます。
そのため、「計算」「一行問題」「立体図形」「規則性」「場合の数」など、幅広い分野から問題が出題されます。
一方、実際の中学校の入試問題には、それぞれの学校に特徴があります。
たとえば、「計算や一行問題が多く、基本問題を正確に取ることが重要な学校」もあれば、「速さや比を利用した長めの文章題がよく出る学校」「図形問題の割合が高い学校」「途中式や考え方を書かせる学校」などもあります。
つまり、模試で高得点を取る力と、その学校の入試問題で合格点を取る力は完全には一致しないのです。
模試の偏差値は「その模試を受けた人の中での位置」を表している
模試の偏差値についても、正しく理解しておく必要があります。
偏差値は、「その模試を受けた受験生の中で、自分がどのくらいの位置にいるのか」を表すための数字です。
たとえば偏差値60を取ったからといって、「どの学校の入試問題でも60程度の実力がある」という意味ではありません。
あくまでも、その模試の問題を解いた結果によって決まります。
そのため、偏差値は現在の学力を知るための重要な指標ではありますが、特定の学校の入試問題との相性まで完全に表しているわけではありません。
ここを区別して考えることが大切です。
「合格可能性80%」でも合格が保証されるわけではない
模試を受けると、「合格可能性80%」「A判定」などと表示されることがあります。
ここで注意したいのが、80%という数字は「あなたのお子さんが80%の確率で合格する」と単純に考えられるものではないということです。
模試会社は、過去の受験生の模試結果や実際の合否など、さまざまなデータをもとに判定を出しています。
そのため、志望校選びを考えるうえでは非常に参考になります。
しかし、当然ながら、「A判定だから合格」「C判定だから不合格」と決まっているわけではありません。
実際の入試では、その日に出題された問題を解いて合格最低点を超えなければなりません。
どれだけ模試で良い判定を取っていても、入試本番で必要な点数を取れなければ合格できないということは忘れないようにしましょう。
志望校によって「点数の取り方」が違う
中学受験で特に重要なのが、学校ごとの出題傾向です。
たとえば算数で、次のような2人の受験生がいたとします。
・Aさんは、基本問題をほとんど間違えないけれど、難しい問題はあまり解けない。
・Bさんは、難しい問題まで解けることがあるけれど、計算問題や基本問題でミスをすることがある。
模試ではBさんの方が高い偏差値になることもあります。
しかし、志望校の算数が、「難問を解くことより、基本〜標準問題を正確に取ることが重要」という構成だったらどうでしょうか。
Aさんの方が安定して合格点を取れる可能性があります。
逆のケースもあります。
基本問題だけでは合格点に届かず、途中にある難度の高い問題をいくつか取る必要がある学校なら、Bさんの方が有利になるかもしれません。
このように、「算数ができる・できない」だけではなく、「その学校の問題で点数を取れるか」という視点が必要なのです。
模試では取れている単元が、志望校ではあまり出ないこともある
もう一つ注意したいのが「得意分野と出題傾向の関係」です。
たとえば、
・計算……得意
・割合・比……得意
・場合の数……得意
・速さ……苦手
・図形……苦手
という子がいたとします。
模試では、さまざまな単元からバランスよく出題されるため、得意分野で苦手分野をカバーできるかもしれません。
ところが志望校で、速さと図形が頻繁に出題されるのであれば話は変わります。
模試の偏差値は十分でも、過去問を解くと合格最低点に届かないということが起こります。
だからこそ、6年生後半になったら、「偏差値がいくつか」だけではなく、「志望校で必要な単元ができているか」を確認する必要があります。
模試で高得点でも「初めて見る問題」に弱いケースがある
これは算数を指導していると特に気になる部分です。
普段使っているテキストや塾の問題ではよくできていて、模試でも良い成績を取れる。
ところが、過去問になると急に手が止まってしまう子がいます。
原因の一つとして考えられるのが、「知っている問題の解き方を当てはめる」ことに頼りすぎていることです。
「これはつるかめ算」
「これは旅人算」
「これは相似」
と問題の種類がすぐ分かれば解ける。
ところが、入試問題では必ずしも、「この解き方を使いなさい」と分かる形で問題が出てくるとは限りません。
文章や図を読み、「何が分かっているのか」「何を求めるのか」「どの知識を使えばよいのか」を自分で判断する必要があります。
そのため普段の学習でも、解き方を覚えるだけではなく、何も見ずに自分で方針を決めて正解までたどり着く練習が必要です。
模試の復習で大切なのは「偏差値」よりも間違えた問題
模試を受けた後、「偏差値が上がった」「今回は下がった」「志望校判定がAだった」という結果だけを見て終わってしまうのは、少しもったいない使い方です。
模試は、「今の学習で何が足りていないのかを発見するためのテスト」として利用できます。
特に算数では、間違えた問題を次のように分類すると、その後の勉強につなげやすくなります。
・知識そのものを忘れていた
・解き方は分かっていたが計算を間違えた
・問題文の意味を正しく読み取れなかった
・図を描けば分かったのに描かなかった
・時間が足りなかった
・解説を読めば分かるが、自力では方針を立てられなかった
同じ「不正解」でも、原因によって対策はまったく違います。
模試を受ける本当のメリットは、「偏差値という数字を知ることだけではなく、自分の弱点を発見できること」にあります。
志望校合格を考えるなら「過去問で何点取れるか」も確認する
6年生になり志望校が具体的に決まってきたら、模試とは別に過去問を見る必要があります。
特に重要なのは、「合格最低点に対して、自分が現在どのくらいの位置にいるのか」を確認することです。
ただし、最初から合格最低点を超えられなくても問題ありません。
過去問を始めたばかりなら、学校特有の問題形式に慣れていないからです。
重要なのは点数そのものだけではなく、「あと何点必要なのか」を具体的に考えることです。
たとえば算数が100点満点で現在55点、目標が70点なら、「あと15点をどこで取るのか」を考えます。
難しい大問の最後の1問を解けるようにする必要があるとは限りません。
計算問題のミスをなくして5点。
苦手な割合の基本問題を取れるようにして5点。
図形の前半部分を取れるようにして5点。
これでも15点です。
このように、「偏差値をもっと上げよう」と考えるだけではなく、「志望校の問題であと何点取れるようにするか」と考えることが、入試が近づくほど重要になります。
模試と過去問はどちらか一方を重視するものではない
ここまで読むと、「それなら模試より過去問の方が大事なのでは?」と思うかもしれません。
しかし、そういう意味ではありません。
模試には、「受験生全体の中で現在の自分がどの位置にいるのかを確認できる」という大きなメリットがあります。
一方、過去問には、「志望校の問題に対して現在どのくらい対応できるのかを確認できる」というメリットがあります。
つまり、役割が違います。
模試だけを見るのでもなく、過去問だけを見るのでもありません。
模試で「全体の中での位置」を確認し、過去問で「志望校との距離」を確認する。
この2つを組み合わせることが大切です。
模試の成績が良いときこそ「できていない問題」を見る
模試の成績が悪かったときは、多くの家庭で復習をします。
ところが意外に注意したいのが、成績が良かったときです。
偏差値が上がったり、志望校判定が良かったりすると、「今回はできたから大丈夫」となりやすいからです。
しかし、入試対策という意味では、良い成績を取った模試にも改善材料があります。
たとえば80点取ったのであれば、「80点取れた」だけで終わらず、「残り20点はなぜ取れなかったのか」を確認します。
その20点の中に志望校で頻出する単元が含まれていたら、優先的に復習する価値があります。
模試の成績が良いときほど、順位や偏差値だけではなく、答案そのものを見るようにしましょう。
志望校合格のために確認したい3つの数字
中学受験では、一つの数字だけで子どもの状況を判断しないことが大切です。
私は、少なくとも次の3つは分けて考えた方がよいと思います。
① 模試の偏差値・志望校判定
受験生全体の中での現在位置を確認します。
② 過去問の得点
志望校の問題との相性や、現時点での到達度を確認します。
③ 単元ごとの正答率
どの分野を改善すれば得点を伸ばせるのかを確認します。
たとえば、「模試偏差値60」だけを見るより、「模試偏差値60・過去問55点・合格目標70点・図形と速さで失点が多い」と分かった方が、これから何を勉強すればよいのかがはるかに明確になります。
模試の判定は「合否の予言」ではなく「現在地を知る材料」
模試の成績が良いことは、もちろん喜んでよいことです。
努力してきた成果ですし、志望校合格に近づいている一つの材料でもあります。
しかし、良い判定が出たから勉強を変えなくてよいという意味ではありません。
反対に、判定が悪かったからといって、もう合格できないと決まったわけでもありません。
模試は未来の合否を決めるものではなく、「今どこにいて、これから何を勉強すればよいのか」を考えるための材料として利用するのがおすすめです。
まとめ 最後に必要なのは「志望校の問題で合格点を取る力」
中学受験では、模試の成績が良くても志望校への合格が保証されるわけではありません。
それは、模試の信頼性が低いからではありません。
模試と入試では役割が違うからです。
模試では、多くの受験生の中での現在位置を知ることができます。
一方、実際の入試では、その学校が作った問題を制限時間内に解き、必要な点数を取らなければなりません。
だからこそ、「偏差値はいくつだったか」だけで判断するのではなく、「志望校で合格点を取るために、今の子どもに何が足りないのか」まで考えていくことが重要です。
模試の答案、単元ごとの理解度、そして過去問。
これらを照らし合わせていくと、「もっと難しい問題をやらなければ」ではなく、
「この基本問題を確実に取れるようにしよう」
「この単元をもう一度戻って練習しよう」
「この学校ではこのタイプの問題を取れるようにしよう」
と、やるべきことが具体的になります。
模試の成績に一喜一憂するのではなく、模試を「次に何を勉強するかを決めるための材料」として使うこと。
それが、模試の結果を実際の志望校合格につなげるために大切な考え方です。
