中学受験の算数を教えていると、
「5年生なのに偏差値40くらいしかありません」
「今から4年生の内容に戻っていて間に合うのでしょうか?」
「周りはどんどん先に進んでいるので、戻るのが不安です」
というご相談をいただくことがあります。
確かに、5年生の終わりともなると、入試までの時間を考えて焦りが出てくる時期です。
しかし、算数の場合、分からない状態のまま今の学年の勉強を続けることが、必ずしも入試への近道とは限りません。
実際に私が指導した生徒の中には、5年生の終わりの時点で偏差値40程度だったところから、あえて予習シリーズの4年生のテキストまで戻り、7月の模試で偏差値60まで伸ばした子がいます。
そして最終的には、横浜女学院中学校に特待生として合格することができました。
今回は、この生徒にどのような指導を行ったのかを具体的にご紹介します。
5年生の終わりで偏差値40からのスタート
この生徒を指導し始めたとき、模試の偏差値は40程度でした。
5年生の終わりですから、中学受験まで残された時間を考えれば、「早く5年生の内容を終わらせなければ」「6年生の勉強に入らなければ」と考えたくなるところです。
しかし、実際の理解度を確認してみると、問題は単純に「5年生の勉強ができていない」ということではありませんでした。
4年生で学習する中学受験算数の基礎が十分に定着していなかったのです。
算数は積み重ねの教科です。
4年生で習った割合や図形、文章題などの基本的な考え方があいまいなまま5年生の問題に取り組んでも、なかなか安定して正解できるようにはなりません。
そこで私は、思い切って予習シリーズの4年生のテキストからやり直すことにしました。
「4年生へ戻る」ことを恐れない
学年を戻って勉強することに、不安を感じる保護者の方は少なくありません。
特に中学受験では、塾のカリキュラムがかなり速いため、「そんなことをしていたら、ますます遅れてしまうのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、大切なのは、何年生のテキストをやっているかではなく、その問題を自分の力で解けるかです。
この生徒の場合も、4年生のテキストに戻ったこと自体が成績を伸ばしたわけではありません。
重要だったのは、4年生の基礎問題をほぼ完璧にできる状態まで仕上げてから、5年生へ進んだことです。
「一度やったから次へ進む」のではなく、「できるようになったから次へ進む」という基準に変えました。
基礎問題を「ほぼ完璧」にしてから次へ進む
算数が苦手な子の場合、私は基礎問題を非常に重視しています。
ただし、ここでいう「基礎をやる」とは、簡単な問題を一度解いて終わりにすることではありません。
大切なのは、解説を見なくても、自分で考えて正解できる状態にすることです。
例えば、一度授業で説明を受けて、「分かった!」となったとしても、それだけでは十分ではありません。
翌日や数日後に同じような問題を出されたとき、自分で解き方を思い出して正解できるか。
さらに、別の単元の問題と混ざって出題されても正解できるか。
そこまで確認して、初めて「身についた」と考えます。
この生徒も、4年生の予習シリーズに掲載されている基礎的な問題を中心に、できないところを一つずつ埋めていきました。
そして、基礎問題がほぼ完璧になった段階で5年生のテキストへ移りました。
すると、以前よりも5年生の内容を理解しやすくなっていきました。
これは当然のことで、5年生の問題の中にも4年生で学習した考え方が数多く使われているからです。
学校の算数は家庭学習で繰り返し!
一方で、この生徒には一つの強みがありました。
小学校で習う非受験の算数については、問題なく理解できていたことです。
そこで、学校レベルの内容について授業時間を多く使う必要はないと判断しました。
ただし、「できているから何もしなくていい」とはしませんでした。
学校で習う計算や基本的な内容については、家庭学習で繰り返し復習してもらいました。
中学受験算数では難しい問題に目が向きがちですが、計算をはじめとする基本的な処理能力が落ちてしまえば、せっかく考え方が分かっていても得点にはつながりません。
そのため、家庭では基礎学力を維持するための学習、指導では中学受験算数の弱点補強という役割分担をしました。
これによって、限られた指導時間を効率よく使うことができました。
単元が終わるたびに必ず小テストを実施
そして、今回の指導で特に効果があったと考えているのが、一つの単元を習得するごとに小テストを行ったことです。
授業中に、「これは割合の問題だよ」「今日は速さを勉強するよ」と言われて問題を解く場合、子どもは最初から使う知識をある程度予想できます。
ところが模試ではそうではありません。
割合、速さ、比、図形、場合の数など、さまざまな問題がランダムに出題されます。
そのとき必要になるのが、「この問題は何を使って解く問題なのか?」と自分で判断する力です。
実は、算数が苦手な子の場合、「習ったことがないからできない」のではなく、習ったことはあるけれど、どの知識を使えばよいのか分からないというケースが非常に多くあります。
「解き方を覚える」だけでは模試で点が取れない
例えば、授業で速さの問題を10問続けて解けば、「今日は速さだから、速さの公式や考え方を使えばいい」と分かります。
しかし、模試では突然その問題が出てきます。
問題文を読んだ段階で、「これは速さの問題だ」「これは比を利用する問題だ」「これは面積図を使えそうだ」と判断しなければなりません。
そこで小テストでは、以前に学習した内容も含めて問題を出し、問題を見て自分でテーマや解法を判断する練習を行いました。
この練習を繰り返したことで、単に例題の解き方を覚えるだけではなく、初めて見る形で出題されても、自分が持っている知識の中から必要なものを取り出す力が少しずつ身についていきました。
これが模試での得点力につながったと考えています。
偏差値40から7月には偏差値60へ
こうした学習を続けた結果、5年生の終わりには偏差値40程度だったところから、7月の模試では偏差値60を取ることができました。
約20ポイントの上昇です。
しかし、私が重要だと考えているのは「偏差値が20上がった」という結果だけではありません。
成績が伸びた背景には、
「4年生の基礎に戻る→ 基礎問題をほぼ完璧にする→ 5年生の内容へ進む→ 単元ごとに小テストをする→ ランダムに出された問題から解法を判断する」という学習の積み重ねがありました。
つまり、特別な裏技や難しい問題集を使ったわけではありません。
むしろ行ったのは、基礎に戻って「本当にできる状態」を作ることでした。
最終的には横浜女学院に特待生で合格
その後も学習を続け、最終的には横浜女学院中学校から特待生として合格をいただくことができました。
5年生の終わりに偏差値40だったことを考えると、大きな成長だったと思います。
ただ、この結果から、「偏差値40なら誰でも数か月で60になる」ということをお伝えしたいわけではありません。
子どもによって、つまずいている場所も、理解するまでに必要な時間も違います。
今回の生徒の場合、小学校の通常の算数については十分理解できていたことも、短期間で中学受験算数の学び直しを進められた理由の一つです。
大切なのは、現在の偏差値だけを見て、「この子は算数ができない」と判断しないことです。
どこから分からなくなったのかを見つけ、その地点まで戻る。
そして、そこから一つずつ「自分で解ける問題」を増やしていく。
この順番が重要です。
算数の成績が伸びないときは「先へ進む」より「戻る」
中学受験では、どうしても進度が気になります。
周りの子が6年生の内容を勉強しているときに、自分の子だけ4年生のテキストを解いていたら、不安になるのは当然です。
しかし、算数の場合は、基礎が抜けた状態で先へ進んでも、その後の単元で再びつまずく可能性があります。
場合によっては、「急いで先へ進むこと」よりも「思い切って戻ること」の方が、結果的には早いのです。
今回の生徒も、5年生の終わりから4年生の内容に戻りました。
それでも、基礎を固めてから5年生へ進み直すことで、7月には偏差値60まで伸ばすことができました。
重要なのは学年ではありません。その子が今、どこまで本当に理解できているかです。
中学受験算数が苦手なら「どこまで戻るか」を考えてみてください
「何度勉強しても模試で点が取れない」
「塾では分かったと言うのに、テストになるとできない」
「5年生・6年生になってから算数の成績が急に下がった」
このような場合、現在習っている単元だけに原因があるとは限りません。
4年生、場合によっては小学校の通常カリキュラムまで戻って確認した方がよいこともあります。
私の指導では、学年や塾の進度だけを基準にするのではなく、実際に問題を解いてもらい、どこから理解があいまいになっているのかを確認することを大切にしています。
そして必要であれば前の学年まで戻り、基礎問題を自力で解ける状態にしてから次へ進みます。
今回ご紹介した生徒も、その方法で偏差値40から60まで伸ばし、最終的に横浜女学院中学校の特待生合格につながりました。
算数が苦手だからといって、難しい問題をたくさん解く必要があるとは限りません。
むしろ、「どこからやり直せば、この子は自分で解けるようになるのか」を見つけることが、成績を伸ばす最初の一歩になることがあります。
お子さまの算数について、「どこまで戻ればいいのか分からない」「塾の勉強についていけなくなっている」「基礎をやっているのに模試になると点が取れない」という場合は、現在の理解度を一度整理してみることをおすすめします。
算数が苦手なお子さまの学習相談・体験授業についても受け付けています。現在の状況を確認したうえで、どこから学習を立て直すべきかをご提案します。
