「文章題になると、急に何をすればいいのか分からなくなる」
「計算問題ならできるのに、単位量あたりの問題ができない」
このようなお悩みを持つ保護者の方は少なくありません。
たとえば、次の問題をお子さんに解いてもらってみてください。
2mの重さが7.6kgの鉄の棒があります。この棒の1.2mの重さは何kgですか。
答えは 4.56kg です。
計算だけを見れば、それほど複雑な問題ではありません。
しかし私は、このような問題を自力で解けるかどうかは、その後の算数、さらには中学・高校の数学を学ぶうえでも非常に重要だと考えています。
なぜなら、この問題では単に「割り算と掛け算ができるか」ではなく、数量の関係を読み取り、それを式に変換する力が問われているからです。
今回は、この問題が理解できない原因と、その段階からどのように学び直せばよいのかを解説します。
まず「2mで7.6kg」から何が分かるのか
この問題を解く一般的な方法は、7.6÷2=3.8として、まず1mあたりの重さを求めることです。
つまり、「1mの重さは3.8kg」と分かります。
そこから1.2mの重さを求めるので、「3.8×1.2=4.56」したがって、答えは「4.56kg」となります。
ところが、この問題が苦手な子に「7.6÷2をして、そのあと3.8×1.2をすればいいよ」と教えるだけでは、十分ではありません。
大切なのは、「7.6÷2が何を表しているのか」を理解できていることです。
分からない原因1:「1mあたり」という考え方が身についていない
この問題で最も重要なのは、「2mで7.6kgなら、1mでは何kgなのか」と考えられることです。
ところが、算数が苦手な子の中には、「2m、7.6kg、1.2m」という3つの数字を見て、「どの数字とどの数字を掛けるの?」「割り算なの?掛け算なの?」と考えてしまう子がいます。
ここで問題なのは計算力ではありません。
数字同士の関係を捉えられていないことです。
そのため、「こういう問題では最初に割り算をする」と解き方だけを覚えさせても、数字や文章が少し変わると解けなくなってしまいます。
対策:「1mなら?」を徹底的に練習する
最初は小数を使わず、もっと簡単な数字で練習してみましょう。
たとえば、「3mで12kgの棒があります。1mでは何kgですか」であれば、「12÷3=4」なので、1mでは4kgです。
次に、「1mで4kgなら、5mでは何kgですか」と聞きます。
「4×5=20」なので20kgです。
この「何m分か」→「1m分」→「必要な長さ分」という流れを理解することが重要です。
分からない原因2:「割り算=数字を小さくする計算」になっている
小学生の算数で意外に多いのが、割り算を単なる計算方法としてしか理解していないケースです。
たとえば、「12÷3=4」は計算できても、「12kgが3m分なら、1m分はいくら?」と聞かれると分からなくなることがあります。
これは割り算の意味と実際の数量が結びついていない状態です。
先ほどの問題なら、「7.6kgを2m分に分けたうちの1m分」を求めるために、「7.6÷2」をしています。
計算式を教える前に、「7.6kgは何m分の重さなの?」「2m分だね。では1m分なら?」と質問してあげることが大切です。
算数が苦手な子ほど、いきなり式を書かせるよりも、何を求めている計算なのかを言葉にする練習が必要です。
分からない原因3:「1.2m」がどのくらいなのかイメージできていない
この問題には、もう一つ重要なポイントがあります。
それが「1.2mという量の感覚」です。
1.2mは、「1mと0.2mを合わせた長さ」です。
したがって、1mが3.8kgなら、1.2mは3.8kgより少し重くなるはずです。
ところが、数量感覚が身についていないと、「3.8÷1.2」などと計算して、答えが3.8kgより小さくなっても疑問を感じません。
ここには算数をできるようにするうえで、とても大切なポイントがあります。
式を立てる前と答えを出した後に、およその大きさを考えることです。
今回なら、
・1m → 3.8kg
・1.2m → 3.8kgより少し重い
・2m → 7.6kg
です。
ですから、答えは「3.8kgより大きく、7.6kgより小さい」はずです。
4.56kgという答えは、この範囲に入っています。
このような「答えの見当」をつける習慣は、割合・速さ・比・関数などを学ぶ際にも非常に役立ちます。
分からない原因4:「何算を使うか」を当てる勉強になっている
文章題が苦手な子に、「『合わせて』と書いてあったら足し算」「『残り』なら引き算」「『1つ分』なら割り算」という教え方をすることがあります。
もちろん最初の段階では役立つこともあります。
しかし、それだけでは学年が上がるにつれて対応できなくなります。
算数で必要なのは、文章から計算方法を当てることではなく、
数量と数量の関係を考えることだからです。
今回の問題でも、「2m → 7.6kg」という対応関係があります。
それを、「1m → 3.8kg」に変えて、「1.2m → 4.56kg」と考えています。
文章題を解くときには、数字だけを見るのではなく、「この数字は何を表しているのか」まで確認する習慣をつけましょう。
この問題ができないことを放置すると、中学数学でも苦労しやすい
「小学生の簡単な文章題だから、そのうちできるようになるだろう」と思われるかもしれません。
しかし、この考え方は中学数学にもそのままつながっています。
たとえば今回の鉄の棒について、長さを (x) m、重さを (y) kgとすると、「1mあたり3.8kg」ですから、「y=3.8x」という関係になります。
これは中学数学で学ぶ比例そのものです。
つまり、小学校で学んでいる
2mで7.6kg
↓
1mで3.8kg
↓
1.2mで4.56kg
という考え方は、中学校では「y=3.8」という式に変わるだけなのです。
さらに中学・高校では、比例だけでなく、一次関数、速さ、濃度、確率、関数など、さまざまな場面で「一方の量が変わると、もう一方の量がどう変化するのか」を考えます。
だからこそ、小学生の段階で「文章から数量関係を読み取る力」を身につけておくことが大切です。
算数が苦手な子には「式を教える前の質問」が重要
この問題ができなかった場合、すぐに「7.6÷2×1.2だよ」と教える必要はありません。
まず次のように質問します。
「2mで何kg?」
「7.6kg」
「じゃあ1mなら何kg?」
「3.8kg」
「1.2mは1mより長い?短い?」
「長い」
「だったら答えは3.8kgより重くなりそう?軽くなりそう?」
「重くなりそう」
「1mで3.8kgなら、1.2mではどうすれば求められそう?」
このように、一つずつ質問していきます。
重要なのは、大人が式を完成させてしまわないことです。
子ども自身に数量の関係に気づいてもらいます。
できない場合は、さらに簡単な問題まで戻って構いません
もし、「2mで8kgなら、1mでは何kg?」という問題にも答えられないのであれば、小数の計算練習を増やす段階ではありません。
さらに簡単な問題まで戻します。
たとえば、「2個で100円のお菓子があります。1個はいくらですか」あるいは、「3本で12cmあります。1本は何cmですか」という問題です。
ここで「1つ分を求める」という意味を理解してから、「整数→小数」へ進めばよいのです。
算数が苦手な子の場合、現在習っている単元だけを繰り返しても、なかなか改善しないことがあります。
そのようなときは、「どこから分からなくなったのか」を探して、そこまで戻ることが非常に重要です。
「できない問題」より「できた問題」を見る
保護者の方から、「割合ができません」「速さができません」「文章題が全然できません」というご相談をいただくことがあります。
しかし実際に確認していくと、割合や速さそのものではなく、もっと前の段階の「1つ分を求める」という考え方につまずいていることがあります。
ここで難しい問題集を追加しても、改善しにくいでしょう。
大切なのは問題数ではありません。
その子がどの段階の考え方から分からなくなっているのかを特定することです。
今回の問題なら、
・2mで7.6kgという関係を読み取れるか
・1mの重さを求められるか
・1.2mが1mより少し長いと理解できるか
・1mの重さから1.2mの重さを求められるか
・出した答えが妥当か判断できるか
というように細かく分けて確認できます。
「文章題が苦手」という一言で終わらせず、どこで思考が止まっているのかを見ることが大切です。
まとめ|簡単な文章題ほど「考え方」を大切に
「2mの重さが7.6kgの鉄の棒があります。この棒の1.2mの重さは何kgですか。」
一見すると、小学校算数の簡単な問題に見えます。
しかし、この問題には、単位量あたり・比例・数量関係・文章の読み取り・答えの見積もりといった、その後の算数・数学につながる重要な考え方が詰まっています。
もしお子さんがこのような問題を解けなかったとしても、同じ問題を何度も解かせるだけではなく、「どの段階から理解できていないのか」を確認してみてください。
必要であれば、整数の簡単な問題や「1個分を求める問題」まで戻って構いません。
算数は前に進むことだけが勉強ではありません。
分からなくなった地点まで戻り、理解をつなぎ直すことが、その後の成績を伸ばすための近道になることがあります。
算数の「どこから分からないのか」を一緒に確認します
「計算はできるのに文章題になるとできない」
「割合や速さを何度教えても理解できない」
「中学受験の算数についていけなくなってきた」
このような場合、現在の単元だけに原因があるとは限りません。
私の指導では、実際に問題を解いてもらいながら、どの段階の理解が抜けているのかを確認し、必要なところまで戻って学び直すことを大切にしています。
算数が苦手なお子さんの学習方法についてお悩みの方は、体験授業・学習相談からお気軽にお問い合わせください。
