中学受験の算数では、次のような問題がよく出題されます。
1本60円のえんぴつと、1本120円のボールペンを同じ本数ずつ買ったら、えんぴつの代金とボールペンの代金の差は600円になりました。えんぴつとボールペンを何本ずつ買いましたか。
このような問題は「差集め算」と呼ばれます。
差集め算では、「1個あたりの差」を何個分か集めると「全体の差」になるという考え方が重要です。
ところが、算数が苦手な小学生にとっては、この考え方が意外に難しいものです。
特に多いのが、
・「60と120は足すの?引くの?」
・「600を60で割るの?」
・「60×120をするの?」
といったように、何をかけ算して、何を割り算すればよいのか分からなくなるケースです。
今回は、差集め算が苦手になる原因と、ご家庭でもできる対策について解説します。
差集め算とは「1個あたりの差」を集める問題
まず、先ほどの問題を考えてみましょう。
えんぴつは1本60円、ボールペンは1本120円です。
同じ1本を買ったとき、代金には「120-60=60円」の差ができます。
つまり、「1本ずつ買うたびに60円の差ができる」ということです。
では、2本ずつ買ったらどうでしょう。
えんぴつは、「60×2=120円」ボールペンは、「120×2=240円」ですから、差は「240-120=120円」になります。
3本ずつなら差は180円、4本ずつなら240円……と増えていきます。
整理すると、
| 買った本数 | 代金の差 |
|---|---|
| 1本ずつ | 60円 |
| 2本ずつ | 120円 |
| 3本ずつ | 180円 |
| 4本ずつ | 240円 |
| 5本ずつ | 300円 |
となります。
つまり、「全体の差=1本あたりの差×本数」という関係になっています。
今回の問題では全体の差が600円なので、「600÷60=10」したがって、えんぴつとボールペンを10本ずつ買った
ことが分かります。
差集め算が苦手な原因は「公式を知らない」ことではない
差集め算ができないと、「差集め算の公式を覚えさせなければ」と考えてしまうことがあります。
しかし、算数が苦手な子の場合、公式を覚えさせるだけではなかなか解決しません。
なぜなら、本当につまずいているところは、「何と何をかけると、何が求められるのか」という、かけ算そのものの意味であることが多いからです。
たとえば、「60×10=600」という計算を見て、
・60は何を表しているのか
・10は何を表しているのか
・600は何を表しているのか
を説明できるでしょうか。
今回なら、「1本あたりの差60円×10本=全体の差600円」です。
ここが理解できていなければ、「600÷60」という式を教えても、「どうして割り算なの?」という疑問が残ってしまいます。
「何がかけ算で、何が割り算か分からない」子は珍しくありません
算数が苦手な子を指導していると、「かけ算と割り算のどちらを使えばいいか分からない」という場面によく出会います。
これは単純に計算ができないという話ではありません。
たとえば、「1個80円のお菓子を5個買いました。代金はいくらですか」なら、「80×5=400」と計算できる子でも、「1個80円のお菓子を何個か買ったら400円になりました。何個買いましたか」となると、式を作れなくなることがあります。
この2つは、実は同じ関係です。
1個あたりの値段×個数=全体の値段です。
したがって、個数を求めるなら、「全体の値段÷1個あたりの値段=個数」となります。
差集め算でも、この考え方は変わりません。
「値段」が「差」に変わっただけなのです。
差集め算では、いきなり割り算を教えない
差集め算が苦手な子には、「全体の差÷1個あたりの差をすればいいんだよ」と最初から教えることは、あまりおすすめしません。
それでは「差集め算では割り算をする」という解き方だけを覚えてしまう可能性があるからです。
先ほどの問題なら、最初は実際に書き出してみましょう。
1本ずつなら差は60円。
2本ずつなら、60×2=120円。
3本ずつなら、60×3=180円。
このように確認してから、「では、600円の差になるには何本必要かな?」と考えてもらいます。
すると、「60×□=600」という関係が見えてきます。
ここまで分かれば、「600÷60=10」という割り算にも意味が生まれます。
「1個あたり」「個数」「全体」の3つを意識させる
差集め算をできるようにするためには、次の3つの量を区別できるようにすることが大切です。
① 1個あたりの差
② 個数
③ 全体の差
先ほどの問題なら、
・1本あたりの差……120-60=60円
・本数……□本
・全体の差……600円
です。
そして、この3つには、「1本あたりの差×本数=全体の差」という関係があります。
算数が苦手な子には、式だけを覚えさせるのではなく、「この60円は何?」「600円は何の差?」「60円が何個集まると600円になるの?」と質問してみてください。
数字が何を意味しているのかを言葉にできるようになると、式も作りやすくなります。
「1個だったらどうなる?」から考えさせる
私が差集め算のような問題を教えるときに大切だと考えているのが、いきなり答えを求めようとしないことです。
たとえば、「えんぴつとボールペンを1本ずつ買ったら、差はいくら?」と聞きます。
すると、「120-60=60円」と求められます。
次に、「じゃあ2本ずつだったら?」と聞きます。
60×2=120円です。
さらに、「3本ずつなら?」と続けます。
こうすると子ども自身が、「本数が増えると、60円ずつ差が増えている」という規則に気づきやすくなります。
この「気づく」過程が非常に重要です。
最初から公式を渡してしまうよりも、自分で数量の関係を見つけた方が、初めて見る問題にも対応しやすくなります。
差集め算ができないときは、もっと簡単な問題に戻る
差集め算がまったく理解できない場合、差集め算そのものを繰り返すより、さらに簡単な問題に戻った方がよい場合があります。
たとえば、「1本60円のえんぴつを5本買うといくら?」
「1本60円のえんぴつを買って300円になりました。何本買った?」という問題です。
ここで、「60円×5本=300円」という「1個あたり×個数=全体」の関係を理解できるようにします。
次に、「1個につき20円ずつ差があります。5個では全部でいくらの差になりますか」といった問題に進みます。
20×5=100円です。
ここまで理解できてから、「1個につき20円の差があります。全部で100円の差になりました。何個ありますか」という逆算に進みます。
100÷20=5個です。
この段階を踏んでから、本格的な差集め算に進むと理解しやすくなります。
「差集め算だからこの式」ではなく数量の関係を見る
中学受験算数では、「つるかめ算」「旅人算」「差集め算」など、さまざまな名前がついた問題を学習します。
こうした問題で注意したいのが、「差集め算だからこの公式を使う」という覚え方だけになってしまうことです。
もちろん典型的な解法を覚えることも必要です。
しかし、それ以前に、「1個あたりの差が60円で、それが何個か集まって600円になった」という数量の関係を理解することが重要です。
この関係が見えていれば、「60×□=600」だから、「600÷60=10」と自然に考えられます。
逆にここが見えていない状態で、「全体の差÷1個あたりの差」という公式だけを覚えても、数字が少し変わっただけで分からなくなることがあります。
差集め算の練習では「なぜその式なの?」と聞いてみる
お子さんが問題に正解したときも、答えだけで判断しないことが大切です。
たとえば、「600÷60=10」と正しく計算できたら、「どうして600を60で割ったの?」と聞いてみてください。
「差集め算だから」ではなく、「1本につき60円の差ができて、それが何本分集まれば600円になるかを求めるから」と説明できれば、かなり理解できています。
算数では「正解できたか」だけでなく、その式が何を表しているのかを説明できるかを見ることも大切です。
差集め算は、かけ算・割り算の理解を確認できる問題でもある
差集め算が苦手だからといって、必ずしも差集め算だけに原因があるとは限りません。
むしろ、「1個あたり×個数=全体」という、かけ算の基本的な意味が十分に身についていないことがあります。
その場合には、難しい差集め算を何十問も解くより、「1個あたりはいくら?」「何個ある?」「全部ではいくら?」
という基本的な数量関係に戻った方が、結果として早くできるようになることがあります。
中学受験の算数では、難しい問題ができないときほど、その問題より前の段階にある基礎を確認することが重要です。
まとめ|差集め算は「1個あたりの差」を見つけるところから
差集め算で最も重要なのは、「全体の差=1個あたりの差×個数」という関係です。
ただし、この式をそのまま暗記させる必要はありません。
まず、「1個なら、いくらの差?」「2個なら?」「3個なら?」と具体的に考えてもらい、1個増えるたびに同じだけ差が増えていくことに気づいてもらいましょう。
そして、「1個あたりの差が何個分集まったら、全体の差になるのか」という考え方につなげます。
差集め算で「かけ算なのか割り算なのか分からない」という場合には、公式を覚えていないことよりも、数字同士の関係が見えていないことを疑ってみることが大切です。
算数が苦手なお子さんは「どこまで戻るか」が重要です
「何度教えても差集め算ができない」
「かけ算と割り算の使い分けができない」
「解き方を教えればできるのに、テストになると解けない」
このような場合には、今取り組んでいる問題を繰り返すだけでは改善しないことがあります。
私の指導では、できない問題だけを見るのではなく、その問題を解くために必要な前提知識まで戻り、どこで理解が止まっているのかを確認することを大切にしています。
算数が苦手なお子さんの学習方法でお困りでしたら、体験授業・学習相談からお気軽にお問い合わせください。
